32:守る玉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*飛段
首を刎ねられたが、角都にくっつけてもらったあと、オレの首を刎ねたヒゲヤローは殺してやった。
続けて他の奴らもジャシン様のもとへ送ってやろうかと思ったのに、カラスの大群に邪魔されてしまう。
ただの目くらましでもなさそうだ。
大群に混じって敵が攻撃を仕掛けてきた。
「痛って!」
オレはカラスに頭をつつかれてしまう。
「この…」
三連鎌を振って追い払おうとしたとき、カラスとは違ういくつもの別の黒い物体がオレの頭上を飛んでいたカラスの首に噛みついていく。
「コウモリ…?」
はっと振り返ると、ヨルが息せき切らしてオレの左隣に走り寄ってきた。
なぜか火傷を負ってだ。
「無傷…ってわけじゃなさそうだな」
「ヨル、てめー、すぐ戻るって…」
「悪い、罠に引っ掛かってた」
ヨルが右手を横に払うと、次々と森からコウモリの群れが飛び出してきた。
その隙にオレと角都とヨルはカラスの群れから飛び退いた。
「チィ!」
いいところだったのに、増援に邪魔されちまった。
「こいつら、木ノ葉の忍か。やっぱり、あの坊主を逃したのがいけなかったか」
奴らが身につけてる額当てで確認したヨルが言う。
なにを思ったのか、腑に落ちない顔をしていた。
カラスが煙とともに消え、ヨルもコウモリ共を引かせて互いに相手の様子を窺う。
ヒゲヤローとオレを影で縛ってたガキは、仲間に屋根へと連れていかれた。
ガキはヒゲヤローに走り寄り、胸に耳をつけて脈を確認する。
しぶといことに、まだ脈があったのか、顔を上げて仲間の別のガキ共に、病院へ運べ、医療忍術で回復させろ、と声を張り上げた。
無駄な足掻きにしか聞こえない。
このオレが確かに心臓を杭で潰してやったんだからな。
そいつを持って行かれたら、角都の大好きな金が手に入らない。
角都の動きは早かった。
いつの間にか屋根に飛び移ってるし。
「賞金首は渡さん」
まだ暴れてよさそうだ。
他の連中は、この危機をどう乗り切るか、突然現れたヨルはどんな能力を持っているのか、困惑していることだろう。
「どんだけジタバタしようと、おまえらは神に捧げられる贄だ」
「どいつもこいつも、手強そうなのばっかだな…」
そう呟くヨルは背中から夢魔を生やそうとした。
その時だ。
「!」
角都も気付いたのか、ピクリとわずかに顔を上げた。
「どうした?」
異変に気付いたヨルはオレに顔を向けて首を傾げた。
オレは視線を上げ、この場にいない、脳に直接話しかけてきた奴に言う。
「もう少し待ってくんねーかなァ…。これからがいいとこなんだ、ホント」
それを聞いたヨルは「ああ、あいつか」と呟く。
“三尾を封印する…。今すぐ跳べ。最優先だ”
しつこく言うクソリーダーにオレは苛立ち混じりに言い返す。
「だから、言ってんだろ…。もう少しだけだってよ!」
「飛段、やめろ」
角都は金の詰まったアタッシュケースを持ってオレの右隣に着地する。
「チィ…」
オレは舌を打ち、三連鎌を肩に担いだ。
「またすぐに戻る…。覚悟はしておけ。行くぞ、ヨル、飛段」
足下に落ちていたオレの額当てを拾ってくれた角都は、オレ達に顔を向けてそう言った。
ヨルは不安げな顔で目の前の奴らに指さして言い返す。
「本当にほっといていいんだな?」
「リーダーがうるさいからな」
「あのクソリーダー、今度呪ってやろーか、ったくよー!」
オレは宙を睨みつけて吐き捨てる。
オレ達がさっさと引き上げようとしたとき、ヒゲヤローが吐血したのが聞こえた。
「いの! チョウジ! アスマを連れて行くぞ!!」
ちょうど苛立ってたところだ。
退く前に挑発してやる。
「だからァ! てめーら、オレらが戻って来るまでじっとしてろ! そいつはもう死ぬからよー」
ガキは顔を上げてオレ達を睨みつける。
「おい、行くならさっさと行くぞ」
そう言ってヨルは自分の親指の腹を噛み切り、左肩の刺青に擦りつけた。
こいつはまだ瞬身の術が使えない。
だから、闇染で姿を消して退くしかできない。
まだオレに仕掛けた探知蝙蝠は発動したままだし、オレ達が消えても追えるだろう。
「じゃあな、クソヤロー共!」
ドロロン、とオレと角都は瞬身の術を、ヨルは闇染を発動させてその場から退いた。
瞬身の術で移動してヨルと合流し、それからしばらく進んだところで崩れた石像を見つけ、そこで精神を飛ばすことにした。
雨が降ってきて飛段が「おいおい、雨宿りができるところでやらねーか」とがなったが、「時間がない」と一蹴すると、飛段は口を尖らせたまま、石像の頭部と思われる部分に飛び乗って座り、印を結んだ。
「見張りは…」
「ああ、任せろ」
言いきる前に、石像に背をもたせかけて座るヨルは笑みを見せてそう言った。
昔は「面倒だ」と渋っていたくせに、変わるものだ。
飛段も見習えばいいものを。
いや、出会った頃よりはマシか。
オレも石像の頭部に飛び乗って座り、印を結んだ。
長く風雨に晒されていた石像には苔が貼りついていたが、気にするほどではない。
目を閉じて精神を飛ばすと、すでに他のメンバーはそろっていた。
当然、火之出アサもだ。
昔、大蛇丸がいた、封印像の小指の位置に立っている。
「三尾が終わり次第、二尾も封印する。これから6日はかかる。覚悟しておけ」
リーダーの言葉に飛段はうんざりした声を上げる。
「6日かよ…。長げーな! こっちは雨だぜ。ヨルだって待たせてるっつーのに…」
「飛段…、おまえが言うな」
普段はヨルとオレをくだらない儀式で待たせているだろう。
「木ノ葉の奴ら、もう少しで皆殺しに出来たんだぜ。無神論者どもにジャシン教の存在を知らしめてやるところだったのによォ!」
飛段の言葉にリーダーは静かに言い返す。
「木ノ葉は無神論者ではない。先代を神とし、“火の意志”を思想に行動する。まあ、そんなものは戦うための大義名分だとも言えるがな…」
それを聞いて、木ノ葉の初代火影のことを思い出す。
苦い思い出だ。
「てめェ…、そりゃオレをバカにして言ってんのか! あァ!?」
リーダーの言い方に腹を立てた飛段は怒鳴り声を上げた。
「いや…、おまえの戦う理由を別段馬鹿にしたつもりはない。オレも同じ穴のムジナだからな。戦争の理由なんてのはなんでもいい。宗教、思想、資源、土地、怨恨、恋愛、気まぐれ…。どんなくだらない理由でも、戦争するだけの理由になってしまう。戦争は絶対になくならない。理由は後付けでいい…。本能が戦いを求める」
「誰もてめーの長ったらしい話は聞いてねーんだよ! オレにはオレのやり方ってもんがある。オレ自身の目的もある。全てを組織に委ねるつもりはねーからな!」
暁のまとめ役の目の前で言うセリフか。
「暁という組織に属している以上、その目的にも協力してもらう。暁の目的が達成されれば、おまえの願いもすぐに成就するだろう」
「フン…。あれこれ格好つけたところで、暁の目的はただの金集めになってるじゃねーか! 角都と同じだ…。戦う理由で一番嫌いなタイプだぜ!!」
その嫌いなタイプに、よく逃げずに2年も付き合っていられたな。
「そうだ…。確かに当面の目的は金だ。…が、本来、暁の目的は別の所にある。その目的のために莫大な金がいるんだ」
「オレはトビの次に新入りだからな。おまえの口から詳しいことも聞いたことねー! オレのいねーとこでコソコソと…」
苛立ち混じりに言う飛段に、確かにリーダーは小さく笑った。
「…すねているのか? フ…。なら、そろそろ教えてやろう。暁の最終目的は段階を踏むことで達成できる。それは全部で3段階…。まず第1が金だ」
「チィ…」
最も嫌いな理由に飛段は憎々しげに睨みつけ、舌を打った。
リーダーの説明は続く。
「そして、第2段階がその金を元手に忍世界初の戦争請け負い組織を作ることだ」
「…オイオイ、それじゃ、他の忍里とやってることと同じじゃねーか。依頼をこなして報酬を得るってことだろーが。てめーは召し抱えてくれる国もねェ、小さな里の長にでもなりてーのか? くだらねェ…」
飛段にしてはまともな返しだ。
リーダーは鼻で笑う。
「フッ…。まるで違う…。国お抱えの里とはな。順を追って説明してやる。強力な忍里を持つ国にとって“忍ビジネス”は、その国の収益において、大きな役割を担っている。忍里は、国内外の戦いに参入することで莫大な金を稼ぎ、国の経済を支えていると言っていい。つまり、国が安定した利益を得るには、それなりの戦争が必要になる。しかし、今の時代、小さな戦いこそ数あれ、かつてのような大戦はなくなった。国は里を縮小し、多くの忍が行き場を失った」
その大戦に用意されていた朱族も、戦いにも表にも出ることなく世間から隠されていた。
アサが暁に教えるまでは。
「忍は戦うために存在する。国のために命懸けで働いた見返りがこの有り様だ。“忍び五大国”はまだいい…。国も里も大きく、信頼もある。他国からの依頼も多く安定している。…が、小さな国はそうもいかない。忍里の保有には戦時と同じか、それに近いレベルで平時にも莫大なコストがかかる。だからと言って、里を縮小しすぎれば、突然の開戦に対応できない。だから、我々暁が作るのだ! 国というものに属せず、必要な時に必要なだけの忍を用意し、必要な力を持って、あらゆる小国や小さな里から金で戦争を請け負う組織! 最初ははした金であらゆる戦争を一手に引き受け、戦争市場を牛耳り、さらには尾獣を使い、市場の大きさに合わせて戦争を引き起こし、やがて全ての戦争をコントロールし、独占支配する!」
「……………」
リーダーの目的が伝わったのか、理解不能なのか、とにかく飛段が静かになった。
「…それに伴い、大国の忍里というシステムも崩壊…。暁を利用せざるを得なくなる…。そして、その先にある本当の目的に我々はたどりつく…。目的の第3段階…、世界を征服する…」
すると、どこからか拍手が聞こえた。
アサだ。
「いつ聞いても素晴らしい計画じゃのぅ、リーダー殿。あやつにも聞かせてやりたいくらいじゃ。あやつ…、ヒルも世界をものにしたがっていた1人じゃった…」
視線がオレに向けられたのがわかった。
その笑みはなにを含んでいるのか。
仲間の死を憐れむものでないことは確かだ。
.
首を刎ねられたが、角都にくっつけてもらったあと、オレの首を刎ねたヒゲヤローは殺してやった。
続けて他の奴らもジャシン様のもとへ送ってやろうかと思ったのに、カラスの大群に邪魔されてしまう。
ただの目くらましでもなさそうだ。
大群に混じって敵が攻撃を仕掛けてきた。
「痛って!」
オレはカラスに頭をつつかれてしまう。
「この…」
三連鎌を振って追い払おうとしたとき、カラスとは違ういくつもの別の黒い物体がオレの頭上を飛んでいたカラスの首に噛みついていく。
「コウモリ…?」
はっと振り返ると、ヨルが息せき切らしてオレの左隣に走り寄ってきた。
なぜか火傷を負ってだ。
「無傷…ってわけじゃなさそうだな」
「ヨル、てめー、すぐ戻るって…」
「悪い、罠に引っ掛かってた」
ヨルが右手を横に払うと、次々と森からコウモリの群れが飛び出してきた。
その隙にオレと角都とヨルはカラスの群れから飛び退いた。
「チィ!」
いいところだったのに、増援に邪魔されちまった。
「こいつら、木ノ葉の忍か。やっぱり、あの坊主を逃したのがいけなかったか」
奴らが身につけてる額当てで確認したヨルが言う。
なにを思ったのか、腑に落ちない顔をしていた。
カラスが煙とともに消え、ヨルもコウモリ共を引かせて互いに相手の様子を窺う。
ヒゲヤローとオレを影で縛ってたガキは、仲間に屋根へと連れていかれた。
ガキはヒゲヤローに走り寄り、胸に耳をつけて脈を確認する。
しぶといことに、まだ脈があったのか、顔を上げて仲間の別のガキ共に、病院へ運べ、医療忍術で回復させろ、と声を張り上げた。
無駄な足掻きにしか聞こえない。
このオレが確かに心臓を杭で潰してやったんだからな。
そいつを持って行かれたら、角都の大好きな金が手に入らない。
角都の動きは早かった。
いつの間にか屋根に飛び移ってるし。
「賞金首は渡さん」
まだ暴れてよさそうだ。
他の連中は、この危機をどう乗り切るか、突然現れたヨルはどんな能力を持っているのか、困惑していることだろう。
「どんだけジタバタしようと、おまえらは神に捧げられる贄だ」
「どいつもこいつも、手強そうなのばっかだな…」
そう呟くヨルは背中から夢魔を生やそうとした。
その時だ。
「!」
角都も気付いたのか、ピクリとわずかに顔を上げた。
「どうした?」
異変に気付いたヨルはオレに顔を向けて首を傾げた。
オレは視線を上げ、この場にいない、脳に直接話しかけてきた奴に言う。
「もう少し待ってくんねーかなァ…。これからがいいとこなんだ、ホント」
それを聞いたヨルは「ああ、あいつか」と呟く。
“三尾を封印する…。今すぐ跳べ。最優先だ”
しつこく言うクソリーダーにオレは苛立ち混じりに言い返す。
「だから、言ってんだろ…。もう少しだけだってよ!」
「飛段、やめろ」
角都は金の詰まったアタッシュケースを持ってオレの右隣に着地する。
「チィ…」
オレは舌を打ち、三連鎌を肩に担いだ。
「またすぐに戻る…。覚悟はしておけ。行くぞ、ヨル、飛段」
足下に落ちていたオレの額当てを拾ってくれた角都は、オレ達に顔を向けてそう言った。
ヨルは不安げな顔で目の前の奴らに指さして言い返す。
「本当にほっといていいんだな?」
「リーダーがうるさいからな」
「あのクソリーダー、今度呪ってやろーか、ったくよー!」
オレは宙を睨みつけて吐き捨てる。
オレ達がさっさと引き上げようとしたとき、ヒゲヤローが吐血したのが聞こえた。
「いの! チョウジ! アスマを連れて行くぞ!!」
ちょうど苛立ってたところだ。
退く前に挑発してやる。
「だからァ! てめーら、オレらが戻って来るまでじっとしてろ! そいつはもう死ぬからよー」
ガキは顔を上げてオレ達を睨みつける。
「おい、行くならさっさと行くぞ」
そう言ってヨルは自分の親指の腹を噛み切り、左肩の刺青に擦りつけた。
こいつはまだ瞬身の術が使えない。
だから、闇染で姿を消して退くしかできない。
まだオレに仕掛けた探知蝙蝠は発動したままだし、オレ達が消えても追えるだろう。
「じゃあな、クソヤロー共!」
ドロロン、とオレと角都は瞬身の術を、ヨルは闇染を発動させてその場から退いた。
瞬身の術で移動してヨルと合流し、それからしばらく進んだところで崩れた石像を見つけ、そこで精神を飛ばすことにした。
雨が降ってきて飛段が「おいおい、雨宿りができるところでやらねーか」とがなったが、「時間がない」と一蹴すると、飛段は口を尖らせたまま、石像の頭部と思われる部分に飛び乗って座り、印を結んだ。
「見張りは…」
「ああ、任せろ」
言いきる前に、石像に背をもたせかけて座るヨルは笑みを見せてそう言った。
昔は「面倒だ」と渋っていたくせに、変わるものだ。
飛段も見習えばいいものを。
いや、出会った頃よりはマシか。
オレも石像の頭部に飛び乗って座り、印を結んだ。
長く風雨に晒されていた石像には苔が貼りついていたが、気にするほどではない。
目を閉じて精神を飛ばすと、すでに他のメンバーはそろっていた。
当然、火之出アサもだ。
昔、大蛇丸がいた、封印像の小指の位置に立っている。
「三尾が終わり次第、二尾も封印する。これから6日はかかる。覚悟しておけ」
リーダーの言葉に飛段はうんざりした声を上げる。
「6日かよ…。長げーな! こっちは雨だぜ。ヨルだって待たせてるっつーのに…」
「飛段…、おまえが言うな」
普段はヨルとオレをくだらない儀式で待たせているだろう。
「木ノ葉の奴ら、もう少しで皆殺しに出来たんだぜ。無神論者どもにジャシン教の存在を知らしめてやるところだったのによォ!」
飛段の言葉にリーダーは静かに言い返す。
「木ノ葉は無神論者ではない。先代を神とし、“火の意志”を思想に行動する。まあ、そんなものは戦うための大義名分だとも言えるがな…」
それを聞いて、木ノ葉の初代火影のことを思い出す。
苦い思い出だ。
「てめェ…、そりゃオレをバカにして言ってんのか! あァ!?」
リーダーの言い方に腹を立てた飛段は怒鳴り声を上げた。
「いや…、おまえの戦う理由を別段馬鹿にしたつもりはない。オレも同じ穴のムジナだからな。戦争の理由なんてのはなんでもいい。宗教、思想、資源、土地、怨恨、恋愛、気まぐれ…。どんなくだらない理由でも、戦争するだけの理由になってしまう。戦争は絶対になくならない。理由は後付けでいい…。本能が戦いを求める」
「誰もてめーの長ったらしい話は聞いてねーんだよ! オレにはオレのやり方ってもんがある。オレ自身の目的もある。全てを組織に委ねるつもりはねーからな!」
暁のまとめ役の目の前で言うセリフか。
「暁という組織に属している以上、その目的にも協力してもらう。暁の目的が達成されれば、おまえの願いもすぐに成就するだろう」
「フン…。あれこれ格好つけたところで、暁の目的はただの金集めになってるじゃねーか! 角都と同じだ…。戦う理由で一番嫌いなタイプだぜ!!」
その嫌いなタイプに、よく逃げずに2年も付き合っていられたな。
「そうだ…。確かに当面の目的は金だ。…が、本来、暁の目的は別の所にある。その目的のために莫大な金がいるんだ」
「オレはトビの次に新入りだからな。おまえの口から詳しいことも聞いたことねー! オレのいねーとこでコソコソと…」
苛立ち混じりに言う飛段に、確かにリーダーは小さく笑った。
「…すねているのか? フ…。なら、そろそろ教えてやろう。暁の最終目的は段階を踏むことで達成できる。それは全部で3段階…。まず第1が金だ」
「チィ…」
最も嫌いな理由に飛段は憎々しげに睨みつけ、舌を打った。
リーダーの説明は続く。
「そして、第2段階がその金を元手に忍世界初の戦争請け負い組織を作ることだ」
「…オイオイ、それじゃ、他の忍里とやってることと同じじゃねーか。依頼をこなして報酬を得るってことだろーが。てめーは召し抱えてくれる国もねェ、小さな里の長にでもなりてーのか? くだらねェ…」
飛段にしてはまともな返しだ。
リーダーは鼻で笑う。
「フッ…。まるで違う…。国お抱えの里とはな。順を追って説明してやる。強力な忍里を持つ国にとって“忍ビジネス”は、その国の収益において、大きな役割を担っている。忍里は、国内外の戦いに参入することで莫大な金を稼ぎ、国の経済を支えていると言っていい。つまり、国が安定した利益を得るには、それなりの戦争が必要になる。しかし、今の時代、小さな戦いこそ数あれ、かつてのような大戦はなくなった。国は里を縮小し、多くの忍が行き場を失った」
その大戦に用意されていた朱族も、戦いにも表にも出ることなく世間から隠されていた。
アサが暁に教えるまでは。
「忍は戦うために存在する。国のために命懸けで働いた見返りがこの有り様だ。“忍び五大国”はまだいい…。国も里も大きく、信頼もある。他国からの依頼も多く安定している。…が、小さな国はそうもいかない。忍里の保有には戦時と同じか、それに近いレベルで平時にも莫大なコストがかかる。だからと言って、里を縮小しすぎれば、突然の開戦に対応できない。だから、我々暁が作るのだ! 国というものに属せず、必要な時に必要なだけの忍を用意し、必要な力を持って、あらゆる小国や小さな里から金で戦争を請け負う組織! 最初ははした金であらゆる戦争を一手に引き受け、戦争市場を牛耳り、さらには尾獣を使い、市場の大きさに合わせて戦争を引き起こし、やがて全ての戦争をコントロールし、独占支配する!」
「……………」
リーダーの目的が伝わったのか、理解不能なのか、とにかく飛段が静かになった。
「…それに伴い、大国の忍里というシステムも崩壊…。暁を利用せざるを得なくなる…。そして、その先にある本当の目的に我々はたどりつく…。目的の第3段階…、世界を征服する…」
すると、どこからか拍手が聞こえた。
アサだ。
「いつ聞いても素晴らしい計画じゃのぅ、リーダー殿。あやつにも聞かせてやりたいくらいじゃ。あやつ…、ヒルも世界をものにしたがっていた1人じゃった…」
視線がオレに向けられたのがわかった。
その笑みはなにを含んでいるのか。
仲間の死を憐れむものでないことは確かだ。
.