32:守る玉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
パチン、と宿の静かな部屋に心地の良い音が響く。
今、ワシとアゲハは対局の最中だった。
ユウとクロハがここを飛び出してから数日、すっかり将棋にハマったワシはずっとアゲハに相手をしてもらっていた。
トドメの香車で王手をとる。
「…見事。参りました」
「ワシも今回は危うかった。次はわからん。アゲハ、おヌシもやるのぅ。今の戦法はなんじゃ?」
「……戦法、鬼殺し」
「…ほう、なんとも皮肉な戦法じゃのぅ」
アゲハは才能があるかもしれん。
見た限り、容易にできる戦法ではなかったからだ。
「意外。まさか香車にとられるとは…」
アゲハは負けた側としてワシの分まで駒を並べ直す。
ワシは薄笑いを浮かべて言った。
「香車も、ただ真っ直ぐ前に進むばかりではない。ここぞという時に使える駒じゃ」
「同意。アサのような駒だ。ここぞというところで突然現れ、真っ直ぐに攻めてかかる。意志もまっすぐで…、目の前の敵を躊躇なく斬り捨てる…」
「前にも後ろにも進める飛車にとられてしまうかもしれんし、斜めから角行にとられてしまうかもしれん。危うい駒でもある」
「皆無。棋士がアサなら」
最初にワシが歩兵を動かし、アゲハも同じく向かい側の歩兵を動かす。
「アゲハ、おヌシとクロハが将棋の駒なら、差し詰め金将と銀将じゃろう。なら…、ヨルは?」
次は桂馬を動かしてみる。
「……………」
アゲハは、金将を動かした。
「…金将か」
ワシは銀将を動かした。
「二役。金将と銀将、どちらの役割もヨルならこなす。隣の“玉”を守るために」
それに、飛車と角行の相性もいい。成らずとも、それ同等の力を発揮させる。
「しかし、守る“玉”とは…」
おそらく、2つの駒のことだろう。
なんとも、不利なこと極まりのない。
だが、ヨルの“玉”はそうでなければこちらが困る。
.