04:弱さの晒し者
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賞金稼ぎはヨル達だけではない。
そして、賞金首は相手だけではない。
“暁”はやっぱりお尋ね者だったことを、突然の奇襲によってヨルは数秒前に思い出した。
「見つけたぞ、“暁”!」
「貴様らの首、オレ達がもらった!」
敵は全員、マークは違うが角都と飛段と同じ額当てをしている。
数は20人近く、完全に囲まれてしまった。
面倒だな、とヨルは露骨に顔に出てしまう。
のんびりと山道を歩いてただけなのに、悪いことをしたつもりはない。
そう言っても、通じない相手だということは百も承知だ。
「大体、この外套がダメなんじゃねえの? 我ら、“暁”! ってアピールしてるようなモンじゃん」
自分の胸倉を引っ張り、角都と飛段に言った。
「オレァ、別に構わねえぜ。儀式用の生贄共がやってくるしィ」と言って鎌を振り回す飛段。
「オレの場合、背中が目立つ」と言って敵と向き合う角都。
ヨルが拒否を示しても、角都と飛段は知らんふりだ。それどころか臨戦態勢である。
ヨルはため息をつき、コウモリの翼を見せつけてから“夢魔”を背中から引き抜く。
ヨルの姿を見た敵は全員仰天していた。
「昼前だけど、血の夢見せてやる」
先攻はヨルと飛段。
ヨルは左へ、飛段は右へと突進して得物を振り上げる。
ひとりにつき10人。
敵は意外に速く、手練れだ。ヨルの“夢魔”を難なく避けてみせる。
避けた敵は木の枝へと飛び移り、無数の手裏剣を投げてきた。
ヨルは素早く両手の“夢魔”を振り回してそれを払う。
「チッ!」
投げられたうちのひとつがヨルの左こめかみを掠った。
「!」
敵の内の3人が、まるで道を駆けるように木を垂直に駆け下りてきた。
(角都と飛段と同じ、忍か!)
ヨルがようやく理解したところで、敵はクナイを構えて3人がかりでかかってくる。
久しぶりに、ヨルの血が騒ぐ。
左右前からひとりずつ突進してくる。
左の敵のクナイを左手の、右の敵のクナイを右手の“夢魔”で受け止め、前の敵には、
「テメーにゃコレだぁ!!」
ゴッ!!
「がは!?」
宙返りし、その勢いで爪先でアゴを蹴りあげてやった。
ついでに左右の敵からも抜けだし、着地する前に両手の“夢魔”を交差させ、左右の敵の首筋を切りつけた。
「ぐあ!」
「ぎゃあ!」
切られた首筋を押さえ、のたうちまわる。
枝の上に残っている敵達はこちらに手裏剣を投げようと構えた。
ヨルは不敵な笑みを浮かべ、口を「い」の形にする。
“音寄せ”
人間の耳には聞こえない音を発した。
場所が良かったようだ。音に寄せられ、それはすぐに来た。
「うわ!!」
「なんだ!?」
「コウモリ!?」
コウモリの群れが枝の上の敵に容赦なく襲いかかる。
たまらなくなった敵は枝から次々と落ちてきた。
ヨルは冷静に、夜行性なのに眠っていた彼らを呼びだしたことに悪気を感じてしまう。
飛段の目の端に、コウモリを呼びだして敵を混乱させるヨルの戦いが映った。
「おお、スゲー、あいつ、あんなこともできるのか」
振り返って「ヒュ~」と口笛を吹く。
その隙を突いて目の前に数人の敵が迫ってきた。
「どこを見てる!?」
「もらったぁ!」
敵が直接クナイをグサグサと飛段に突き刺しまくる。
腹、右横腹、左胸、右脇。普通の人間ならとっくに死んでいるだろう。
「…ハァー、痛ってーなァ」
しかし、飛段は血を吐くだけで呆れたように返すだけだ。
ありえない光景を目にした敵は仰天し、うかつに動きを完全に止めた。
「こいつ、生きてるぞ!?」
「馬鹿な!!」
「誰がバカだコラ」
飛段にとっては、敵と出くわすたびにその顔を何度見てきたことか。
その時、背後の殺気に気付く。飛段は前を見たまま、声をかけた。
「角都ゥ、オレの儀式用、ひとり残しとけよ」
「面倒な奴だ」
飛段がなにか言い返してやろうかと振り返ると、肩越しに角都の背中から2匹の黒い塊出てきたのが見えた。
圧害と頭刻苦だ。
印を組む角都。
「“火遁・頭刻苦”、“風遁・圧害”!」
火と風のコンボ技だ。
炎の竜巻が飛段ごと敵を吹っ飛ばす。
巻き込まれた周りの木々も粉砕された。
大技1つですべて終わった。
「最初から使えってんだ」と飛段は文句を呟きながら外套に付着した土を払い、立ち上がって辺りを見回す。
「ぐ…っ」
山道の右端にまだ息のある敵がひとり。
飛段から見れば、儀式用だ。
飛段は、苦しそうに呻いている男の右頬に鎌の刃先を突きたて、傷をつける。
鎌の刃先に付着した男の血を舐めとったあと、懐から取り出した伸縮式の杭で自分の右てのひらを貫き、足下に血を滴らせて足を使ってジャシン様のマークを描いた。
体はすでに変色している。
そして、マークの真ん中に立ち、杭で躊躇いなく自身の心臓を貫いた。
「ぐ…っあぁ…っ」
生贄の男は胸を押さえてビクビクと痙攣し、やがて、動かなくなると、飛段は仰向けに倒れ、祈りを捧げる。
「さっさと済ませろ」
低い声でそう言いながら角都が飛段に近付いた。
角都の傍らには圧害と頭刻苦がいる。
「ジャマすんなよ!」
急かす角都に苛立ちを覚えて飛段は怒鳴った。
「祈りを知らねえ無神ろ……」
言葉を途中で切ったのは、角都の背後のヨルを見たからだ。
ヨルは頬を赤く染め、少し離れた角都の後ろ姿を穴が空くくらいじっと見つめていた。
目を逸らしたかと思えば、やはり気になるのかチラチラと見ている。
(え、ちょ…、マジ本気? そうなのか? いやいや……)
飛段は混乱した。
(ヨルが…、角都を…?)
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