30:猫と鬼ごっこ
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*ヨル
本部内は本部の襲撃かと、今頃泡を食ってることだろう。
オレはまた増血剤を噛み砕いて飲み込んだ。
分身蝙蝠も本部に向かわせ、集まってきた忍達にわざと消させる。
オレ自身は本部に向かわなくてもいいそうだ。
角都の言葉を思い出す。
「雷影本人が来る前に引き上げろ。貴様では、死ぬぞ」
やはり里の主だからか。
どんな面してるのか拝みたかったけど、殺されるのだけはカンベンだな。
そろそろ増血剤もなくなってきた。
小袋の中を確認していると、無線が雑音を立てた。聞こえてきたのは角都の声だ。
“ヨル、二尾は地下に逃げ込んだ。本部に繋がっている可能性がある。貴様も地下から追え”
「逃げ込んだって…」
とにかく、陽動もここまでか。
文句ひとつ言いたいところだが、そんなヒマはなさそうだ。
「…わかった。じゃあオレも…」
そう言いかけ、オレは背中から夢魔を生やし、
ギイン!
振り下ろされた刀を防いだ。
すぐにそこから飛び退き、刀を振り下ろした相手を見る。
“どうした、なにかあったのか”
オレは無線を切った。
「…よくここがわかったな」
ここは本部からは微妙な距離なのに。
相手は2人だった。
大きな刀を持った色黒の男と、色白の男だ。
額当てをつけてるってことは忍か。
どちらも他の忍とは雰囲気が違う。
「うちのシーは、感知タイプの忍だ」
色黒の男がそう言って、オレはシーと呼ばれた色白の男を見る。
感知タイプっていうと、敵の居場所を敵のチャクラなどで発見したりするってやつか。
とっとと引き上げとけばよかったな。
オレは背中から夢魔をつかみとった。
「オレ達の大将になにか用か?」
「……………」
色黒の男に尋ねられるが、うかつなことは答えない方がよさそうだ。
「本部をからかいにきたわけじゃないんだろう? それにたった単独で、無謀にもほどがあるな」
シーのその言葉にも否定はしない。
オレはどちらかというと、角都曰く嘘がヘタだからだ。
「仲間がいるのか?」
「勝手にそう思っとけよ」
オレはそれだけ答え、2人に突進する。
「ダルイ!」
「だるいけど、本部に来てすべて正直に吐いてもらう」
ダルイと呼ばれた男がシーより前に出て、オレの夢魔を自分の大刀で防いだ。
力では向こうが上のようだ。
それに大刀の大きさも重さも違うため、夢魔にヒビが刻まれる。
オレは飛び退いて距離をとった。
陽動のために血を使いすぎた。
ここはさっさと引き上げたいが、逃げるのはいいとして撒くのは難しそうだ。
どうするか。
オレはできるだけ余裕な表情を浮かべて考えた。
悪い、角都。
ちょっと時間かかりそうだ。
バキン!
また一本夢魔が折られた。
オレは顔面目掛け横に振るわれた大刀を屈んで避け、右手用の夢魔だけ背中に生やして抜き取った。
「珍しい武器だな。どういう構造だ?」
「秘密」
教えたら、弱点バレるだろ。
血の使いすぎでそろそろ顔にも疲労が出てきたな。
軽く貧血気味だ。
増血剤も残り4・5粒しか残ってないっていうのに。
ダルイが屋根の瓦を割るほど強く蹴り、一気に詰め寄ってきた。
「っ!」
オレは夢魔を交差させて振り下ろされた大刀を受け止める。
「ぐ…っ」
右足が屋根にめり込んだ。
それを見逃さず、ダルイの片手がオレの横腹に触れる。
バチィ!!
「うあああ!!」
同時に、電撃を流されてしまった。
右足を引っこ抜いて距離をとろうとしたが、
「シー!」
「!」
ダルイが怒鳴ると、ダルイの背中越しにいるシーが印を結んだ。
「雷幻雷光柱!」
途端に、シーから稲光が発せられた。
オレが夢魔を落とし、その場に膝をつくとダルイの力が緩んだ。
「幻術にかかったか」
「! ダルイ!」
ダルイがシーに振り返って声をかけた時だ。
気付いたシーが声を張り上げた。
オレはダルイの大刀を蹴りあげた。
ダルイの手から大刀が離れると同時にオレはシーの背後に回り込み、その右肩に噛みついた。
「ぐあ!」
2・3口だけしか飲めなかった。ダルイが向かってきたからだ。
オレは目を開け、シーから離れる。
「なんて奴だ…。目を瞑ったまま…」
膝をついたシーがそう言うと、オレは口端に付着したシーの血を舐めとった。
ほとんど反射的だった。
稲光が目に飛び込んでくる前にオレは目を瞑った。
だから、幻術にはかからなかったのだろう。
なのに、幻術にかかったと思ったそいつらには一瞬の隙が出来た。
目を瞑ったまま俊敏に動いたオレに驚いている様子だ。
「オレの自慢は耳だ」
不敵な笑いとともに言ってやる。
ダルイが屋根に突き刺さった大刀を引き抜くと同時に、オレは両手の夢魔を投げつけた。
当然、ダルイはそれを弾こうとする。
バシャッ!
「くっ!?」
大刀の刃が当たると同時に、オレは夢魔を液化させた。
液化したそれはダルイの顔にかかる。
「これは、血!?」
これでオレの弱点にも気付いたはずだ。
その隙にオレは屋根から飛び降りて逃走する。
「シー!」
「ムリだ…。チャクラが途絶えた」
そんな会話を聞きながら、闇染を使ってオレは路地裏を駆け、マンホールから地下に入る。
うまく走れない。
さっき、雷遁を食らったせいか。
シーの血を少し摂取したおかげか回復してきてるが、まだズキズキと腹が痛む。
「あの色黒、いつか血の夢見せる…」
苛立ちを吐き捨て、先を急いだ。
水の匂いがするということは、ここは地下水路のようだ。
石造りの床を駆けながらオレは無線のスイッチを入れた。
次に罵声がオレの耳を貫いた。
「ヨル!! てめーなに電源切ってんだコノヤロォ!!」
キーンという耳鳴りと同時に頭痛がする。
腹の痛みを忘れるほどの今日一番の痛みだ。
「頼むからオレと無線で連絡とるときは小声で話せ! 十分聞こえるから! 色々邪魔が入ったんだよ。二尾はどうした、二尾は!?」
小声で喋れって言ってんのに飛段は聞きもしない。
「今追ってるとこだ! てめーも早くオレ達と合流しろ!」
オレは耳から無線機を引っこ抜き、耳から少し遠ざけた。
飛段の声量から考えてその方がちょうどいい。
探知蝙蝠の反応は近づきつつある。
飛段達が追ってるってことは、もうすぐでオレも二尾に出くわすことになるのか。
今のところ、角都と飛段に怪我はなさそうだ。
「ヨル、挟み打ちだ」
「ああ」
角都に返事を返し、オレは先を進んだ。
同じような出入口がいくつかあるが、オレは迷わずに2人の電源が切られ、オレは耳に集中した。
オレを抜いて先から3人分の足音が聞こえる。
2人は角都と飛段、1人は二尾と考えて間違いないだろう。
呼吸の荒さまで聞こえてきた。
先に水路がある広い空間が見えたとき、その先の通路に人影も見えた。
同時にそいつの背後からワイヤーで伸ばされた三連鎌が飛んできた。
そいつは床を蹴り、三連鎌を避けて着地する。
「ぐっ…」
投げつけられた三連鎌はそいつから外れて水路に突き刺さった。
「よーく避けるねェ、アンタ」
暗い通路から聞きなれた声が聞こえ、ゆっくりと水路の空間へとやってくる。
「んー…。オレの攻撃スピードは暁一のろまでヘタだから、当たりゃーしねーよ、ホント」
「あとはおまえだけだ」
2人は肩を並ばせて姿を現した。
「いやー、やる方だよ、アンタさ」
「オイ、飛段。こいつは二尾の人柱力だ。気を抜くな、死ぬぞ」
「それをオレに言うか、角都よ。どうせなら、殺してほしーよ、ホント」
お決まりのセリフだ。
「ヨル、そこにいるなら早く出て来い」
角都に声をかけられ、夢魔を引き抜いたオレも出入口から姿を現した。
「そいつが二尾の人柱力か」
二尾の女、情報が間違ってなければ名前は確かユギトだったか、ユギトははっとオレに顔を向けて睨む。
額に額当てをし、長髪を後ろでひとつに束ねた、20代後半であろう美人な女だ。
「貧血起きそうだから少しくらい休ませてくれよ、角都、飛段」
オレはだるそうに右手の夢魔の柄で後頭部を掻いた。
「おいヨル、ひとりだけ楽しよーとしてんじゃねーよ」
「安心しろ。もう少しで休めるぞ」
角都はそう言ってどこから出したのか、預けていたオレの外套を投げた。
バサッとユギトの頭上を通過したそれをオレは左手の夢魔で引っかけて受け取る。
「捕獲したら…だろ?」
オレはため息をつき、外套を身に纏う。
やっぱりこれ着ると、あいつらと同じ暁の構成員だと実感できる。
「仮」っていうのが、今のオレとしては残念なところだ。
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本部内は本部の襲撃かと、今頃泡を食ってることだろう。
オレはまた増血剤を噛み砕いて飲み込んだ。
分身蝙蝠も本部に向かわせ、集まってきた忍達にわざと消させる。
オレ自身は本部に向かわなくてもいいそうだ。
角都の言葉を思い出す。
「雷影本人が来る前に引き上げろ。貴様では、死ぬぞ」
やはり里の主だからか。
どんな面してるのか拝みたかったけど、殺されるのだけはカンベンだな。
そろそろ増血剤もなくなってきた。
小袋の中を確認していると、無線が雑音を立てた。聞こえてきたのは角都の声だ。
“ヨル、二尾は地下に逃げ込んだ。本部に繋がっている可能性がある。貴様も地下から追え”
「逃げ込んだって…」
とにかく、陽動もここまでか。
文句ひとつ言いたいところだが、そんなヒマはなさそうだ。
「…わかった。じゃあオレも…」
そう言いかけ、オレは背中から夢魔を生やし、
ギイン!
振り下ろされた刀を防いだ。
すぐにそこから飛び退き、刀を振り下ろした相手を見る。
“どうした、なにかあったのか”
オレは無線を切った。
「…よくここがわかったな」
ここは本部からは微妙な距離なのに。
相手は2人だった。
大きな刀を持った色黒の男と、色白の男だ。
額当てをつけてるってことは忍か。
どちらも他の忍とは雰囲気が違う。
「うちのシーは、感知タイプの忍だ」
色黒の男がそう言って、オレはシーと呼ばれた色白の男を見る。
感知タイプっていうと、敵の居場所を敵のチャクラなどで発見したりするってやつか。
とっとと引き上げとけばよかったな。
オレは背中から夢魔をつかみとった。
「オレ達の大将になにか用か?」
「……………」
色黒の男に尋ねられるが、うかつなことは答えない方がよさそうだ。
「本部をからかいにきたわけじゃないんだろう? それにたった単独で、無謀にもほどがあるな」
シーのその言葉にも否定はしない。
オレはどちらかというと、角都曰く嘘がヘタだからだ。
「仲間がいるのか?」
「勝手にそう思っとけよ」
オレはそれだけ答え、2人に突進する。
「ダルイ!」
「だるいけど、本部に来てすべて正直に吐いてもらう」
ダルイと呼ばれた男がシーより前に出て、オレの夢魔を自分の大刀で防いだ。
力では向こうが上のようだ。
それに大刀の大きさも重さも違うため、夢魔にヒビが刻まれる。
オレは飛び退いて距離をとった。
陽動のために血を使いすぎた。
ここはさっさと引き上げたいが、逃げるのはいいとして撒くのは難しそうだ。
どうするか。
オレはできるだけ余裕な表情を浮かべて考えた。
悪い、角都。
ちょっと時間かかりそうだ。
バキン!
また一本夢魔が折られた。
オレは顔面目掛け横に振るわれた大刀を屈んで避け、右手用の夢魔だけ背中に生やして抜き取った。
「珍しい武器だな。どういう構造だ?」
「秘密」
教えたら、弱点バレるだろ。
血の使いすぎでそろそろ顔にも疲労が出てきたな。
軽く貧血気味だ。
増血剤も残り4・5粒しか残ってないっていうのに。
ダルイが屋根の瓦を割るほど強く蹴り、一気に詰め寄ってきた。
「っ!」
オレは夢魔を交差させて振り下ろされた大刀を受け止める。
「ぐ…っ」
右足が屋根にめり込んだ。
それを見逃さず、ダルイの片手がオレの横腹に触れる。
バチィ!!
「うあああ!!」
同時に、電撃を流されてしまった。
右足を引っこ抜いて距離をとろうとしたが、
「シー!」
「!」
ダルイが怒鳴ると、ダルイの背中越しにいるシーが印を結んだ。
「雷幻雷光柱!」
途端に、シーから稲光が発せられた。
オレが夢魔を落とし、その場に膝をつくとダルイの力が緩んだ。
「幻術にかかったか」
「! ダルイ!」
ダルイがシーに振り返って声をかけた時だ。
気付いたシーが声を張り上げた。
オレはダルイの大刀を蹴りあげた。
ダルイの手から大刀が離れると同時にオレはシーの背後に回り込み、その右肩に噛みついた。
「ぐあ!」
2・3口だけしか飲めなかった。ダルイが向かってきたからだ。
オレは目を開け、シーから離れる。
「なんて奴だ…。目を瞑ったまま…」
膝をついたシーがそう言うと、オレは口端に付着したシーの血を舐めとった。
ほとんど反射的だった。
稲光が目に飛び込んでくる前にオレは目を瞑った。
だから、幻術にはかからなかったのだろう。
なのに、幻術にかかったと思ったそいつらには一瞬の隙が出来た。
目を瞑ったまま俊敏に動いたオレに驚いている様子だ。
「オレの自慢は耳だ」
不敵な笑いとともに言ってやる。
ダルイが屋根に突き刺さった大刀を引き抜くと同時に、オレは両手の夢魔を投げつけた。
当然、ダルイはそれを弾こうとする。
バシャッ!
「くっ!?」
大刀の刃が当たると同時に、オレは夢魔を液化させた。
液化したそれはダルイの顔にかかる。
「これは、血!?」
これでオレの弱点にも気付いたはずだ。
その隙にオレは屋根から飛び降りて逃走する。
「シー!」
「ムリだ…。チャクラが途絶えた」
そんな会話を聞きながら、闇染を使ってオレは路地裏を駆け、マンホールから地下に入る。
うまく走れない。
さっき、雷遁を食らったせいか。
シーの血を少し摂取したおかげか回復してきてるが、まだズキズキと腹が痛む。
「あの色黒、いつか血の夢見せる…」
苛立ちを吐き捨て、先を急いだ。
水の匂いがするということは、ここは地下水路のようだ。
石造りの床を駆けながらオレは無線のスイッチを入れた。
次に罵声がオレの耳を貫いた。
「ヨル!! てめーなに電源切ってんだコノヤロォ!!」
キーンという耳鳴りと同時に頭痛がする。
腹の痛みを忘れるほどの今日一番の痛みだ。
「頼むからオレと無線で連絡とるときは小声で話せ! 十分聞こえるから! 色々邪魔が入ったんだよ。二尾はどうした、二尾は!?」
小声で喋れって言ってんのに飛段は聞きもしない。
「今追ってるとこだ! てめーも早くオレ達と合流しろ!」
オレは耳から無線機を引っこ抜き、耳から少し遠ざけた。
飛段の声量から考えてその方がちょうどいい。
探知蝙蝠の反応は近づきつつある。
飛段達が追ってるってことは、もうすぐでオレも二尾に出くわすことになるのか。
今のところ、角都と飛段に怪我はなさそうだ。
「ヨル、挟み打ちだ」
「ああ」
角都に返事を返し、オレは先を進んだ。
同じような出入口がいくつかあるが、オレは迷わずに2人の電源が切られ、オレは耳に集中した。
オレを抜いて先から3人分の足音が聞こえる。
2人は角都と飛段、1人は二尾と考えて間違いないだろう。
呼吸の荒さまで聞こえてきた。
先に水路がある広い空間が見えたとき、その先の通路に人影も見えた。
同時にそいつの背後からワイヤーで伸ばされた三連鎌が飛んできた。
そいつは床を蹴り、三連鎌を避けて着地する。
「ぐっ…」
投げつけられた三連鎌はそいつから外れて水路に突き刺さった。
「よーく避けるねェ、アンタ」
暗い通路から聞きなれた声が聞こえ、ゆっくりと水路の空間へとやってくる。
「んー…。オレの攻撃スピードは暁一のろまでヘタだから、当たりゃーしねーよ、ホント」
「あとはおまえだけだ」
2人は肩を並ばせて姿を現した。
「いやー、やる方だよ、アンタさ」
「オイ、飛段。こいつは二尾の人柱力だ。気を抜くな、死ぬぞ」
「それをオレに言うか、角都よ。どうせなら、殺してほしーよ、ホント」
お決まりのセリフだ。
「ヨル、そこにいるなら早く出て来い」
角都に声をかけられ、夢魔を引き抜いたオレも出入口から姿を現した。
「そいつが二尾の人柱力か」
二尾の女、情報が間違ってなければ名前は確かユギトだったか、ユギトははっとオレに顔を向けて睨む。
額に額当てをし、長髪を後ろでひとつに束ねた、20代後半であろう美人な女だ。
「貧血起きそうだから少しくらい休ませてくれよ、角都、飛段」
オレはだるそうに右手の夢魔の柄で後頭部を掻いた。
「おいヨル、ひとりだけ楽しよーとしてんじゃねーよ」
「安心しろ。もう少しで休めるぞ」
角都はそう言ってどこから出したのか、預けていたオレの外套を投げた。
バサッとユギトの頭上を通過したそれをオレは左手の夢魔で引っかけて受け取る。
「捕獲したら…だろ?」
オレはため息をつき、外套を身に纏う。
やっぱりこれ着ると、あいつらと同じ暁の構成員だと実感できる。
「仮」っていうのが、今のオレとしては残念なところだ。
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