30:猫と鬼ごっこ
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*角都
飛段が自ら胸を貫いたと同時に、二尾は空を仰いで悲鳴を上げ、その場に崩れるように横に倒れたあと、人柱力の姿に戻った。
飛段はちゃんと急所を外したようだ。
人柱力のユギトはうつ伏せに倒れたままピクピクと体を痙攣させている。
飛段は白黒の状態のまま仰向けに倒れ、シンボルの上でいつもの、己の神のために祈りを捧げていた。
辺りが静けさを取り戻し、圧害とともに地上に戻ってきたヨルは「はー、やっと倒した」と息をついて夢魔を背中に戻し、傍に横たわっているコンクリートの柱に腰を下ろした。
オレは圧害を背中に戻したあと、外套を身に纏い、ユギトの襟首をつかんで引き摺り、飛段に近づいてその懐からもう1本の杭を拝借したあと、ユギトを近くの壁に磔にした。
重ねた両手のひらに飛段の杭で打ちつけてだ。
それを黙って見ていたヨルの顔に不本意が表れる。
「やりすぎじゃねーか? 大切な人柱力なんだから丁寧に扱えよ」
やはり、口出ししてきた。
2年も行動を共にしているが、早くオレ達のように悪人らしくなってほしいものだ。
関門で忍をひとり生かした時もそうだ。
その甘さが命取りになるというのに。
「人柱力は普通の人間より傷の回復が早い。逃がしては苦労が水の泡だ。それに、また横取りされるわけにもいかないからな」
「……………」
オレが冷たく答えると、言い返す言葉もないヨルは眉間にわずかな皺を寄せて磔にしたユギトをしばらく見上げた。
オレはヨルが座っている向かい側の、元は壁だったのだろう平らなコンクリートに腰を下ろし、懐から地図を取り出し、次の行き先を考える。
辺りが夕焼け色に染まってきた頃だろうか。
ヨルは夢魔で指の爪を研いでいた。
その体中の痣は消え、傷は塞がりかけている。
依然、ユギトは磔にされたまま動かない。
飛段の方は肌の色を取り戻したが、こちらも動く気配を見せない。
「30分も経ってるぞ。…まだか、飛段」
「うるせーよ! 儀式の邪魔すんな!」
オレが声をかけると、飛段は首だけを上げてオレを睨むと同時に怒鳴った。
オレが再び視線を地図に落とすと、ちょうど祈りを終えた飛段は胸の杭を引き抜き、「痛って…」と漏らした。
再び背中に夢魔を戻したヨルは右膝に頬杖をつき、呆れたような目で飛段を見下ろして言う。
「今回も長かったな。増援が来ないのが不思議なくらいだ」
続けてオレも地図を見下ろしながら言う。
「毎度毎度のその悪趣味な祈り、少しは省略出来んのか? さっさと次へ行くぞ」
「オレだってめんどくせーけど、戒律なんだからしょーがねーだろ」
飛段は上半身を起こし、オレとヨルを交互に見て言い訳をしたあと、オレを睨んで言葉を続ける。
「それに省略ってなんだ、省略って! 神への冒涜だぞ!」
「出た。こう言いだすと長いんだよな…」
「おいヨル! 聞こえてるっつーの!」
そっぽを向いて呟いたヨルの小さな呟きを飛段は聞き逃さず、ヨルに説教を垂れ始める。
オレはそんな雑音を聞きながら地図につけた印を見つめた。
まだ尾獣が捕獲されていない、ここから近い国は、火の国か。
オレ達のノルマはあと1匹。
しらみつぶしだな。
「次は火の国だ」
オレがそう告げると、2人は黙り、静かに頷いた。
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飛段が自ら胸を貫いたと同時に、二尾は空を仰いで悲鳴を上げ、その場に崩れるように横に倒れたあと、人柱力の姿に戻った。
飛段はちゃんと急所を外したようだ。
人柱力のユギトはうつ伏せに倒れたままピクピクと体を痙攣させている。
飛段は白黒の状態のまま仰向けに倒れ、シンボルの上でいつもの、己の神のために祈りを捧げていた。
辺りが静けさを取り戻し、圧害とともに地上に戻ってきたヨルは「はー、やっと倒した」と息をついて夢魔を背中に戻し、傍に横たわっているコンクリートの柱に腰を下ろした。
オレは圧害を背中に戻したあと、外套を身に纏い、ユギトの襟首をつかんで引き摺り、飛段に近づいてその懐からもう1本の杭を拝借したあと、ユギトを近くの壁に磔にした。
重ねた両手のひらに飛段の杭で打ちつけてだ。
それを黙って見ていたヨルの顔に不本意が表れる。
「やりすぎじゃねーか? 大切な人柱力なんだから丁寧に扱えよ」
やはり、口出ししてきた。
2年も行動を共にしているが、早くオレ達のように悪人らしくなってほしいものだ。
関門で忍をひとり生かした時もそうだ。
その甘さが命取りになるというのに。
「人柱力は普通の人間より傷の回復が早い。逃がしては苦労が水の泡だ。それに、また横取りされるわけにもいかないからな」
「……………」
オレが冷たく答えると、言い返す言葉もないヨルは眉間にわずかな皺を寄せて磔にしたユギトをしばらく見上げた。
オレはヨルが座っている向かい側の、元は壁だったのだろう平らなコンクリートに腰を下ろし、懐から地図を取り出し、次の行き先を考える。
辺りが夕焼け色に染まってきた頃だろうか。
ヨルは夢魔で指の爪を研いでいた。
その体中の痣は消え、傷は塞がりかけている。
依然、ユギトは磔にされたまま動かない。
飛段の方は肌の色を取り戻したが、こちらも動く気配を見せない。
「30分も経ってるぞ。…まだか、飛段」
「うるせーよ! 儀式の邪魔すんな!」
オレが声をかけると、飛段は首だけを上げてオレを睨むと同時に怒鳴った。
オレが再び視線を地図に落とすと、ちょうど祈りを終えた飛段は胸の杭を引き抜き、「痛って…」と漏らした。
再び背中に夢魔を戻したヨルは右膝に頬杖をつき、呆れたような目で飛段を見下ろして言う。
「今回も長かったな。増援が来ないのが不思議なくらいだ」
続けてオレも地図を見下ろしながら言う。
「毎度毎度のその悪趣味な祈り、少しは省略出来んのか? さっさと次へ行くぞ」
「オレだってめんどくせーけど、戒律なんだからしょーがねーだろ」
飛段は上半身を起こし、オレとヨルを交互に見て言い訳をしたあと、オレを睨んで言葉を続ける。
「それに省略ってなんだ、省略って! 神への冒涜だぞ!」
「出た。こう言いだすと長いんだよな…」
「おいヨル! 聞こえてるっつーの!」
そっぽを向いて呟いたヨルの小さな呟きを飛段は聞き逃さず、ヨルに説教を垂れ始める。
オレはそんな雑音を聞きながら地図につけた印を見つめた。
まだ尾獣が捕獲されていない、ここから近い国は、火の国か。
オレ達のノルマはあと1匹。
しらみつぶしだな。
「次は火の国だ」
オレがそう告げると、2人は黙り、静かに頷いた。
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