06:見捨てない目
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*角都
「ヨル、さっきの術って逃亡用じゃなかったけ?」
「よほど相手が油断してないと、今のはできなかった」
敵を仕留めたあと、飛段とヨルがそんな会話をする。
オレは水遁の男の首を拾い、声をかけた。
「ヨル、ちゃんとトドメを刺せ」
「え?」とこちらに振り返ったヨルは、自分が片付けた土遁の男を見下ろした。
まだ息があった。
だが、もう長くはない。
「!」
その時、地面が微かに揺れて唸っていることに気付いた。
ヨルと飛段もそれに気付いたのか、ピクッと顔を見上げる。
音は少しずつ大きくなる。
土遁の男は力を振り絞って顔を上げ、不気味な笑みを浮かべた。
「き…さまら…、生きて…山から下りれると…思うな…」
山頂から、辺りを木々を飲みこみながら雪崩が押し寄せてくるのが見える。
うつ伏せに倒れる男は腹の下で手をモゾモゾと動かした。
はっとしたオレはヨルと飛段に怒鳴る。
「ヨル、飛段、崖に飛べ!」
「「!!」」
同時に地面から無数の土の手が生え、オレ達を捉えようとした。
水遁の男の首を手に持ったオレと、ヨルは右側の崖に飛び移り、その手の群れ逃れることができたが一歩遅れた飛段は外套の裾と両脚をつかまれた。
「飛段!」
「バカ! 早く上がってこい!」
オレとヨルは崖から声をかけ、飛段を急かす。
雪崩はもうそこまで押し寄せてきていた。
「チィッ、放せコラァ!!」
飛段は三連鎌で足下の土の手を次々と壊していくが、数が多くて切りがない。
雪崩に巻き込まれる直前、飛段は三連鎌を崖の壁に向け投げ飛ばした。
三連鎌の三刃がヨルの斜め下に突き刺さる。
飛段と三連鎌はワイヤーで繋がっているため、雪崩が通過するまで持ちこたえる気なのだろう。
死なない体だからこそできることだ。
しかし、
「!!」
雪崩に飲み込まれた、折れた木の頂が飛段の腹を貫通した。
その勢いに耐えきれず、飛段は雪崩に押し流される。
「飛段!!」
ヨルが叫んだ時には飛段の姿は完全に雪崩に飲み込まれた。
ワイヤーの限界がきたのか、崖の壁から三連鎌が外れる。
それをヨルは見逃さなかった。
つかまっていた崖の縁から手を離して飛び下り、雪崩に向かって落ちる三連鎌の柄につかまった。
「ヨル!」
雪崩の中に消える直前、ヨルは肩越しにこちらに振り返って力強い眼差しを向けた。
見捨てない者の目だった。
不意にその目とあの時の子供の目がオレの中で重なった。
『ごめん…っ。アンタを孤独にさせてしまった…』
あの子供はそう言ってオレの前から姿を消したことを、ふと、思い出した。
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「ヨル、さっきの術って逃亡用じゃなかったけ?」
「よほど相手が油断してないと、今のはできなかった」
敵を仕留めたあと、飛段とヨルがそんな会話をする。
オレは水遁の男の首を拾い、声をかけた。
「ヨル、ちゃんとトドメを刺せ」
「え?」とこちらに振り返ったヨルは、自分が片付けた土遁の男を見下ろした。
まだ息があった。
だが、もう長くはない。
「!」
その時、地面が微かに揺れて唸っていることに気付いた。
ヨルと飛段もそれに気付いたのか、ピクッと顔を見上げる。
音は少しずつ大きくなる。
土遁の男は力を振り絞って顔を上げ、不気味な笑みを浮かべた。
「き…さまら…、生きて…山から下りれると…思うな…」
山頂から、辺りを木々を飲みこみながら雪崩が押し寄せてくるのが見える。
うつ伏せに倒れる男は腹の下で手をモゾモゾと動かした。
はっとしたオレはヨルと飛段に怒鳴る。
「ヨル、飛段、崖に飛べ!」
「「!!」」
同時に地面から無数の土の手が生え、オレ達を捉えようとした。
水遁の男の首を手に持ったオレと、ヨルは右側の崖に飛び移り、その手の群れ逃れることができたが一歩遅れた飛段は外套の裾と両脚をつかまれた。
「飛段!」
「バカ! 早く上がってこい!」
オレとヨルは崖から声をかけ、飛段を急かす。
雪崩はもうそこまで押し寄せてきていた。
「チィッ、放せコラァ!!」
飛段は三連鎌で足下の土の手を次々と壊していくが、数が多くて切りがない。
雪崩に巻き込まれる直前、飛段は三連鎌を崖の壁に向け投げ飛ばした。
三連鎌の三刃がヨルの斜め下に突き刺さる。
飛段と三連鎌はワイヤーで繋がっているため、雪崩が通過するまで持ちこたえる気なのだろう。
死なない体だからこそできることだ。
しかし、
「!!」
雪崩に飲み込まれた、折れた木の頂が飛段の腹を貫通した。
その勢いに耐えきれず、飛段は雪崩に押し流される。
「飛段!!」
ヨルが叫んだ時には飛段の姿は完全に雪崩に飲み込まれた。
ワイヤーの限界がきたのか、崖の壁から三連鎌が外れる。
それをヨルは見逃さなかった。
つかまっていた崖の縁から手を離して飛び下り、雪崩に向かって落ちる三連鎌の柄につかまった。
「ヨル!」
雪崩の中に消える直前、ヨルは肩越しにこちらに振り返って力強い眼差しを向けた。
見捨てない者の目だった。
不意にその目とあの時の子供の目がオレの中で重なった。
『ごめん…っ。アンタを孤独にさせてしまった…』
あの子供はそう言ってオレの前から姿を消したことを、ふと、思い出した。
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