38:鬼さんどちら
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*飛段
運悪く、宿を飛び出して数分もしないうちに小雨が降ってきた。
それでも戻ってなんかやるもんか。
今戻ったら格好がつかねえし。
「あのジジイ…」
舌打ちし、家の前に置かれた植木鉢を蹴った。
さっきの角都の言葉がまだ胸に刺さっている。
あんなキツいこと続けざまに言われるとは思ってなかった。
ヨルの傍にいたいなら?
なにを勘違いしてんだ。
おまえも一緒にいてほしいに決まってるじゃねえか。
角都のことをなにも思ってなかったら、とっくの昔にヨルのところに行ってるっての。
普段は鋭いくせに、そろそろボケてきたのか。
「角都のボケェ」
「ケンカ?」
不意に声をかけられて振り返ると、ローブを身に纏った奴がそこにいた。
声からして女だ。
フードを被って目を隠している。
「…なんだてめー?」
「声でわからない?」
そう言われてみれば、どこかで聞いた声だ。
そいつはため息をつき、「ほら」とフードを上げてその顔を見せた。
「!!」
その顔と、フードからはみ出している水色の髪。
「み…、水波か?」
「久しぶり」
そう言って、水波は微笑んだ。
岩隠れの里の暗部の思惑で開催された武闘大会で、オレ達とチームを組んでいた霧隠れのくの一。
連れのセキの正体がユウだったことに気付かず、利用されるだけされて、捨てられた。
岩隠れの里を出る前にヨルの誘いを断り、それっきりだった。
てっきり、暁の仲間と思われて捕まってると思っていた。
「アハハッ、相変わらず眉間に皺寄せてるわねぇ。どう? 久しぶりの再会に、飲んでかない?」
水波はオレに近づき、袖を軽く引っ張った。
「いや…、せっかくだけどよォ、そんな気分じゃ…」
断ろうとしたが、不意にぐいと強めに引っ張られ、囁かれる。
「ヨルに会った」
「!」
さっきの軽い空気はどこへ行ったのか。
小声で言われたため、誰かに聞かれてはマズいのかもしれない。
すぐに思い当たった。
アサとか。
あいつもどこでオレ達を見ているかわからねーからな。
オレは顔に出さず、すぐにムリヤリ笑みを浮かべた。
「へぇ、そりゃどんな店だ?」
「ノッてきたわね。こっちよ」
我ながらわざとらしかったが、水波はうまく合わせてくれた。
水波が一歩先頭を歩き、オレは大人しくそのあとについていく。
目を配り、怪しい奴がオレ達を見ていないか確認した。
「……ヨルはどこだ?」
水波にだけ聞こえるような声量で声をかけた。
水波はオレに背を向けながら同じく声を潜めて答える。
「それはあとで」
「じゃあ、あいつは今なにしてんだ? それだけでも…」
「……………」
「水波…」
一刻も早く、あいつの状態が知りたかった。
肩をつかんで止めようと、オレが水波の肩に手を伸ばそうとした時だ。
「ヨルは…」
その声に、オレの手は上がりきる前に止まる。
一度間を置き、水波は躊躇いがちに答えた。
「……ヨルは、バケモノになった」
.To be continued
運悪く、宿を飛び出して数分もしないうちに小雨が降ってきた。
それでも戻ってなんかやるもんか。
今戻ったら格好がつかねえし。
「あのジジイ…」
舌打ちし、家の前に置かれた植木鉢を蹴った。
さっきの角都の言葉がまだ胸に刺さっている。
あんなキツいこと続けざまに言われるとは思ってなかった。
ヨルの傍にいたいなら?
なにを勘違いしてんだ。
おまえも一緒にいてほしいに決まってるじゃねえか。
角都のことをなにも思ってなかったら、とっくの昔にヨルのところに行ってるっての。
普段は鋭いくせに、そろそろボケてきたのか。
「角都のボケェ」
「ケンカ?」
不意に声をかけられて振り返ると、ローブを身に纏った奴がそこにいた。
声からして女だ。
フードを被って目を隠している。
「…なんだてめー?」
「声でわからない?」
そう言われてみれば、どこかで聞いた声だ。
そいつはため息をつき、「ほら」とフードを上げてその顔を見せた。
「!!」
その顔と、フードからはみ出している水色の髪。
「み…、水波か?」
「久しぶり」
そう言って、水波は微笑んだ。
岩隠れの里の暗部の思惑で開催された武闘大会で、オレ達とチームを組んでいた霧隠れのくの一。
連れのセキの正体がユウだったことに気付かず、利用されるだけされて、捨てられた。
岩隠れの里を出る前にヨルの誘いを断り、それっきりだった。
てっきり、暁の仲間と思われて捕まってると思っていた。
「アハハッ、相変わらず眉間に皺寄せてるわねぇ。どう? 久しぶりの再会に、飲んでかない?」
水波はオレに近づき、袖を軽く引っ張った。
「いや…、せっかくだけどよォ、そんな気分じゃ…」
断ろうとしたが、不意にぐいと強めに引っ張られ、囁かれる。
「ヨルに会った」
「!」
さっきの軽い空気はどこへ行ったのか。
小声で言われたため、誰かに聞かれてはマズいのかもしれない。
すぐに思い当たった。
アサとか。
あいつもどこでオレ達を見ているかわからねーからな。
オレは顔に出さず、すぐにムリヤリ笑みを浮かべた。
「へぇ、そりゃどんな店だ?」
「ノッてきたわね。こっちよ」
我ながらわざとらしかったが、水波はうまく合わせてくれた。
水波が一歩先頭を歩き、オレは大人しくそのあとについていく。
目を配り、怪しい奴がオレ達を見ていないか確認した。
「……ヨルはどこだ?」
水波にだけ聞こえるような声量で声をかけた。
水波はオレに背を向けながら同じく声を潜めて答える。
「それはあとで」
「じゃあ、あいつは今なにしてんだ? それだけでも…」
「……………」
「水波…」
一刻も早く、あいつの状態が知りたかった。
肩をつかんで止めようと、オレが水波の肩に手を伸ばそうとした時だ。
「ヨルは…」
その声に、オレの手は上がりきる前に止まる。
一度間を置き、水波は躊躇いがちに答えた。
「……ヨルは、バケモノになった」
.To be continued