36:深淵の底へ
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*ヨル
目を覚ますと、最初に木造の宿の一室の天井が映った。
オレは布団から上半身を起こし、大きな欠伸をする。
「なんか…、寝た気がしねーなぁ…」
ガシガシと後頭部を掻き、顔にかかった髪をどかした。
窓の障子には、朝日の光がうっすらと光っている。
左右を見るが、この部屋に敷かれた布団はオレが寝ていた布団だけだ。
朝っぱらから違和感だ。
朝起きれば、左にあるはずの布団はいつの間にか畳まれていて、右にあるはずの布団にはまだ大口を開けて眠り続ける馬鹿面があったのに。
これが夢だったらいいのに。
こんな心の呟きも、オレの中にいる夢魘に丸聞こえだろう。
部屋の隅の服掛けにも、一着分の外套しかかかっていない。
「…はぁ…。…あ―――も―――!」
いたたまれなくなったオレは立ち上がり、1階に宿泊中かもしれない客に聞こえるように畳を踏み鳴らしながら、部屋に設置された洗面所へ向かい、何度も顔を洗って目の前の鏡と睨み合った。
「らしくねえよ」
まるで本格的に寂しがってるみたいじゃないか。
自分と睨み合ったのはいいが、鏡に映る自分の隣に、一緒に並んで歯を磨くあの2人の姿が見えた気がしてすぐに頭をブンブンと横に振った。
「クソ!」
また何度も顔を洗う。
さっきから頭をよぎるものも洗い流せればいいのに。
「ヨル、起きているか」
出入口の襖がノックされ、優しく穏やかな声が聞こえ、オレは一瞬動きを止めて答える。
「…ああ。起きてるよ、アサ」
オレはもう一度鏡と向き合って、鏡に映る自分に言い聞かせる。
ほら、今オレの傍にいるのはアサだ。
もうあの2人じゃない。
だから、そんな、世界が終わったような暗い顔をするな。
わかったな、オレ。
これは、おまえが決めたことなんだから。
.
目を覚ますと、最初に木造の宿の一室の天井が映った。
オレは布団から上半身を起こし、大きな欠伸をする。
「なんか…、寝た気がしねーなぁ…」
ガシガシと後頭部を掻き、顔にかかった髪をどかした。
窓の障子には、朝日の光がうっすらと光っている。
左右を見るが、この部屋に敷かれた布団はオレが寝ていた布団だけだ。
朝っぱらから違和感だ。
朝起きれば、左にあるはずの布団はいつの間にか畳まれていて、右にあるはずの布団にはまだ大口を開けて眠り続ける馬鹿面があったのに。
これが夢だったらいいのに。
こんな心の呟きも、オレの中にいる夢魘に丸聞こえだろう。
部屋の隅の服掛けにも、一着分の外套しかかかっていない。
「…はぁ…。…あ―――も―――!」
いたたまれなくなったオレは立ち上がり、1階に宿泊中かもしれない客に聞こえるように畳を踏み鳴らしながら、部屋に設置された洗面所へ向かい、何度も顔を洗って目の前の鏡と睨み合った。
「らしくねえよ」
まるで本格的に寂しがってるみたいじゃないか。
自分と睨み合ったのはいいが、鏡に映る自分の隣に、一緒に並んで歯を磨くあの2人の姿が見えた気がしてすぐに頭をブンブンと横に振った。
「クソ!」
また何度も顔を洗う。
さっきから頭をよぎるものも洗い流せればいいのに。
「ヨル、起きているか」
出入口の襖がノックされ、優しく穏やかな声が聞こえ、オレは一瞬動きを止めて答える。
「…ああ。起きてるよ、アサ」
オレはもう一度鏡と向き合って、鏡に映る自分に言い聞かせる。
ほら、今オレの傍にいるのはアサだ。
もうあの2人じゃない。
だから、そんな、世界が終わったような暗い顔をするな。
わかったな、オレ。
これは、おまえが決めたことなんだから。
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