31:災厄の前兆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*ヨル
空はいつの間にか、青とオレンジのツートンカラーに染まっていた。
瓦礫と化した寺の中心で飛段は血で描いたジャシンマークの上で杭を胸に刺したまま祈りの真っ最中だ。
オレはそれを崩れた屋根の上に腰を下ろして見下ろし、片手の夢魔を背中に戻す。
辺りを見回せば坊主の死体がそこらじゅうに転がっていた。
「派手に暴れたな…」
条件を揃えたあとの飛段は今までのカリを返すように地陸を痛めつけた。
すると、見兼ねた坊主達が一斉に助太刀に入ろうとした。
オレは躊躇わずに切り捨て、角都と言えば邪魔をされてなるものかと圧害と偽暗を出して一掃にかかった。
儀式中の飛段は陣から動くことができないからな。
威力が大きいからすぐに寺は破壊された。
危うくオレまで瓦礫に埋まりかけた。
しばらくして、飛段の肌が元に戻った。
「どうやらここには人柱力はいなかったみてーだな。祈りが終わり次第、次へ行こうぜ」
飛段がそう言っているとき、角都は飛段の近くに転がっている地陸の死体に近づき、「いや…」と言って前屈みになって手を伸ばし、地陸の死体の後ろ首をつかみ、持ち上げた。
「こいつの死体を換金所に持って行く。まずは金だ」
若干嬉しそうに聞こえるのはたぶん気のせいじゃないはずだ。
飛段は少しだけ身を起こし、角都を睨む。
「あのさァ…、オレおまえに1回キレていいかな、ホント」
「!」
その時、オレはオレ達以外の音を聞いた。
まだ生きてる奴がいたのか。
「だったら、とっとと行こーぜ」
「火の国は広い…。じっくりいくぞ」
2人は気付いていない様子だ。
「やっぱ色々と出遅れてんのはてめーのせいだろコラ!」
飛段は声を上げ、「痛って!!」と杭を引き抜いた。
「悪い、ちょっとあっちで様子見に行っていいか?」
2人がこちらを見上げる。
「なんだ?」
「仕留め損ねたかもしれない」
いや、「かも」じゃないか。
「そこの坊さん」
「!?」
木々の間を走り抜けていた坊主に、オレは近くの木の枝から声をかけた。
坊主ははっとオレに振り返り、「暁…」と呟く。
「忍ってことは忍の里に報告するつもりだろ? 今、それされると、あとあとメンドーなんだけど。連れは「じっくりいくぞ」とか言ってるし」
オレは「だから…」と続け、背中から右手の夢魔を出現させ、刃先を向けて言葉を続ける。
「闇で醒めてくれねーか?」
坊主の顔が真っ青になり、弾かれるように逃走する。
早めに仕留めておくか。
狙いを定め、右手の夢魔を振りかぶって勢いよく投げつける。
坊主より速い動きで宙を掻き、坊主の背中に命中しようとした時だ。
「!?」
投げた夢魔が、ガッ、と音を立てていきなり生えた木に突き刺さった。
あの坊主がやったのか、そう思って突然の妨害に慌て、「待て!」と坊主を追いかける。
だが、木の枝に飛び移ると、
「な!?」
なにかに引っ掛かり、バランスを崩してしまった。
背中から落下するオレは宙で身をひねりうまく着地したが、坊主の足音はすでに追いつけないところまで移動している。
「クソ!」
そう吐き捨て、コブシを地面に叩きつけた。
このあと確認してわかったことだが、オレの足を邪魔したなにかは、蔓(つる)だった。
少し離れた大木の枝の上でオレ達はその様子を眺めていた。
坊主を諦めたのか、ヨルは落ち込みながら踵を返し、瓦礫と化した寺へと戻っていく。
2人に対する言い訳を考えているのかもしれない。
「これでいいか?」
「バッチリだよ、クロハ」
ユウは木の枝に座ったままヨルの背中を見つめながらほくそ笑んでいる。
オレ様に能力を使わせて、なにを企んでいるんだか。
「はん。坊主なんか助けて、浄土に行けるようにでもしてもらうつもりか?」
オレ様は穢土だの浄土だの信じてないが。
「あの坊主、どこに行くと思う?」
「そりゃ、木ノ葉の里だろ。寺が襲われたことを報告しに…」
「そう。きっと、そこの小隊がヨル達を捜索し、潰しにかかる。火の国から出さないために、徹底的に」
「……………」
それが目的なんだろう。
相手方に潰してもらう気か。
オレ様は呆れ、ずれたサングラスを指先で上げた。
「自分の手は汚さないってか」
「たまにはね。いつも汚れ役ばっかだったし」
「今回はオレ様が汚れ役かよ」
「あと2・3やってもらいたいことがあるんだよね、クロハには。それが終わったら大人しくアサのところに戻る」
たぶん、嘘だ。
それでも付き合ってやってるオレの優しさに感謝してほしい。
アサには「監視しろ」って言われてるのに。
「それに、見てみたいんだ」
「?」
「ボク達にはあり得ない、復讐劇ってのを。やっぱ見たい。すごく見たい」
やっぱりこいつは悪趣味だ。
だが、前と比べたら生き生きと輝いた目をしている。
それは喜ばしいことなのか、複雑なところだが。
これからどう動いていくのか、たまにはこいつの気紛れな翼に任せてみようか。
それにこれは、オレ様の復讐劇でもある。
.To be continued
空はいつの間にか、青とオレンジのツートンカラーに染まっていた。
瓦礫と化した寺の中心で飛段は血で描いたジャシンマークの上で杭を胸に刺したまま祈りの真っ最中だ。
オレはそれを崩れた屋根の上に腰を下ろして見下ろし、片手の夢魔を背中に戻す。
辺りを見回せば坊主の死体がそこらじゅうに転がっていた。
「派手に暴れたな…」
条件を揃えたあとの飛段は今までのカリを返すように地陸を痛めつけた。
すると、見兼ねた坊主達が一斉に助太刀に入ろうとした。
オレは躊躇わずに切り捨て、角都と言えば邪魔をされてなるものかと圧害と偽暗を出して一掃にかかった。
儀式中の飛段は陣から動くことができないからな。
威力が大きいからすぐに寺は破壊された。
危うくオレまで瓦礫に埋まりかけた。
しばらくして、飛段の肌が元に戻った。
「どうやらここには人柱力はいなかったみてーだな。祈りが終わり次第、次へ行こうぜ」
飛段がそう言っているとき、角都は飛段の近くに転がっている地陸の死体に近づき、「いや…」と言って前屈みになって手を伸ばし、地陸の死体の後ろ首をつかみ、持ち上げた。
「こいつの死体を換金所に持って行く。まずは金だ」
若干嬉しそうに聞こえるのはたぶん気のせいじゃないはずだ。
飛段は少しだけ身を起こし、角都を睨む。
「あのさァ…、オレおまえに1回キレていいかな、ホント」
「!」
その時、オレはオレ達以外の音を聞いた。
まだ生きてる奴がいたのか。
「だったら、とっとと行こーぜ」
「火の国は広い…。じっくりいくぞ」
2人は気付いていない様子だ。
「やっぱ色々と出遅れてんのはてめーのせいだろコラ!」
飛段は声を上げ、「痛って!!」と杭を引き抜いた。
「悪い、ちょっとあっちで様子見に行っていいか?」
2人がこちらを見上げる。
「なんだ?」
「仕留め損ねたかもしれない」
いや、「かも」じゃないか。
「そこの坊さん」
「!?」
木々の間を走り抜けていた坊主に、オレは近くの木の枝から声をかけた。
坊主ははっとオレに振り返り、「暁…」と呟く。
「忍ってことは忍の里に報告するつもりだろ? 今、それされると、あとあとメンドーなんだけど。連れは「じっくりいくぞ」とか言ってるし」
オレは「だから…」と続け、背中から右手の夢魔を出現させ、刃先を向けて言葉を続ける。
「闇で醒めてくれねーか?」
坊主の顔が真っ青になり、弾かれるように逃走する。
早めに仕留めておくか。
狙いを定め、右手の夢魔を振りかぶって勢いよく投げつける。
坊主より速い動きで宙を掻き、坊主の背中に命中しようとした時だ。
「!?」
投げた夢魔が、ガッ、と音を立てていきなり生えた木に突き刺さった。
あの坊主がやったのか、そう思って突然の妨害に慌て、「待て!」と坊主を追いかける。
だが、木の枝に飛び移ると、
「な!?」
なにかに引っ掛かり、バランスを崩してしまった。
背中から落下するオレは宙で身をひねりうまく着地したが、坊主の足音はすでに追いつけないところまで移動している。
「クソ!」
そう吐き捨て、コブシを地面に叩きつけた。
このあと確認してわかったことだが、オレの足を邪魔したなにかは、蔓(つる)だった。
少し離れた大木の枝の上でオレ達はその様子を眺めていた。
坊主を諦めたのか、ヨルは落ち込みながら踵を返し、瓦礫と化した寺へと戻っていく。
2人に対する言い訳を考えているのかもしれない。
「これでいいか?」
「バッチリだよ、クロハ」
ユウは木の枝に座ったままヨルの背中を見つめながらほくそ笑んでいる。
オレ様に能力を使わせて、なにを企んでいるんだか。
「はん。坊主なんか助けて、浄土に行けるようにでもしてもらうつもりか?」
オレ様は穢土だの浄土だの信じてないが。
「あの坊主、どこに行くと思う?」
「そりゃ、木ノ葉の里だろ。寺が襲われたことを報告しに…」
「そう。きっと、そこの小隊がヨル達を捜索し、潰しにかかる。火の国から出さないために、徹底的に」
「……………」
それが目的なんだろう。
相手方に潰してもらう気か。
オレ様は呆れ、ずれたサングラスを指先で上げた。
「自分の手は汚さないってか」
「たまにはね。いつも汚れ役ばっかだったし」
「今回はオレ様が汚れ役かよ」
「あと2・3やってもらいたいことがあるんだよね、クロハには。それが終わったら大人しくアサのところに戻る」
たぶん、嘘だ。
それでも付き合ってやってるオレの優しさに感謝してほしい。
アサには「監視しろ」って言われてるのに。
「それに、見てみたいんだ」
「?」
「ボク達にはあり得ない、復讐劇ってのを。やっぱ見たい。すごく見たい」
やっぱりこいつは悪趣味だ。
だが、前と比べたら生き生きと輝いた目をしている。
それは喜ばしいことなのか、複雑なところだが。
これからどう動いていくのか、たまにはこいつの気紛れな翼に任せてみようか。
それにこれは、オレ様の復讐劇でもある。
.To be continued