35:林檎と涙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*ユウ
地に舞い降りて鉤爪を木に突き立て、その木を根元から引っこ抜き、ヨル目掛け投げつける。
同じくヨルもすぐ傍の木に刀を突き立て、根元から引っこ抜いて投げた。
2本の大木がボクとヨルの間で激突し、横に弾ける。
朱鬼の怪力までうまく扱えてるな。
「面白くない! くだらない意地張っちゃってさぁ!!」
両手を合わせると同時に飛び、高速回転でヨルに突っ込む。
風遁・辻風!
「っ!」
ヨルは右へ飛んだが、左肩を抉ってやった。
回転をやめて地面に着地して振り返ると、ヨルは右膝をついていた。
だが、抉られたところがすぐに再生すると、すぐに真っ直ぐに立ち上がった。
「…辛いでしょ? 再生にもけっこうな血を費やしてるはず。そろそろ…、完全な鬼になっちゃうよ?」
ヨルは肩で息をし、余裕のないその顔には大量の汗が貼りついていた。
露出した左肩は漆黒の色に染まっている。
その色は徐々にヨルの体を蝕むように広がっていく。
「それもそれで面白いけど、ボクは理性があるままのヨルを殺したい!!」
死に際に刻んでほしい。
ボクがキミを殺したと。
「紅羽乱舞!!」
無数の羽根を飛ばした。
通常の時より多く、束になってかかるこれが防ぎきれるはずがない。
羽根はすぐそこまで迫っているのに、なぜかヨルは避ける素振りを見せない。
ヨルは息をゆっくりと吐いたあと、刀を振り上げた。
まさか、全部まとめて切るつもりなのか。
「それで防ぎきれると思ってんの!? やっぱバカ! ヨルはバカだ! 愚かだ! 脆弱だ! この…」
「この失敗作」
「…っ、この…、失敗作―――!!」
研究所で言われた言葉をそのまま吐き捨てる。
「失敗作じゃない…。天空が生み出してくれた“オレ達”は…失敗作なんかじゃない」
「!」
こんな状況に関わらず、ヨルはフッと笑みを浮かべた。
同時に、ヨルの全身からチャクラが漏れ出し、それは赤と黒の混じった炎のとなって揺らめき、刀身に集中的にまとわりついた。
「な…」
紅羽乱舞が激突する寸前、ヨルは刀を振り下ろす。
ドン!!
刀にまとわりついた炎は、大口を開けるように広がって羽根をすべて飲み込んだ。
「うそ…! なんだよ…、なんだよコレ…!?」
「……………」
ヨルはボクに顔を向け、ゆっくりとボクに近づいてくる。
ボクは思わずたじろぎ、ヨルの刀を凝視した。
気のせいだろうか、刀身にまとうチャクラがニヤリと笑った気がした。
「じょ…、冗談じゃん…。ボクが妹を殺すわけないでしょ…。昔はいじめて悪かったよ。ほら、あの頃ってホント子供だったし…」
ボクは両手を広げ、「遊びが過ぎたっていうか…」と言い訳がましいことをベラベラ喋りながらヘラヘラと笑った。
「オレは言ったはずだ。あいつらを巻き込むな、ってな」
ギロリとした鋭い目付きは怒りをあらわにしていた。
まったくの計算違いだ。
鬼化すれば最初は暴走するだけかと思ってたのに。
怪力どころか、武器までコントロールできてる。
ボクがどれだけ苦労して鬼化のコントロールを取得したと思ってるんだ。
ふざけるな。
ふと研究所のことを思い出し、ボクの額に青筋が浮かんだ。
「いい加減にしろよ、クソコウモリ女ぁ!! 目を覚ませ!! あいつらはボク達とは違う!! 違うんだよ!?」
「あなたは普通の人間とは違う。いいえ、まったくの別物」
「また殺してしまったの? 没の実験体でも、無限にあるわけじゃないのよ」
「お友達だったの? だから? 実験を成功させないあなたが悪いわ」
脳裏をめぐる言葉に思わず頭を抱えた。
「いつかヨルだって、あいつらを殺しちゃうんだ!! やっぱそうだ!! 絶対そう!! 最後の一滴まで啜り切って!!」
「……………殺さない…。オレは血が欲しくてあいつらを生かしたわけじゃない…! 生きてほしいから…、生きてほしかったから飲ませたんだ!」
「全部全部、綺麗事!!」
ボクは鉤爪を構えて突っ込んだ。
ボクの右手の鉤爪とヨルの刀がぶつかる。
バキン!
「ボクの…鉤爪が…!?」
すれ違ったあと、手元を見ると、ボクの右手の鉤爪が砕けていた。
振り返ると、宙を掻いた鉤爪がボクとヨルの中心の地面に突き刺さる。
ヨルの刀は刃こぼれがひとつもない。
「なにを…した!?」
ヨルは振り返り、刀を見せつける。
「…喰ったんだ、コイツが」
「はぁ!?」
「…便利だ…。使い方は…、オレの中の鬼が教えてくれる…」
それはボクも知ってる。
ヨルのあの武器は、ただ振り回して斬ったりするものじゃないのか。
そう考えたとき、ヨルが斬りかかってきた。
「!」
はっとしたボクは左手の夢魔でそれを受け止めようとする。
刃と刃がぶつかりあった瞬間、すぐにボクの鉤爪だけ刃先が欠けた。
「バカな!?」
ボクが今使ってる鉤爪は世界一硬い鉱石を使って作らせた武器なのに。
打ち合うたびにボロボロと鉤爪の刃が欠けていき、虫食いのような状態になったとき、ついにヨルの刀の刃先がボクの右頬を切った。
「…!?」
その違和感にはすぐに気付いた。
なぜ、再生しないのか。
それほど深い傷ではないはずだ。
後ろへと飛び退きながら攻撃を防御していくうちに、ボクは崖へと追い込まれた。
下は深く真っ暗な谷底だ。
ヨルはすぐには斬りかかってこなかった。
「ヨル…、その刀…なに…?」
背後の谷底と目の前の気にしながら尋ねる。
「……言ったろ、コイツは…、“夢魘(むえん)”は斬るというより、喰っちまう。なんでも…。朱鬼の細胞も…」
「朱鬼の細胞も!?」
だから、すぐに再生しなかったのか。
人間にとっても朱族にとっても、夢魘と言ったか、その刀は天敵じゃないか。
目の前のヨルはもう顔の右半分が漆黒に染まっていた。
「う…っ!」
突然、ヨルがガクッと傾いた。
今しかない。
ヨルを殺すには、この瞬間しかない。
「!!」
ヨルの背後と谷底から鳥の群れが飛び出した。
背後の鳥の群れはヨルの背中に突き刺さり、その背中の羽根を封じ、谷底から飛び出した鳥の群れはその体に纏わりついてヨルを崖から引っ張り落とした。
「ユウ…!」
落下する鳥の塊から声が聞こえると同時に、夢魘が鳥の塊から飛び出した。
それはボク目掛け鎖を伸ばしながら向かってくる。
「おっと」
最後の悪あがきか。
ボクは右横に軽く飛んで避ける。
「これでさよならだね、ヨル!」
すぐにヨルがどうなったかを見下ろした時だ。
ズブッ!
「…!?」
胸に激痛が走った。
「が…っ」
胸元を見ると、避けたはずの夢魘の刀身がボクの左胸を貫いていた。
すぐにそれは背後から引き抜かれ、右足の狂翼を切り裂かれる。
「お…まえ…!」
肩越しにそいつの顔を見た。
「今日は一日儀式してねーんだ…。送ってやるよ、ジャシン様の御許になァ」
「この…ガキ…ッ!!」
足下の感覚がなくなり、ボクはそのまま真っ逆さまに落下していく。
もしかして、ヨルは飛段が近づいていたことに気付いていたのだろうか。
「…また、ボクの負けか」
飛段が夢魘をつかんでいるため、ビン、とそれに繋がってるヨルの落下が止まる。
ボクがやられて鳥達がヨルから離れた。
ボクは逆さまの状態でヨルとすれ違いの際に目が合い、薄笑みを浮かべる。
「遊びはここまでだね、ヨル…」
闇に堕ちていく。
でも、また這い上がってやるさ。
翼をもがれようとも。
「やっぱ死なない…。ボクはまだ…、死なないよ!」
.
地に舞い降りて鉤爪を木に突き立て、その木を根元から引っこ抜き、ヨル目掛け投げつける。
同じくヨルもすぐ傍の木に刀を突き立て、根元から引っこ抜いて投げた。
2本の大木がボクとヨルの間で激突し、横に弾ける。
朱鬼の怪力までうまく扱えてるな。
「面白くない! くだらない意地張っちゃってさぁ!!」
両手を合わせると同時に飛び、高速回転でヨルに突っ込む。
風遁・辻風!
「っ!」
ヨルは右へ飛んだが、左肩を抉ってやった。
回転をやめて地面に着地して振り返ると、ヨルは右膝をついていた。
だが、抉られたところがすぐに再生すると、すぐに真っ直ぐに立ち上がった。
「…辛いでしょ? 再生にもけっこうな血を費やしてるはず。そろそろ…、完全な鬼になっちゃうよ?」
ヨルは肩で息をし、余裕のないその顔には大量の汗が貼りついていた。
露出した左肩は漆黒の色に染まっている。
その色は徐々にヨルの体を蝕むように広がっていく。
「それもそれで面白いけど、ボクは理性があるままのヨルを殺したい!!」
死に際に刻んでほしい。
ボクがキミを殺したと。
「紅羽乱舞!!」
無数の羽根を飛ばした。
通常の時より多く、束になってかかるこれが防ぎきれるはずがない。
羽根はすぐそこまで迫っているのに、なぜかヨルは避ける素振りを見せない。
ヨルは息をゆっくりと吐いたあと、刀を振り上げた。
まさか、全部まとめて切るつもりなのか。
「それで防ぎきれると思ってんの!? やっぱバカ! ヨルはバカだ! 愚かだ! 脆弱だ! この…」
「この失敗作」
「…っ、この…、失敗作―――!!」
研究所で言われた言葉をそのまま吐き捨てる。
「失敗作じゃない…。天空が生み出してくれた“オレ達”は…失敗作なんかじゃない」
「!」
こんな状況に関わらず、ヨルはフッと笑みを浮かべた。
同時に、ヨルの全身からチャクラが漏れ出し、それは赤と黒の混じった炎のとなって揺らめき、刀身に集中的にまとわりついた。
「な…」
紅羽乱舞が激突する寸前、ヨルは刀を振り下ろす。
ドン!!
刀にまとわりついた炎は、大口を開けるように広がって羽根をすべて飲み込んだ。
「うそ…! なんだよ…、なんだよコレ…!?」
「……………」
ヨルはボクに顔を向け、ゆっくりとボクに近づいてくる。
ボクは思わずたじろぎ、ヨルの刀を凝視した。
気のせいだろうか、刀身にまとうチャクラがニヤリと笑った気がした。
「じょ…、冗談じゃん…。ボクが妹を殺すわけないでしょ…。昔はいじめて悪かったよ。ほら、あの頃ってホント子供だったし…」
ボクは両手を広げ、「遊びが過ぎたっていうか…」と言い訳がましいことをベラベラ喋りながらヘラヘラと笑った。
「オレは言ったはずだ。あいつらを巻き込むな、ってな」
ギロリとした鋭い目付きは怒りをあらわにしていた。
まったくの計算違いだ。
鬼化すれば最初は暴走するだけかと思ってたのに。
怪力どころか、武器までコントロールできてる。
ボクがどれだけ苦労して鬼化のコントロールを取得したと思ってるんだ。
ふざけるな。
ふと研究所のことを思い出し、ボクの額に青筋が浮かんだ。
「いい加減にしろよ、クソコウモリ女ぁ!! 目を覚ませ!! あいつらはボク達とは違う!! 違うんだよ!?」
「あなたは普通の人間とは違う。いいえ、まったくの別物」
「また殺してしまったの? 没の実験体でも、無限にあるわけじゃないのよ」
「お友達だったの? だから? 実験を成功させないあなたが悪いわ」
脳裏をめぐる言葉に思わず頭を抱えた。
「いつかヨルだって、あいつらを殺しちゃうんだ!! やっぱそうだ!! 絶対そう!! 最後の一滴まで啜り切って!!」
「……………殺さない…。オレは血が欲しくてあいつらを生かしたわけじゃない…! 生きてほしいから…、生きてほしかったから飲ませたんだ!」
「全部全部、綺麗事!!」
ボクは鉤爪を構えて突っ込んだ。
ボクの右手の鉤爪とヨルの刀がぶつかる。
バキン!
「ボクの…鉤爪が…!?」
すれ違ったあと、手元を見ると、ボクの右手の鉤爪が砕けていた。
振り返ると、宙を掻いた鉤爪がボクとヨルの中心の地面に突き刺さる。
ヨルの刀は刃こぼれがひとつもない。
「なにを…した!?」
ヨルは振り返り、刀を見せつける。
「…喰ったんだ、コイツが」
「はぁ!?」
「…便利だ…。使い方は…、オレの中の鬼が教えてくれる…」
それはボクも知ってる。
ヨルのあの武器は、ただ振り回して斬ったりするものじゃないのか。
そう考えたとき、ヨルが斬りかかってきた。
「!」
はっとしたボクは左手の夢魔でそれを受け止めようとする。
刃と刃がぶつかりあった瞬間、すぐにボクの鉤爪だけ刃先が欠けた。
「バカな!?」
ボクが今使ってる鉤爪は世界一硬い鉱石を使って作らせた武器なのに。
打ち合うたびにボロボロと鉤爪の刃が欠けていき、虫食いのような状態になったとき、ついにヨルの刀の刃先がボクの右頬を切った。
「…!?」
その違和感にはすぐに気付いた。
なぜ、再生しないのか。
それほど深い傷ではないはずだ。
後ろへと飛び退きながら攻撃を防御していくうちに、ボクは崖へと追い込まれた。
下は深く真っ暗な谷底だ。
ヨルはすぐには斬りかかってこなかった。
「ヨル…、その刀…なに…?」
背後の谷底と目の前の気にしながら尋ねる。
「……言ったろ、コイツは…、“夢魘(むえん)”は斬るというより、喰っちまう。なんでも…。朱鬼の細胞も…」
「朱鬼の細胞も!?」
だから、すぐに再生しなかったのか。
人間にとっても朱族にとっても、夢魘と言ったか、その刀は天敵じゃないか。
目の前のヨルはもう顔の右半分が漆黒に染まっていた。
「う…っ!」
突然、ヨルがガクッと傾いた。
今しかない。
ヨルを殺すには、この瞬間しかない。
「!!」
ヨルの背後と谷底から鳥の群れが飛び出した。
背後の鳥の群れはヨルの背中に突き刺さり、その背中の羽根を封じ、谷底から飛び出した鳥の群れはその体に纏わりついてヨルを崖から引っ張り落とした。
「ユウ…!」
落下する鳥の塊から声が聞こえると同時に、夢魘が鳥の塊から飛び出した。
それはボク目掛け鎖を伸ばしながら向かってくる。
「おっと」
最後の悪あがきか。
ボクは右横に軽く飛んで避ける。
「これでさよならだね、ヨル!」
すぐにヨルがどうなったかを見下ろした時だ。
ズブッ!
「…!?」
胸に激痛が走った。
「が…っ」
胸元を見ると、避けたはずの夢魘の刀身がボクの左胸を貫いていた。
すぐにそれは背後から引き抜かれ、右足の狂翼を切り裂かれる。
「お…まえ…!」
肩越しにそいつの顔を見た。
「今日は一日儀式してねーんだ…。送ってやるよ、ジャシン様の御許になァ」
「この…ガキ…ッ!!」
足下の感覚がなくなり、ボクはそのまま真っ逆さまに落下していく。
もしかして、ヨルは飛段が近づいていたことに気付いていたのだろうか。
「…また、ボクの負けか」
飛段が夢魘をつかんでいるため、ビン、とそれに繋がってるヨルの落下が止まる。
ボクがやられて鳥達がヨルから離れた。
ボクは逆さまの状態でヨルとすれ違いの際に目が合い、薄笑みを浮かべる。
「遊びはここまでだね、ヨル…」
闇に堕ちていく。
でも、また這い上がってやるさ。
翼をもがれようとも。
「やっぱ死なない…。ボクはまだ…、死なないよ!」
.