31:災厄の前兆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
それからまた1時間ほど歩いてまた階段を上がったあと、古そうな建造物が見えてきた。
大きな両開きの門の両端には大きなカラス天狗の石像が門を守るように立っている。
門の上には“火ノ寺”と大きく書かれていた。
「寺じゃねーかよ…。こんなとこにいんのか?」
「さあな…。だが、ただの寺ではないからな。可能性は高い」
オレ達は門に近づき、角都は左腕を硬化させ、門に容赦なく叩きつける。
ドゴゴ!!
「いきなり正面から堂々と」
門が破壊され、境内は早速騒ぎになっている。
「何事だ!?」
「封印鉄壁を破った者がおる!」
「地陸様に報告しろ!」
騒ぐ坊主達を眺め、飛段は口にする。
「ジャシン教には改宗してくれそーにねーツラしてんな。どいつもこいつも」
オレ達は倒れた門から飛び下り、境内に足を踏み入れた。
坊主達のほとんどがこちらを警戒し、怯えた顔をしている。
「あの衣…。今、噂の…」
「間違いない。暁だ」
悪い意味で有名人だな、暁って。
寺の坊主にまで知られているのか。
いや、寺の奴らは普通の坊主とは違うようだ。
逃げるどころか集まってきてる。
しかも、寺の中には侵入させまいと境内の階段に集結し始めた。
オレ達は、右からオレ、飛段、角都の順で並んで立ったままだ。
「角都、どうする?」
オレの問いに角都は「もう少し待て」と返した。
「!」
しばらくして、坊主達の中から強面の坊主が出てきて、ゆっくりと階段を下りてきた。
手の中で聞こえた、「地陸」って奴かもしれない。
「また徳の高そーなのが出てきたぜぇ…」
「徳だけではない。こちら側のビンゴブックでは三千万両の賞金首だ」
その言葉を聞いてオレは「あ」となった。
今回で人柱力が捕まらなくても、相手が賞金首なら角都に損はない。
「…結局バイトかよ」
オレが肩を落としてそう言うと、飛段は「ハァ」と息をつき、角都に顔を向ける。
「オイ…、金儲けが狙いじゃねーだろうな? そんなのでボウズを殺ると地獄へ落ちるぜ」
「地獄の沙汰も金次第だ。望むところ」
そう言い合ってると、地陸が口を開いた。
「貴殿ら、何用かは知らぬが、大人しく帰られよ!」
あいつの声も耳に障りそうだ。
「無益な殺生はしねーってか。だが、こっちの宗派じゃそうはいかねェ」
飛段はそう言って三連鎌を構えた。
「警告するってことは、ホントにただの寺じゃなさそうだ。角都、あいつ何者だ?」
オレが問うと角都は詳しく教えてくれた。
「火の国に“火ノ寺”ありと謳われた忍寺だ。僧侶は皆、“仙族の才”と呼ばれる特別な力を操るといわれている。特にあの三千万両は火の国の大名を守る“守護忍十二士”に選ばれたこともある、エリート忍者だ」
「守護忍十二士? へー、そんなにスゲーの?」
今度は飛段が尋ねた。
「あの火の国の紋の入った腰布がその証」
確かに、他の坊主達と違って、あいつだけ腰に火の文字が入った布が巻かれてある。
「気を抜くな、死ぬぞ」
角都がそう言って、オレが背中から夢魔を引き抜くと同時に、オレ達3人は地面を蹴った。
「だからオレにそれを言うかよ、角都!」
飛段は刃先で地面を削りながら地陸に向かって走る。
地陸はというと、目を閉じて構えた。
すると、奴の背後に黄金色に輝く千手観音が浮かび上がった。
「なんだあれは?」
角都も賞金首の術までは知らないようだった。
「様子を見た方が…」
「かまわねぇ。このまま突っ込むぜ!」
飛段はオレの言葉を遮り、足を止めずに突進する。
「クソッ、本当にてめーは警戒心が足りねえな!」
先にオレと角都が地陸に躍りかかった。
だが、千手観音が怒りに満ちた表情に変わると同時に、オレは体に強い衝撃を感じた。
千手観音の大きなコブシに殴られたのだと理解した時には、連続でそれを食らってしまう。
角都も同様だ。
「ぐっ!」
オレと角都が倒れると、飛段はオレ達を大きく飛び越え、三連鎌を構えて地陸に飛びかかった。
「もらったァ!」
ゴッ!!
しかし、飛段も千手観音の連続パンチにやられ、地面に倒れた。
「さすが地陸様だ!」
「…葬儀は出してやる」
坊主達はオレ達がやられたと思って歓声を上げ、地陸は情けをかけている。
まあ、普通の奴らなら殴り殺されているが、オレ達は違う。
「誰が…、異教の葬儀なんか受けるかよ…。ジャシン様のバチが当たるぜ…」
倒れたまま飛段が言い、その声の低さで「あ、キレたな」と思った。
「アッタマきたぁ…。オイ、そいつは人柱力じゃねーんだろ? なら、オレの戒律守っていいんだよなァ?」
「好きにしろ…。だが、こいつの死体は金になる。誰だかわかるように、ほどほどにしておけ」
「人の命を金に換えるなんざ、人のやることじゃねーぜ。ったくよォ…」
「仕事や戒律はいいけど、いい加減その内容の無計画さはなんとかならないのかよ」
オレも倒れたまま愚痴をこぼすと、飛段は「まあまあヨルちゃんよォ」と三連鎌を支えに立ち上がり、角都とオレも立ち上がった。
「角都も、手を出すなよ! そいつはオレが、殺る!!」
飛段は再び地陸に向かって突進した。
ちゃんと別の手を考えているのだろうか。
「火ノ寺の地陸、貴様ら如き外道には負けはせぬ!“来迎・千手殺”!!」
またあの千手観音だ。
「ぐあああ!!」
まったく考えてなかったか。
「ぐ…」
袖で血を拭ったオレは三連鎌を支えに立ち上がる。
もう何百発食らったことか。
ひょっとしたら千発は突破したかもしれない。
傷一つつけられれば儲けもんだが、あの観音の手が邪魔しやがる。
「ヤロー…」
ゴッ!!
三連鎌を構えると同時にあのコブシがオレを吹っ飛ばした。
角都もそろそろ待ちくたびれてきたはずだ。
けど、言いだしたからには、たまにはきっちりとやらねえとな。
異教のヤロウ共に負けたらジャシン様に示しがつかない。
「見ろ、敵は弱っているぞ!」
「我らが一斉にかかれば確実に倒せるかもしれん」
他の奴らまで階段を下りてきた。
「チッ」
ただでさえ目の前の奴で面倒だってのに。
「がぁ!」
「!?」
突然、坊主達が悲鳴を上げ、内の数人が血まみれで階段から転げ落ちてきた。
なにがあったのかとオレも地陸も階段を見上げると、夢魔を両手にヨルがそこに立っていた。
ヨルは左手の夢魔を足下に突き刺して横に一線引き、坊主共を睨む。
「この線から出たら、血の夢見せるぞ」
「いつの間に…」
なんであそこにいるのか、長い付き合いだからわかる。
闇染を使ったな。
「オイ、ヨル、手ェ出すなって…」
「手は出してねーだろ、おまえとそいつには。邪魔止めだ。さっさと終わらせろよ」
そう言って、坊主共に振り返って言葉を続ける。
「ちなみに、逃げたり、あの坊主が死んだりしたら、悪いが闇で醒めてもらう。この国にオレ達の存在を察知されると、色々面倒臭そうだからな」
「いいカンジに冷ややかになってきたじゃねーか」
いつまでも甘ちゃんじゃねーってか。
「オレもチンタラやってる場合じゃねーな」
オレはまたあの坊主に突進した。
今度は飛びかかると同時にワイヤーを伸ばした三連鎌を投げつける。
そいつは当然一歩右に避け、三連鎌はそいつの横を通過して地面に突き刺さった。
オレはまたあのコブシに殴られたが、吹っ飛ぶ前にワイヤーを巻きとった。
三連鎌は地面から外れ、
「!」
坊主の二の腕をかすめた。
地面に転がったオレは宙を掻いて戻ってきた三連鎌を仰向けのまま片手で受け止め、大刃の刃先を見た途端、ほくそ笑んだ。
わずかに儀式用の血が付着していた。
「ゲハハッ」
.