34:闇は鬼と化す
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*飛段
ドン!!!
オレの顔面目掛けて鉤爪が振り下ろされた瞬間、ユウが横に勢いよく吹っ飛び、何度も強烈な衝撃音が聞こえた。
痛みを感じながらも身を起こすと、土煙が漂い、ユウが吹っ飛んだ方向には木々が何本も倒れていた。
まるで小さな竜巻が通ったようだ。
「…!」
「ぐ…あ゛…、ウウゥ…ッ」
オレの近くに、なにかが唸り声を漏らしながらうずくまっていた。
「ヨル…? !?」
土煙が晴れ、露わになったその光景にオレは息を呑む。
確かにヨルだ。
だが、耳は尖り、夢魔とは違う血肉のついた黒いコウモリの翼が生え、切断口から元の右腕が生えた。
「ヨル…なのか…?」
すると、遠くの方から「ククク…」と笑い声がした。
「やっぱした…! ヨルが…鬼化した…!!」
頭から血を流したユウが羽をはばたかせ、オレ達のところに戻ってきた。
けっこう飛ばされたようだ。
「鬼化すれば、再生能力は倍に跳ね上がり、切断した手足まで生えてくる! そして肉を食いたくて仕方なくなる! まさにバケモノだよ! 正真正銘の!!」
ヨルの金と黒の目がオレをとらえ、舌なめずりをした。
エサを見る目だ。
「ほら、美味しそうなエサが転がってるよ。血を啜れ、骨を砕け、肉を食め。そして、仲間殺しになればいい」
ヨルは右手を支えに立ち上がり、ゆっくりとオレに近づいてくる。
オレは両足を傷つけられ、上半身しか起こすことしかできない。
這って逃げようとしたが、ヨルはすぐそこまで来ていた。
「ヨル…!」
呼びかけても、ヨルはなにも答えない。ただ不気味な笑みを浮かべていた。
ユウが言ってた、理性を失った状態だろう。
「さあ、ヨル。ごちそうだよ」
ユウが促すと、ヨルは右手を伸ばし、オレの首をつかんだ。
それほど力が込められてるわけじゃないのに、すでに首の骨が折れそうだ。
「ヨル…っ、ヨル!!」
ゴッ!
解放感と同時にオレはその音にはっと顔を上げた。
ヨルは自分の右頬を殴っていた。
「…はあ?」
そう漏らしたのはユウだった。
オレはヨルの顔を見る。
金と黒の目は変わらないが、その目付きはいつものヨルだ。
「ヨル…」
「う…っ」
ヨルは自分の中の鬼と戦っているのか、ガクリと右膝をつき、自分の額を右手で覆い、視線を彷徨わせた。
「なにそれ…、どうして理性ブッ飛んでないわけ?」
「…ってたまるか…」
ヨルは歯を食いしばり、オレ越しにユウを睨みつけ、もう一度それを口にする。
「食ってたまるか…。オレはてめーとは違う…!」
その時、ヨルの左肩にあるコウモリの刺青が広がり、ヨルの二の腕を漆黒に染めた。
「仲間を食って…たまるかあああああ!!!」
咆哮とともにビリビリとヨルの周りの空気が殺気立った。
「こりゃあ…!」
オレはその光景を凝視する。
ヨルの左腕の断面から生えてきたのは、元の左腕じゃなく、ツバのない黒刀だった。
柄の部分が生えると、ヨルはそれを右手でつかんで引っ張って構えた。
すると、柄の後ろについていた漆黒の鎖が、柄と二の腕の間で、ジャラリ、と音を立てて伸びる。
鎖付きの黒刀。
ヨルの新しい武器か。
恐ろしく艶のあるその刀から、ただの刀じゃないことはオレでもわかる。
ヨルは刀の刃先をユウに向けて宣言する。
「調子に乗り過ぎたな、ユウ…。てめーだけは絶対、闇で醒ます」
.To be continued
ドン!!!
オレの顔面目掛けて鉤爪が振り下ろされた瞬間、ユウが横に勢いよく吹っ飛び、何度も強烈な衝撃音が聞こえた。
痛みを感じながらも身を起こすと、土煙が漂い、ユウが吹っ飛んだ方向には木々が何本も倒れていた。
まるで小さな竜巻が通ったようだ。
「…!」
「ぐ…あ゛…、ウウゥ…ッ」
オレの近くに、なにかが唸り声を漏らしながらうずくまっていた。
「ヨル…? !?」
土煙が晴れ、露わになったその光景にオレは息を呑む。
確かにヨルだ。
だが、耳は尖り、夢魔とは違う血肉のついた黒いコウモリの翼が生え、切断口から元の右腕が生えた。
「ヨル…なのか…?」
すると、遠くの方から「ククク…」と笑い声がした。
「やっぱした…! ヨルが…鬼化した…!!」
頭から血を流したユウが羽をはばたかせ、オレ達のところに戻ってきた。
けっこう飛ばされたようだ。
「鬼化すれば、再生能力は倍に跳ね上がり、切断した手足まで生えてくる! そして肉を食いたくて仕方なくなる! まさにバケモノだよ! 正真正銘の!!」
ヨルの金と黒の目がオレをとらえ、舌なめずりをした。
エサを見る目だ。
「ほら、美味しそうなエサが転がってるよ。血を啜れ、骨を砕け、肉を食め。そして、仲間殺しになればいい」
ヨルは右手を支えに立ち上がり、ゆっくりとオレに近づいてくる。
オレは両足を傷つけられ、上半身しか起こすことしかできない。
這って逃げようとしたが、ヨルはすぐそこまで来ていた。
「ヨル…!」
呼びかけても、ヨルはなにも答えない。ただ不気味な笑みを浮かべていた。
ユウが言ってた、理性を失った状態だろう。
「さあ、ヨル。ごちそうだよ」
ユウが促すと、ヨルは右手を伸ばし、オレの首をつかんだ。
それほど力が込められてるわけじゃないのに、すでに首の骨が折れそうだ。
「ヨル…っ、ヨル!!」
ゴッ!
解放感と同時にオレはその音にはっと顔を上げた。
ヨルは自分の右頬を殴っていた。
「…はあ?」
そう漏らしたのはユウだった。
オレはヨルの顔を見る。
金と黒の目は変わらないが、その目付きはいつものヨルだ。
「ヨル…」
「う…っ」
ヨルは自分の中の鬼と戦っているのか、ガクリと右膝をつき、自分の額を右手で覆い、視線を彷徨わせた。
「なにそれ…、どうして理性ブッ飛んでないわけ?」
「…ってたまるか…」
ヨルは歯を食いしばり、オレ越しにユウを睨みつけ、もう一度それを口にする。
「食ってたまるか…。オレはてめーとは違う…!」
その時、ヨルの左肩にあるコウモリの刺青が広がり、ヨルの二の腕を漆黒に染めた。
「仲間を食って…たまるかあああああ!!!」
咆哮とともにビリビリとヨルの周りの空気が殺気立った。
「こりゃあ…!」
オレはその光景を凝視する。
ヨルの左腕の断面から生えてきたのは、元の左腕じゃなく、ツバのない黒刀だった。
柄の部分が生えると、ヨルはそれを右手でつかんで引っ張って構えた。
すると、柄の後ろについていた漆黒の鎖が、柄と二の腕の間で、ジャラリ、と音を立てて伸びる。
鎖付きの黒刀。
ヨルの新しい武器か。
恐ろしく艶のあるその刀から、ただの刀じゃないことはオレでもわかる。
ヨルは刀の刃先をユウに向けて宣言する。
「調子に乗り過ぎたな、ユウ…。てめーだけは絶対、闇で醒ます」
.To be continued