05:記憶の水滴
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*##NAME2##
人間誰しも、できることとできないことがある。
人間離れした“朱族”だって例外ではない。
なんでもできるほど万能なバケモノではない。
オレは今、できないことに直面していた。
普通の人間にもできないことだ。
できないはずだ。
なのに、
「……##NAME2##、早く来い」
「待たせんなよォ」
連れの2人はあっさりとやってのけてくれる。
「……ムリ;」
流れる川を見下ろしながら言った。
角都は無表情で、飛段は「え?」という顔だ。
「ムリだっつったんだよ!!」
オレは逆切れして怒鳴ってしまった。
だってそうだろ。
水の上を歩く人間がどこにいる。
「ハァ!? おまえこの間、木とか崖とか歩けたじゃねえか!(汗)」
飛段にそう言われ、3日前に木や崖を垂直に歩けた自分を思い出す。
変化の術と分身の術が使えるようになったあと、角都にもらった巻物を見ながら、チャクラをコントロールするために、何日もかけ、何度も後頭部を打って練習したからな。
成功したあの時の喜びは忘れはしない。
コブの痛みも忘れはしない。
「これじゃあ、町行けねえよォ…;」
今夜の宿は町の宿だ。
川を渡れば目と鼻の先である。
「回り道をすれば1日はかかる」と角都が言った。
「……………」
角都は河原に戻り、至近距離でオレと向かい合った。
「…“チャクラ”とは?」
いきなりの問いにオレは焦った。
「答えられなければ殺す」という目で見下ろされる。
「え…と…、忍が“術”を使う時に使用するエネルギーであり、身体エネルギーと精神エネルギーの2つで構成されている…もの?」
巻物の文章を思い出しながら口にする。
何度も読み直しておいてよかった。
ちなみに、“術”は2つのエネルギーを体内から絞り出し、練り上げ、意志である“印を結ぶ”ことによって発動されることも覚えてる。
「そのチャクラを、木や崖を登る際、どう使っている?」
それは嫌ってほど読み返した。
「必要な分だけ必要な箇所にチャクラを集め、ずっとそのチャクラ量を維持しながら木や崖を歩く」
角都は小さく頷いて河原に振り返る。
「それの応用だ。水面に浮くには、チャクラを足から水中に常に適量を放出し、自分の体を浮かぶ程度に釣り合わせる」
そう言って再び川の上を歩いた。
オレは頷いて印を組み、水面に足をつけて進もうと歩きだす。
ドボンッ!
早速やってしまった。
河原に這い上がると、目の前には角都の足があった。
見上げると、明らかに見下している目と合う。
「……聞け、小娘」
「ぷっ(笑)」
角都の後ろで噴き出した飛段をオレは見逃さなかった。
完全に格下扱いかっ。
「オレ達は先に町へ向かう。夜明けまでに予定の宿に来なければ、置いていく」
そう言い残し、角都はさっさと川を歩いて行ってしまう。
「あ、角都…!;」
オレは思わず手を伸ばした。
角都は途中で止まり、こちらに振り返る。
考え直してくれたかと思えば、そうじゃない。
「次は甘やかすと思うな。前にも言ったな?」
厳しい言葉を投げつけただけだった。
「角都! おいコラ! ツギハギィ!! 薄情者ォ!!」
キレたオレは角都の背中に向かって罵倒する。
途中で咳き込んだが、この場にいるもう一人の存在を思い出した。
「飛段!」
「おまえはオレを見捨てたりしないよな!?」と目で訴えようとしたが、飛段はその光線から逃げるように角都のあとを追いかける。
追いついたら血の夢見せてやる!! 絶対!!
そう心に誓い、水面へと一歩踏み出した。
ドボーン!
木登りは時間がかかったが、日が沈む時間には、足から下が浸かりながらも歩けるようになっていた。
バランスが悪くてグラグラする。
だが、あとは足の裏で水面の上に立つようにし、床を歩くようにスタスタ歩ければ完璧だ。
「見ろ、やればできる!!☆」と置いて行った2人に向かってエラそうに言いたい。
ドボン!
集中力が途切れてしまい、その場に落ちた。
「ぷはっ」
水面から顔を出し、しかめっ面のまま河原に戻る。
一度外套を脱ぎ、吸収された水を絞ってまた着た。
落ちて河原に戻っては何度もやっている。
笠を被るのはやめた。
びしょ濡れの体にはもう意味がない。
「…く…っ」
外套を絞る力もあまり残っていない。
昼食のとき、飛段の血をもっと吸っておけばよかったと後悔した。
その場に座り込み、少しだけ休憩をとることにした。
「あとは、自分の重さに合わせてチャクラを調節すればいいだけ…」
今の疲れた体では無理だとわかってる。
「一人ですか?」
「!」
振り返ると、笠を被ったイタチと鬼鮫がオレを見下ろしていた。
雨のせいで匂いが鈍ったのかもしれない。
気付けなかったことに内心舌打ちをした。
休憩を終えて団子屋を出たあと、オレ達と同じ道をまっすぐ来たのだろう。
「…ああ。角都と飛段は先にあの町に向かった。オレは先に行かせて水面歩行の修業」
鬼鮫の問いに強がって答えた。
置いて行かれた、なんてカッコ悪い話があってたまるか。
「そうでしたか。私はてっきり、水面歩行ができなくてお2人に置いて行かれたのかと…」
「!!(汗)」
鬼鮫の返しに、思わず顔に出そうになる。
み…、見られてたのか…?
図星発言に変な汗が出てしまう。
平静を装い、手を左右に振って否定した。
「ないない。このオレが置いて行かれるわけが…」
けど…、オレはいつだって置いてけぼりだ。
ふと、檻の中にいた頃の孤独な自分を思い出し、言葉を止めてしまった。
「……オレ達について来ないか?」
唐突に言い出したのは、イタチだった。
驚いたオレと鬼鮫は同時にイタチに振り向いた。
オレを見下ろすイタチの顔を見たあと、鬼鮫はもう一度オレを見下ろして納得するように言う。
「…そうですねぇ…。あのコンビと組んでいると、いずれ死にますよ、あなた」
親切心で言ってくれているのか怪しいが、2人の言うとおりだと思う。
賞金稼ぎのバイトは辛い思いをする時もあるし、賞金首を取り逃がして角都に殺されそうになった時もあった。
歳は止まり、体は人間より頑丈なだけで、不老であっても不死じゃない。
飛段のように心臓を刺されても死なないわけでも、角都のようにいくつも心臓を持ってるわけでもない。
共に行動していれば、いずれは弱点を知られ、殺されるかもしれない。
それは先かもしれないし、明日かもしれない。
今目の前にいる2人は、角都と比べて短気そうでもないし、飛段と比べてワガママそうでもないから、少なくともあの不死コンビよりは安全だろう。
よくよく考えれば、別に飛段じゃなくても、“暁”のメンバーと組んでいれば新鮮な人間の血が飲み放題だ。
「リーダーにはオレから話しておく。角都さん達にも伝わるだろう。キミが後ろめたさを感じる必要もない。…どうする?」
オレは立ち上がり、イタチに答える。
「…遠慮しとく」
鬼鮫は若干驚いているようだが、先に誘ってきたイタチの顔に驚きの色はない。
「なぜですか? あなたにとって得なことはなにもないと思いますが…」
オレは鬼鮫の問いに答える。
「得なら、ある」
それがなにかは教えてやらない。
「それに…」と言葉を続けた。
「水面歩行の修業をサボったなんて思われるのもシャクだ」
あの2人に置いて行かれるのも、シャクすぎる。
川を渡るのなら、水面歩行じゃなくても泳いで渡ればいい。
なのに、それをしないのは、それで追い付いたとしても置いてけぼりに変わりはない気がしたからだ。
「そうか…」
イタチは静かに言った。
そして、オレに背を向け、「鬼鮫、行くぞ」と行って歩きだした。
鬼鮫もそれに続く。
「アンタ達は町に行かないのか?」
その問いに、鬼鮫は歩きながら肩越しのオレに答える。
「角都がいるんでしょう? また金遣いのことでああだこうだ言われるのはたまりませんからね。今日のところは野宿しますよ」
それから「それと…」と続けた。
「この辺りに、腕の立つ抜け忍賞金稼ぎがいるらしいので、気をつけた方がいいですよ。彼らは高額の表の賞金首ばかり狙ってますからね。どこかの“サイフ役”と似てると思いませんか? ククッ…」
どこかの“サイフ役”とは、言わずもがな角都のことに違いない。
それにしても、“彼ら”ということは複数で行動しているのだろう。
イタチと鬼鮫の背中を見送ったあと、オレはすぐに水面歩行の修業を再開した。
ペースを速めるべきか。
.
人間誰しも、できることとできないことがある。
人間離れした“朱族”だって例外ではない。
なんでもできるほど万能なバケモノではない。
オレは今、できないことに直面していた。
普通の人間にもできないことだ。
できないはずだ。
なのに、
「……##NAME2##、早く来い」
「待たせんなよォ」
連れの2人はあっさりとやってのけてくれる。
「……ムリ;」
流れる川を見下ろしながら言った。
角都は無表情で、飛段は「え?」という顔だ。
「ムリだっつったんだよ!!」
オレは逆切れして怒鳴ってしまった。
だってそうだろ。
水の上を歩く人間がどこにいる。
「ハァ!? おまえこの間、木とか崖とか歩けたじゃねえか!(汗)」
飛段にそう言われ、3日前に木や崖を垂直に歩けた自分を思い出す。
変化の術と分身の術が使えるようになったあと、角都にもらった巻物を見ながら、チャクラをコントロールするために、何日もかけ、何度も後頭部を打って練習したからな。
成功したあの時の喜びは忘れはしない。
コブの痛みも忘れはしない。
「これじゃあ、町行けねえよォ…;」
今夜の宿は町の宿だ。
川を渡れば目と鼻の先である。
「回り道をすれば1日はかかる」と角都が言った。
「……………」
角都は河原に戻り、至近距離でオレと向かい合った。
「…“チャクラ”とは?」
いきなりの問いにオレは焦った。
「答えられなければ殺す」という目で見下ろされる。
「え…と…、忍が“術”を使う時に使用するエネルギーであり、身体エネルギーと精神エネルギーの2つで構成されている…もの?」
巻物の文章を思い出しながら口にする。
何度も読み直しておいてよかった。
ちなみに、“術”は2つのエネルギーを体内から絞り出し、練り上げ、意志である“印を結ぶ”ことによって発動されることも覚えてる。
「そのチャクラを、木や崖を登る際、どう使っている?」
それは嫌ってほど読み返した。
「必要な分だけ必要な箇所にチャクラを集め、ずっとそのチャクラ量を維持しながら木や崖を歩く」
角都は小さく頷いて河原に振り返る。
「それの応用だ。水面に浮くには、チャクラを足から水中に常に適量を放出し、自分の体を浮かぶ程度に釣り合わせる」
そう言って再び川の上を歩いた。
オレは頷いて印を組み、水面に足をつけて進もうと歩きだす。
ドボンッ!
早速やってしまった。
河原に這い上がると、目の前には角都の足があった。
見上げると、明らかに見下している目と合う。
「……聞け、小娘」
「ぷっ(笑)」
角都の後ろで噴き出した飛段をオレは見逃さなかった。
完全に格下扱いかっ。
「オレ達は先に町へ向かう。夜明けまでに予定の宿に来なければ、置いていく」
そう言い残し、角都はさっさと川を歩いて行ってしまう。
「あ、角都…!;」
オレは思わず手を伸ばした。
角都は途中で止まり、こちらに振り返る。
考え直してくれたかと思えば、そうじゃない。
「次は甘やかすと思うな。前にも言ったな?」
厳しい言葉を投げつけただけだった。
「角都! おいコラ! ツギハギィ!! 薄情者ォ!!」
キレたオレは角都の背中に向かって罵倒する。
途中で咳き込んだが、この場にいるもう一人の存在を思い出した。
「飛段!」
「おまえはオレを見捨てたりしないよな!?」と目で訴えようとしたが、飛段はその光線から逃げるように角都のあとを追いかける。
追いついたら血の夢見せてやる!! 絶対!!
そう心に誓い、水面へと一歩踏み出した。
ドボーン!
木登りは時間がかかったが、日が沈む時間には、足から下が浸かりながらも歩けるようになっていた。
バランスが悪くてグラグラする。
だが、あとは足の裏で水面の上に立つようにし、床を歩くようにスタスタ歩ければ完璧だ。
「見ろ、やればできる!!☆」と置いて行った2人に向かってエラそうに言いたい。
ドボン!
集中力が途切れてしまい、その場に落ちた。
「ぷはっ」
水面から顔を出し、しかめっ面のまま河原に戻る。
一度外套を脱ぎ、吸収された水を絞ってまた着た。
落ちて河原に戻っては何度もやっている。
笠を被るのはやめた。
びしょ濡れの体にはもう意味がない。
「…く…っ」
外套を絞る力もあまり残っていない。
昼食のとき、飛段の血をもっと吸っておけばよかったと後悔した。
その場に座り込み、少しだけ休憩をとることにした。
「あとは、自分の重さに合わせてチャクラを調節すればいいだけ…」
今の疲れた体では無理だとわかってる。
「一人ですか?」
「!」
振り返ると、笠を被ったイタチと鬼鮫がオレを見下ろしていた。
雨のせいで匂いが鈍ったのかもしれない。
気付けなかったことに内心舌打ちをした。
休憩を終えて団子屋を出たあと、オレ達と同じ道をまっすぐ来たのだろう。
「…ああ。角都と飛段は先にあの町に向かった。オレは先に行かせて水面歩行の修業」
鬼鮫の問いに強がって答えた。
置いて行かれた、なんてカッコ悪い話があってたまるか。
「そうでしたか。私はてっきり、水面歩行ができなくてお2人に置いて行かれたのかと…」
「!!(汗)」
鬼鮫の返しに、思わず顔に出そうになる。
み…、見られてたのか…?
図星発言に変な汗が出てしまう。
平静を装い、手を左右に振って否定した。
「ないない。このオレが置いて行かれるわけが…」
けど…、オレはいつだって置いてけぼりだ。
ふと、檻の中にいた頃の孤独な自分を思い出し、言葉を止めてしまった。
「……オレ達について来ないか?」
唐突に言い出したのは、イタチだった。
驚いたオレと鬼鮫は同時にイタチに振り向いた。
オレを見下ろすイタチの顔を見たあと、鬼鮫はもう一度オレを見下ろして納得するように言う。
「…そうですねぇ…。あのコンビと組んでいると、いずれ死にますよ、あなた」
親切心で言ってくれているのか怪しいが、2人の言うとおりだと思う。
賞金稼ぎのバイトは辛い思いをする時もあるし、賞金首を取り逃がして角都に殺されそうになった時もあった。
歳は止まり、体は人間より頑丈なだけで、不老であっても不死じゃない。
飛段のように心臓を刺されても死なないわけでも、角都のようにいくつも心臓を持ってるわけでもない。
共に行動していれば、いずれは弱点を知られ、殺されるかもしれない。
それは先かもしれないし、明日かもしれない。
今目の前にいる2人は、角都と比べて短気そうでもないし、飛段と比べてワガママそうでもないから、少なくともあの不死コンビよりは安全だろう。
よくよく考えれば、別に飛段じゃなくても、“暁”のメンバーと組んでいれば新鮮な人間の血が飲み放題だ。
「リーダーにはオレから話しておく。角都さん達にも伝わるだろう。キミが後ろめたさを感じる必要もない。…どうする?」
オレは立ち上がり、イタチに答える。
「…遠慮しとく」
鬼鮫は若干驚いているようだが、先に誘ってきたイタチの顔に驚きの色はない。
「なぜですか? あなたにとって得なことはなにもないと思いますが…」
オレは鬼鮫の問いに答える。
「得なら、ある」
それがなにかは教えてやらない。
「それに…」と言葉を続けた。
「水面歩行の修業をサボったなんて思われるのもシャクだ」
あの2人に置いて行かれるのも、シャクすぎる。
川を渡るのなら、水面歩行じゃなくても泳いで渡ればいい。
なのに、それをしないのは、それで追い付いたとしても置いてけぼりに変わりはない気がしたからだ。
「そうか…」
イタチは静かに言った。
そして、オレに背を向け、「鬼鮫、行くぞ」と行って歩きだした。
鬼鮫もそれに続く。
「アンタ達は町に行かないのか?」
その問いに、鬼鮫は歩きながら肩越しのオレに答える。
「角都がいるんでしょう? また金遣いのことでああだこうだ言われるのはたまりませんからね。今日のところは野宿しますよ」
それから「それと…」と続けた。
「この辺りに、腕の立つ抜け忍賞金稼ぎがいるらしいので、気をつけた方がいいですよ。彼らは高額の表の賞金首ばかり狙ってますからね。どこかの“サイフ役”と似てると思いませんか? ククッ…」
どこかの“サイフ役”とは、言わずもがな角都のことに違いない。
それにしても、“彼ら”ということは複数で行動しているのだろう。
イタチと鬼鮫の背中を見送ったあと、オレはすぐに水面歩行の修業を再開した。
ペースを速めるべきか。
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