39:故郷へ
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*飛段
話を聞き終えたオレはただ茫然としていた。
客はいつの間にかオレ達だけになっていた。
「…それで…、よく無事だったな…」
「無事なわけがないでしょ」
水波は湯呑に残った最後の一口を飲んで湯呑を置いたあと、右腕をまくりあげた。
「!」
そこには大きな爪痕と噛み傷が残っていた。
「逃げるのも命懸けだった」
おそらく、右腕だけではないだろう。
ローブを身に纏っていたのは体の傷を隠すためか。
「……………」
沈黙の時間は短かった。
「どうする?」
「!」
突然の質問にオレは顔を上げた。
「…ヨルはまだあの村にいると思う。…どうする?」
「……………」
「こんな傷つけられたけど、別に恨んじゃいないわ。…あたしが止められなかったのが悪い…。ヨルを置いてきてしまった。助けたいと思ってる。まだ借りも返してない…」
しかし、ひとりで止めることはできない。
だから、オレのところに来たのかもしれない。
オレは目の前の、すっかり冷えた湯呑の茶を一気飲みしたあと、席から立ち上がった。
「今度はオレがあいつを、迎えに行ってやらねえとな」
その言葉を聞いた水波は安堵の笑みを浮かべ、同じく席から立ち上がった。
「案内してくれねーか」
ヨルの故郷に。
居酒屋に寄ったのに、酒ひとつも飲まなかったオレ達に、店主は訝しげな顔をしながらも「まいどー」と声をかけた。
雨はやんでいた。
.
話を聞き終えたオレはただ茫然としていた。
客はいつの間にかオレ達だけになっていた。
「…それで…、よく無事だったな…」
「無事なわけがないでしょ」
水波は湯呑に残った最後の一口を飲んで湯呑を置いたあと、右腕をまくりあげた。
「!」
そこには大きな爪痕と噛み傷が残っていた。
「逃げるのも命懸けだった」
おそらく、右腕だけではないだろう。
ローブを身に纏っていたのは体の傷を隠すためか。
「……………」
沈黙の時間は短かった。
「どうする?」
「!」
突然の質問にオレは顔を上げた。
「…ヨルはまだあの村にいると思う。…どうする?」
「……………」
「こんな傷つけられたけど、別に恨んじゃいないわ。…あたしが止められなかったのが悪い…。ヨルを置いてきてしまった。助けたいと思ってる。まだ借りも返してない…」
しかし、ひとりで止めることはできない。
だから、オレのところに来たのかもしれない。
オレは目の前の、すっかり冷えた湯呑の茶を一気飲みしたあと、席から立ち上がった。
「今度はオレがあいつを、迎えに行ってやらねえとな」
その言葉を聞いた水波は安堵の笑みを浮かべ、同じく席から立ち上がった。
「案内してくれねーか」
ヨルの故郷に。
居酒屋に寄ったのに、酒ひとつも飲まなかったオレ達に、店主は訝しげな顔をしながらも「まいどー」と声をかけた。
雨はやんでいた。
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