31:災厄の前兆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*ヨル
茂みから様子を窺う。
泉の近くにいる角都は、外套を脱いだ姿のまま、隠れもせずに木に背をもたせかけていた。
余裕の態度に腹が立たずにはいられない。
オレは気付かれないようにできるだけ距離を置いて移動し、その背後に近づいて地面を蹴り、
「は!」
夢魔を両手に、真っ正面から角都に切りかかった。
振り下ろした2つの刀身が角都の両肩に入った。
だが、手に伝わってきたのは明らかに肉を断ち切る感触じゃなかった。
角都の体が水に還り、オレの耳は背後の茂みの葉が擦れ合う音を聞きとる。
同時にオレはその場に屈んだ。
「く!」
頭上を硬化した右腕が通過する。
「止まるな」
角都はそう言うと同時に、間髪入れずに左脚を突き出した。
「!!」
オレは咄嗟に夢魔を交差させてそれを防いだが、衝撃に耐えきれず泉へと吹っ飛ばされてしまった。
すぐに空中で体勢を整え、転ばないように泉の水面に着地し、角都から目を離さないようにする。
また水分身されないようにだ。
泉に踏み込んだ角都が右手首の縫い目を解き、地怨虞で右手を飛ばす。
オレは右手の夢魔を水面に突き刺し、勢いよく振るって小さな水の壁を作り、一瞬だけ角都の視線を遮断させた。
「!」
的が外れ、角都の右手はオレ顔の右横を通過すると同時にオレは水の壁から飛び出し、左手の夢魔を投げつける。
角都はそれを硬化した左手で弾いた。
伸ばした右手はまだ戻ってこないし、左手は夢魔を弾いた際に振り上げられたままだ。
角都の懐が一瞬空いたのを狙って突進し、後ろに逃げられないように片足を踏みつけ、右手の夢魔を振るう。
バキン!!
刃先があと数ミリで角都の体に当たろうとした時だ。
角都の左コブシが勢いよく降ってきてオレの夢魔の刀身を叩き折った。
「しまった」と思った時には、
ゴッ!!
戻ってきた右手に横腹を殴られていた。
鈍い痛みを覚えると同時に横に吹っ飛び、地面に転がった。
「はーい、角都の勝ちー」
近くの木の枝の上から座りながら傍観していた飛段がそう言った。
相手の体に一撃を与えた方が勝ち、というのがこの勝負のルールだ。
ちなみに、さっきもそのルールの手合わせで負けたところだ。
「クソ~…」
オレは殴られた横腹を手で押さえながら上半身を起こし、角都を恨みがましく睨みつける。
枝から飛び下りた飛段は「惜しかったなァ、ヨル」と言って苦笑しながらオレに近づいてきた。
「角都も連勝保つのに必死なんだって」
「黙れ、飛段」
角都は枝にかけておいた暁の外套をつかみとって身に纏い、その隣にかけておいたオレの外套をつかんでオレに向かって放り投げた。
宙に舞うそれはオレの頭を覆う。
「バランスはいいが、読みが甘いな」
角都の言葉に悔しさを覚えながらも、ふと昔のことを思い出した。
始末屋時代、同族と手合わせとかはよくやったけど、ヒルには「あなたの取りえは逃げることだけなのですから」と嘲笑され、ユウには「やっぱ弱い! ヨルは弱い!」と馬鹿にされ、アサには手加減されていた。
「ヨル」
飛段の声が降ってきて、オレは視界を覆っていた外套を外して顔を見上げる。
「けっこう強い一撃だったけど、立てるのかァ?」
「10分、時間をやる。さっさと回復させろ。火の国はもう目と鼻の先だ」
こいつらは手加減もしないし、嘲笑もしない。からかうことはあっても、温かいものに感じられる。
昔のオレが今のオレを見たら、絶対驚くはずだ。
そして、羨ましがるはずだ。
昔はあれだけ嫌がってた危険な手合わせでも、「楽しい」と思えるなんて。
「……次は…、負けねえから…」
悔しいけど、自分でもわかりやすいほど口元が緩んでる。
.
茂みから様子を窺う。
泉の近くにいる角都は、外套を脱いだ姿のまま、隠れもせずに木に背をもたせかけていた。
余裕の態度に腹が立たずにはいられない。
オレは気付かれないようにできるだけ距離を置いて移動し、その背後に近づいて地面を蹴り、
「は!」
夢魔を両手に、真っ正面から角都に切りかかった。
振り下ろした2つの刀身が角都の両肩に入った。
だが、手に伝わってきたのは明らかに肉を断ち切る感触じゃなかった。
角都の体が水に還り、オレの耳は背後の茂みの葉が擦れ合う音を聞きとる。
同時にオレはその場に屈んだ。
「く!」
頭上を硬化した右腕が通過する。
「止まるな」
角都はそう言うと同時に、間髪入れずに左脚を突き出した。
「!!」
オレは咄嗟に夢魔を交差させてそれを防いだが、衝撃に耐えきれず泉へと吹っ飛ばされてしまった。
すぐに空中で体勢を整え、転ばないように泉の水面に着地し、角都から目を離さないようにする。
また水分身されないようにだ。
泉に踏み込んだ角都が右手首の縫い目を解き、地怨虞で右手を飛ばす。
オレは右手の夢魔を水面に突き刺し、勢いよく振るって小さな水の壁を作り、一瞬だけ角都の視線を遮断させた。
「!」
的が外れ、角都の右手はオレ顔の右横を通過すると同時にオレは水の壁から飛び出し、左手の夢魔を投げつける。
角都はそれを硬化した左手で弾いた。
伸ばした右手はまだ戻ってこないし、左手は夢魔を弾いた際に振り上げられたままだ。
角都の懐が一瞬空いたのを狙って突進し、後ろに逃げられないように片足を踏みつけ、右手の夢魔を振るう。
バキン!!
刃先があと数ミリで角都の体に当たろうとした時だ。
角都の左コブシが勢いよく降ってきてオレの夢魔の刀身を叩き折った。
「しまった」と思った時には、
ゴッ!!
戻ってきた右手に横腹を殴られていた。
鈍い痛みを覚えると同時に横に吹っ飛び、地面に転がった。
「はーい、角都の勝ちー」
近くの木の枝の上から座りながら傍観していた飛段がそう言った。
相手の体に一撃を与えた方が勝ち、というのがこの勝負のルールだ。
ちなみに、さっきもそのルールの手合わせで負けたところだ。
「クソ~…」
オレは殴られた横腹を手で押さえながら上半身を起こし、角都を恨みがましく睨みつける。
枝から飛び下りた飛段は「惜しかったなァ、ヨル」と言って苦笑しながらオレに近づいてきた。
「角都も連勝保つのに必死なんだって」
「黙れ、飛段」
角都は枝にかけておいた暁の外套をつかみとって身に纏い、その隣にかけておいたオレの外套をつかんでオレに向かって放り投げた。
宙に舞うそれはオレの頭を覆う。
「バランスはいいが、読みが甘いな」
角都の言葉に悔しさを覚えながらも、ふと昔のことを思い出した。
始末屋時代、同族と手合わせとかはよくやったけど、ヒルには「あなたの取りえは逃げることだけなのですから」と嘲笑され、ユウには「やっぱ弱い! ヨルは弱い!」と馬鹿にされ、アサには手加減されていた。
「ヨル」
飛段の声が降ってきて、オレは視界を覆っていた外套を外して顔を見上げる。
「けっこう強い一撃だったけど、立てるのかァ?」
「10分、時間をやる。さっさと回復させろ。火の国はもう目と鼻の先だ」
こいつらは手加減もしないし、嘲笑もしない。からかうことはあっても、温かいものに感じられる。
昔のオレが今のオレを見たら、絶対驚くはずだ。
そして、羨ましがるはずだ。
昔はあれだけ嫌がってた危険な手合わせでも、「楽しい」と思えるなんて。
「……次は…、負けねえから…」
悔しいけど、自分でもわかりやすいほど口元が緩んでる。
.