03:優しさはいらない
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町に着いた途端、飛段に「ヨルに金の遣い方を教えてやる」と角都は金をせがまれた。
「己が休憩したいだけだろう」と言い返したが、「口だけじゃ、ヨルはわからねえんだって」などとわかりきったようなことを言われた。
ヨルは自分が持ち出されているとも知らず、町の様子に見入っていた。
通行人を目で追ったり、高い建物を見上げたり、キョロキョロと物珍しげに辺りを見回していたりなど、わかりやすい反応をしていた。
どれもあの里には存在しなかったものばかりだから、当然だろう。
それに、今晩はこの町で祭りが行われるらしい。
だから余計に騒がしい。
「なぁなぁ、角都ゥー」
こちらに来るまで「金が嫌いだ」「金は冒涜だ」などと抜かしていた男の言葉とは思えなかった。
角都はため息をついたあと、「宿をとってくる。そこの茶屋でヨルと待っていろ」と言って少ない金を渡し、宿へと入り、部屋をとってきた。
数分後、角都が宿を出て右斜め向かい側の茶屋へ向かうと、先程までいなかった店先に軽い人だかりができていた。
女ばかりだ。
そのほとんどが、目を輝かせ、頬を赤らめながら店の中を覗いている。
「あの人達、綺麗ね」
「旅の方かしら…」
「早く席空かないかしら。もっと間近で見たいのに…」
格子窓から、女達がなにに見惚れているのか確認できた。
ヨルと飛段だ。
店の奥で呑気に団子を食べながら茶を飲んでいた。
自分達が注目されているとは知らずに。
「これ、団子って言うんだぜェ」「団子?」「なんだよ、団子も知らねえのか。ゲハハハッ」などと、飛段が団子を持って見せつけながら、向かいの席のヨルに説明しているのが見える。
角都は深いため息をついた。
(目立つな…)
角都と飛段はその見てくれのせいで人から避けられる組み合わせだが、ヨルと飛段がセットになると目の保養の対象になってしまう。
相方によっては飛段の見方が変わることを知る。
綺麗者同士だとああいうことになるのか、と。
“暁”の構成員があんなに目立っていいわけがない。
しかし、今回の仕事にヨルと飛段の容姿は利用できる。
「姉ちゃん、まんじゅう追加ァ」
新たに注文する飛段の声を聞いた角都は、店先にたまっている女達を掻きわけ、店の中の奥へと進み、その頭を殴るのだった。
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