30:猫と鬼ごっこ
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*ヨル
里の関門付近で角都と飛段が岩陰から、オレと見張り達を窺っている。
オレを窺っている、とは言っても、オレは闇染で姿を消してるから、2人には見えない。
里の関門の見張りは5人の雲隠れの忍だ。
格好からして全員中忍か。
内の2人は近くの岩山から辺りを窺っている。
見えないようにしているが、オレにはバレてるってことは知らねえだろうな。
報告されては面倒だから、早めに全員片付けてしまおう。
オレはなるべく足音を消してフェンスの前にいる3人の見張りに近づき、夢魔を出現させると同時に突っ込んだ。
「!?」
「こいつ、どこから!?」
当然、奴らは突然現れたオレにたまげ、慌てて戦闘準備に入る。
だが、その前にオレは夢魔をつかみ、振り下ろしていた。
「ギャ!」
「ぐあ!?」
夢魔を交差させ、同時に2人の胴体を正面から斜めに深く斬りつけ、その場にいたもうひとりの、クナイを取り出した右手の手首をつかみ、抵抗される前に素早く後ろにまわしてひねった。
「ぐ…!?」
「動くと折るぞ」
オレは背後からそいつの耳に低く囁いた。
そいつはビクッと体を震わせ、大人しくなる。
だが、辺りをキョロキョロとしている。
その行動の理由を察したオレは、口端を吊り上げて教えてやる。
「残りの2人は、助けに来ねえよ」
ちょうど、フェンスを挟んだ2つの岩山から残りの見張り2人が落ちてきた。
それから、角都と飛段が各々が殺した死体の傍に同時に着地する。
飛段は三連鎌に付着した血を振り払って背中に携え、角都は右腕の土矛を解いた。
それを見た、オレが捕えている忍は顔面蒼白だ。
諦めたのか、ガクリと項垂れる。
「見張りはこれだけか」
角都の問いに、オレは「ああ」と答える。もう一度耳を澄ますが、他に忍の気配はない。
「それにしても、岩隠れみたいに秘密の出入口とかねーのかよ」
そうすれば、わざわざ関門を通らずに済むってのに。
「暁に、雲隠れの出身はいないからな」
「ふーん」
岩隠れの里の出入口は、その里の出身であるデイダラが知っていた。
だから、オレ達は誰にも悟られずに侵入することができた。
「さーて、二尾の居場所、吐いてもらおーかァ」
飛段はニヤニヤとした顔で、オレが捕えている忍に近づき、顔を窺った。
アサの情報では、二尾が出入りしている場所は何か所かあげられているが、オレ達が知りたいのは現在二尾がいる場所だ。
標的は動くわけだし、その情報を受け取って数日経ってるから、新しく出入りしている場所もあるかもしれない。
オレの手に怯えの震動が伝わってくる。
そいつはしばらく苦しげに沈黙し、そして顔を上げて答えた。
「だ…、誰が貴様らに…」
そう答えるということは、居場所は知ってるわけだ。
「おいおい、てめーの状況考えて答えろよ」
飛段が笑みを浮かべたまま眉をひそめ、背中の三連鎌の柄を手にしようとした。
「待て、飛段」
拷問が始まる前にオレは待ったをかけた。
飛段は「ハァ?」とオレを睨み、オレは忍の肩越しに角都と目を合わせる。
「角都、地図をこいつの目前に突き付けてくれ」
角都は黙って懐から地図を取り出し、オレの言う通り、忍の目前に突き付けてくれた。
飛段と忍は訝しげに地図を見る。
「居場所は、てめーの音が教えてくれる」
察した角都は、人差し指で雷の国の地図をなぞっていく。
オレは目を閉じ、耳に集中する。
忍の心音は怯えのせいで速度も速いし大きく高鳴っている。
それでも、角都の人差し指がそこに近づくにつれ、忍の心音はさらに大きく高鳴った。
「角都、ストップ。少し戻ってくれ」
そこから通り過ぎたのか、忍の心音と呼吸が一瞬落ち着いた。
忍が息を呑んだのがわかった。
「この辺りか」
角都は忍の顔から自分に向けて地図をひっくり返した。
「便利な耳だよなァ。ホント」
飛段が改めて感心する。
「もういいぜ」
オレは手刀を忍の延髄に食らわせた。
つかんでいた右腕を放すと、忍は崩れ落ちるように倒れる。
飛段はそいつを見下ろし、口を尖らせた。
「殺してもよかったんじゃねーか?」
「自分より仲間を大切にする奴は、どうも苦手だ」
強めに入れたし、目覚めた頃にはオレ達は二尾を捕獲して里を去っているはずだ。
「ヨル、敵の選り好みをしていると、死ぬぞ」
角都のその言葉にオレはフッと笑う。
「今後、気をつける」
死ぬのは困る。
「二尾はどこだァ!!? ぐあ!!」
早速三連鎌を振り回して里に飛び出そうとした飛段の外套の裾をつかんで派手に転ばせ、「てめーって奴は…」とそのまま建物の陰まで引きずった。
「いきなり敵の里でデケー声で飛びだしてくな! このバカが! バカ! ついでにバカ」
「バカ3回言うなァ!!」
だから、その声がうるさいっての。
慌てたオレはすぐにその口を手で押さえたが、
「痛ててっ!」
噛みつかれてしまった。
「このガキィ!」
「やんのかこのアマァ!」
オレと飛段が互いの武器で派手にぶつかり合っていると、
「やかましい」
ゴッ!
「「ぐはっ!?」」
角都の地怨虞で伸ばした両手のコブシがオレと飛段の頭に直撃した。
静かになったオレ達を見下ろしたあと、角都は取り出した地図の、先程丸で囲んだ場所を見つめる。
オレが忍に吐かせた場所だ。
オレは飛段より先に上半身を起こし、出来立てのコブを擦って角都に尋ねる。
「オレ達でも里中の忍を相手にするのは面倒だろ。短時間で二尾を捕獲する方法、なんかないのか」
オレがそう言いだしたのが間違いだったと、あとで気付く。
「ならば…」
角都は作戦を告げた。
いや、でも、オレが言いださなくてもそうなっていたかもしれない。
オレが適任だからだ。
作戦を聞いたオレは「チッ、しょうがねえか」と呟き、暁の外套を脱いで角都に投げ渡した。
「オレも手伝ってやってもいいぜ」
飛段が参加したがるが、角都に「飛段、貴様はオレと一緒だ」と言った。
飛段はため息をつき、「はいはい」と素直に返事を返す。
オレは2人の右手をとり、角都、飛段と噛みつき、探知蝙蝠を仕込んだ。
「なるべく、それらしい行動ができるよう努力はする」
「ヨル」
角都は懐から取り出したものをオレに投げ渡した。
イアホン型の無線機だ。
「連絡用だ。探知蝙蝠だけでは、オレ達と会話ができないだろう」
それは飛段にも渡された。
オレは露骨に嫌そうな顔をする。
「これって、オレの耳に悪いんだけど…」
他より性能いいオレの耳を痛めてしまうから。
それでもオレの意見を無視して角都は動きだそうとする。
「派手に暴れてこい」
「てめーな…」
オレは青筋を立たせたまま引きつった笑みを浮かべた。
飛段は「ゲハハ」と笑ってる。
あとで覚えてろ。
「そんじゃあ、動くか」
飛段がそう言うと同時に、オレ達は分かれた。
見上げれば、雷影がいるだろう本部がそびえたっている。
出入口は忍達が出たり入ったりしている。
子供の忍まで出入りしてるのか。
「…そろそろいいか。ったく、こういう担当はあまり好きじゃねーんだけどな…」
建物の屋根で待機していたオレは、頃合いを見計り、懐から出した自分で調合した増血剤を小袋から手でつかみとり、口の中に放りこんでガリッと噛み砕いた。
なんてこった、サソリの薬より不味い。
そう思った時、体内の血が騒ぎだした。
「黒鬼牢」
里中に目立つように大きな赤黒い翼を生やし、羽ばたくと同時に翼を飛散させ、本拠地を包みこむ。
早速、里中が騒ぎになってきた。
里の建物や大通りから忍達が続々と本部に集結してくる。
まあ、本拠地に異変が起これば当然の行動だろうな。
そうだ、そうやってどんどん集まってこい。
オレはほくそ笑み、陽動役としての時間稼ぎを続ける。
オレは無線のスイッチを入れ、角都と飛段に連絡した。
「角都、飛段、ヨルだ。こっちはもう始めたぞ」
“そうか。オレ達は二尾のアジトを発見した”
“たっぷりと時間稼げよォ”
やっぱり無線は苦手だ。
自分の耳を人並みに調整できないものか。
.
里の関門付近で角都と飛段が岩陰から、オレと見張り達を窺っている。
オレを窺っている、とは言っても、オレは闇染で姿を消してるから、2人には見えない。
里の関門の見張りは5人の雲隠れの忍だ。
格好からして全員中忍か。
内の2人は近くの岩山から辺りを窺っている。
見えないようにしているが、オレにはバレてるってことは知らねえだろうな。
報告されては面倒だから、早めに全員片付けてしまおう。
オレはなるべく足音を消してフェンスの前にいる3人の見張りに近づき、夢魔を出現させると同時に突っ込んだ。
「!?」
「こいつ、どこから!?」
当然、奴らは突然現れたオレにたまげ、慌てて戦闘準備に入る。
だが、その前にオレは夢魔をつかみ、振り下ろしていた。
「ギャ!」
「ぐあ!?」
夢魔を交差させ、同時に2人の胴体を正面から斜めに深く斬りつけ、その場にいたもうひとりの、クナイを取り出した右手の手首をつかみ、抵抗される前に素早く後ろにまわしてひねった。
「ぐ…!?」
「動くと折るぞ」
オレは背後からそいつの耳に低く囁いた。
そいつはビクッと体を震わせ、大人しくなる。
だが、辺りをキョロキョロとしている。
その行動の理由を察したオレは、口端を吊り上げて教えてやる。
「残りの2人は、助けに来ねえよ」
ちょうど、フェンスを挟んだ2つの岩山から残りの見張り2人が落ちてきた。
それから、角都と飛段が各々が殺した死体の傍に同時に着地する。
飛段は三連鎌に付着した血を振り払って背中に携え、角都は右腕の土矛を解いた。
それを見た、オレが捕えている忍は顔面蒼白だ。
諦めたのか、ガクリと項垂れる。
「見張りはこれだけか」
角都の問いに、オレは「ああ」と答える。もう一度耳を澄ますが、他に忍の気配はない。
「それにしても、岩隠れみたいに秘密の出入口とかねーのかよ」
そうすれば、わざわざ関門を通らずに済むってのに。
「暁に、雲隠れの出身はいないからな」
「ふーん」
岩隠れの里の出入口は、その里の出身であるデイダラが知っていた。
だから、オレ達は誰にも悟られずに侵入することができた。
「さーて、二尾の居場所、吐いてもらおーかァ」
飛段はニヤニヤとした顔で、オレが捕えている忍に近づき、顔を窺った。
アサの情報では、二尾が出入りしている場所は何か所かあげられているが、オレ達が知りたいのは現在二尾がいる場所だ。
標的は動くわけだし、その情報を受け取って数日経ってるから、新しく出入りしている場所もあるかもしれない。
オレの手に怯えの震動が伝わってくる。
そいつはしばらく苦しげに沈黙し、そして顔を上げて答えた。
「だ…、誰が貴様らに…」
そう答えるということは、居場所は知ってるわけだ。
「おいおい、てめーの状況考えて答えろよ」
飛段が笑みを浮かべたまま眉をひそめ、背中の三連鎌の柄を手にしようとした。
「待て、飛段」
拷問が始まる前にオレは待ったをかけた。
飛段は「ハァ?」とオレを睨み、オレは忍の肩越しに角都と目を合わせる。
「角都、地図をこいつの目前に突き付けてくれ」
角都は黙って懐から地図を取り出し、オレの言う通り、忍の目前に突き付けてくれた。
飛段と忍は訝しげに地図を見る。
「居場所は、てめーの音が教えてくれる」
察した角都は、人差し指で雷の国の地図をなぞっていく。
オレは目を閉じ、耳に集中する。
忍の心音は怯えのせいで速度も速いし大きく高鳴っている。
それでも、角都の人差し指がそこに近づくにつれ、忍の心音はさらに大きく高鳴った。
「角都、ストップ。少し戻ってくれ」
そこから通り過ぎたのか、忍の心音と呼吸が一瞬落ち着いた。
忍が息を呑んだのがわかった。
「この辺りか」
角都は忍の顔から自分に向けて地図をひっくり返した。
「便利な耳だよなァ。ホント」
飛段が改めて感心する。
「もういいぜ」
オレは手刀を忍の延髄に食らわせた。
つかんでいた右腕を放すと、忍は崩れ落ちるように倒れる。
飛段はそいつを見下ろし、口を尖らせた。
「殺してもよかったんじゃねーか?」
「自分より仲間を大切にする奴は、どうも苦手だ」
強めに入れたし、目覚めた頃にはオレ達は二尾を捕獲して里を去っているはずだ。
「ヨル、敵の選り好みをしていると、死ぬぞ」
角都のその言葉にオレはフッと笑う。
「今後、気をつける」
死ぬのは困る。
「二尾はどこだァ!!? ぐあ!!」
早速三連鎌を振り回して里に飛び出そうとした飛段の外套の裾をつかんで派手に転ばせ、「てめーって奴は…」とそのまま建物の陰まで引きずった。
「いきなり敵の里でデケー声で飛びだしてくな! このバカが! バカ! ついでにバカ」
「バカ3回言うなァ!!」
だから、その声がうるさいっての。
慌てたオレはすぐにその口を手で押さえたが、
「痛ててっ!」
噛みつかれてしまった。
「このガキィ!」
「やんのかこのアマァ!」
オレと飛段が互いの武器で派手にぶつかり合っていると、
「やかましい」
ゴッ!
「「ぐはっ!?」」
角都の地怨虞で伸ばした両手のコブシがオレと飛段の頭に直撃した。
静かになったオレ達を見下ろしたあと、角都は取り出した地図の、先程丸で囲んだ場所を見つめる。
オレが忍に吐かせた場所だ。
オレは飛段より先に上半身を起こし、出来立てのコブを擦って角都に尋ねる。
「オレ達でも里中の忍を相手にするのは面倒だろ。短時間で二尾を捕獲する方法、なんかないのか」
オレがそう言いだしたのが間違いだったと、あとで気付く。
「ならば…」
角都は作戦を告げた。
いや、でも、オレが言いださなくてもそうなっていたかもしれない。
オレが適任だからだ。
作戦を聞いたオレは「チッ、しょうがねえか」と呟き、暁の外套を脱いで角都に投げ渡した。
「オレも手伝ってやってもいいぜ」
飛段が参加したがるが、角都に「飛段、貴様はオレと一緒だ」と言った。
飛段はため息をつき、「はいはい」と素直に返事を返す。
オレは2人の右手をとり、角都、飛段と噛みつき、探知蝙蝠を仕込んだ。
「なるべく、それらしい行動ができるよう努力はする」
「ヨル」
角都は懐から取り出したものをオレに投げ渡した。
イアホン型の無線機だ。
「連絡用だ。探知蝙蝠だけでは、オレ達と会話ができないだろう」
それは飛段にも渡された。
オレは露骨に嫌そうな顔をする。
「これって、オレの耳に悪いんだけど…」
他より性能いいオレの耳を痛めてしまうから。
それでもオレの意見を無視して角都は動きだそうとする。
「派手に暴れてこい」
「てめーな…」
オレは青筋を立たせたまま引きつった笑みを浮かべた。
飛段は「ゲハハ」と笑ってる。
あとで覚えてろ。
「そんじゃあ、動くか」
飛段がそう言うと同時に、オレ達は分かれた。
見上げれば、雷影がいるだろう本部がそびえたっている。
出入口は忍達が出たり入ったりしている。
子供の忍まで出入りしてるのか。
「…そろそろいいか。ったく、こういう担当はあまり好きじゃねーんだけどな…」
建物の屋根で待機していたオレは、頃合いを見計り、懐から出した自分で調合した増血剤を小袋から手でつかみとり、口の中に放りこんでガリッと噛み砕いた。
なんてこった、サソリの薬より不味い。
そう思った時、体内の血が騒ぎだした。
「黒鬼牢」
里中に目立つように大きな赤黒い翼を生やし、羽ばたくと同時に翼を飛散させ、本拠地を包みこむ。
早速、里中が騒ぎになってきた。
里の建物や大通りから忍達が続々と本部に集結してくる。
まあ、本拠地に異変が起これば当然の行動だろうな。
そうだ、そうやってどんどん集まってこい。
オレはほくそ笑み、陽動役としての時間稼ぎを続ける。
オレは無線のスイッチを入れ、角都と飛段に連絡した。
「角都、飛段、ヨルだ。こっちはもう始めたぞ」
“そうか。オレ達は二尾のアジトを発見した”
“たっぷりと時間稼げよォ”
やっぱり無線は苦手だ。
自分の耳を人並みに調整できないものか。
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