35:林檎と涙
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドォン!!!
地面は割れ、木々は次々となぎ倒され、爆風でユウの羽と土埃が辺りに舞う。
オレは今、ヨルとユウの死闘を目の当たりにしていた。
傍から見れば、どう見ても人間の戦いじゃない。
尾獣同士が戦っているようだ。
数分前、ヨルは地面を蹴り、背中のデカい羽をはばたかせて突っ込んだ。
そして木に激突し、激突された木は大砲でも食らったかのように簡単に折れた。
それでも、ヨルは無傷だった。
何事もなかったかのようにこちらに戻ってきて、ユウに指をさされながら笑われる。
「あはは! なにそれ! ボク避けてないよ!?」
「不慣れなんだ。笑うな」
別にムキになることもなくそう言い返し、今度こそユウに向かって突っ込んだ。
ユウが真上へ飛び、ヨルは地面にかかとをつけて擦れながらもブレーキをかけ、真上へ飛んで追いかけた。
そこからは人間からだいぶ離れた熾烈な戦いだ。
印も結んでないのに、ヨルが刀を一振りしただけで無数の鬼炎が一斉にユウに向かって飛びかかり、ユウが両足の羽をはばたかせると突風が吹き、鬼炎は風に煽られた。
森の上に青い炎が燃え上がる。
熱いはずなのに、2人はそんな炎の中でぶつかり合った。
ユウはヨルの背後に回り込み、その背中に強烈な蹴りを叩きこんだ。
真下に吹っ飛んだヨルは炎を突きぬけ、地面に叩きつけられる。
どこに落ちたかオレからは見えない。
「ヨル!」と落ちた地点に向かおうとした時、2mはあるだろう大岩がいきなりヨルが落ちた地点からユウ目掛けて飛び出した。
まさか、ヨルが投げたのか。
炎から無傷で飛びだしたユウはそれに鉤爪を立てて受け止め、飛び出した地点に向かって投げ返す。
ズン、とまた小さく地面が揺れる。
「派手に戦いやがって…!」
町からも里からも遠く離れた森の中だからって、そろそろ敵に勘付かれるぞ。
オレは指と足先が動くか確認し、ゆっくりと立ち上がった。
めった刺しにされたが、切断されなくてよかった。
真っ裸のため、足下のヨルの外套を拾って身に纏う。
サイズは小さいが、一応下半身は隠れる。
「待てよ、ヨル!」
2人がどんどん離れてしまう。
追いかけないと、ヨルが2度と戻ってこないような気がして、オレは痛む足で駆けだす。
.