29:湯煙に包まれ
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*飛段
オレとヨルは再び笠を被って肩を並ばせて大通りを歩いていた。
久しぶりに帰ってきた里はオレにとって悪い意味で発展してやがる。
ガキの頃に歩いた大通りも、昔より賑やかになっていた。
それが激しくオレを苛立たせる。
2度と戻らないと思っていたのに。
いっそ、また里を抜けたように一暴れしてやろうか。
オレが帰ってきたことを見せつけて、里の奴らを震え上がらせてやろうか。
もう誰もが否定していた昔のオレじゃない。
オレはジャシン様に祝福されて不死の体を手に入れたんだ。
強制的にジャシン教に改宗させてやるのも悪くねえ。
オレは口端を微かに吊り上げて舌なめずりをし、三連鎌の柄をつかんだ。
すると、いきなり目の前に茶色のウサギが差しだされた。
よく見ると、ウサギの形をしたまんじゅうだった。
「もらった」
オレにそれを差しだしたヨルはそれを頬張りながら言う。
興奮も萎えたオレはため息をつき、三連鎌から手を離し、それを受け取った。
ヨルがまんじゅうを渡されたと思われる店を見ると、腰がだいぶ曲がったバアさんが店を通過する通行人に声をかけては同じものを渡していた。
「今度はウサギかァ。コロコロ変えても、あんなに配ってりゃあ儲かりもしねーってのに…」
ていうか、あのバアさんまだ生きてたのか。
最後に食べたのは、ブサイクなクマの形をしたまんじゅうだった。
ヨルからもらったウサギ型のまんじゅうは、やっぱり、昔の味となにも変わっちゃいなかった。
「美味ェか?」
ヨルに尋ねると、ヨルは苦笑して答える。
「わかんねーけど…、匂いは好きだ」
まあ、そんなもんだろ。
カステラみたいな匂いだから、オレもこの匂いは好きだ。
「…今まで訪れた中で、一番、平和だな…」
そう呟いたヨルをオレは睨みつける。
ヨルは風呂上がりの奴や浴衣姿で宿の前で遊ぶガキ共を微笑ましく見つめていた。
そう言えば、こいつはオレと違って、ガキの頃から平和とは正反対な暮らしをしてたんだっけ。
世の中から隠された存在なのに、毎日毎日戦闘ばかりで、親が死んで戦争に行けなくなったってのは聞いた。
こういう平和ボケしたところとは縁がなかったのかもしれない。
そういうことを茫然と考えていると、
「痛てっ」
向かいから来た奴にぶつかり、体がよろけた。
「どこ見て歩いてんだ」
「ハァ!? こっちのセリフだボケェ!」
確かにオレは茫然としてたが、避けなかったこいつが悪い。
オレは立ち上がり、そいつと睨み合う。
外見からしてオレと同じくらいの年の男か。
上着を腰に巻きつけ、黒の短髪で左側だけオールバックにしたサングラスをかけた奴だ。
人のことは言えねえが柄が悪そうだ。
「そのサングラスのせいで見えてなかったんじゃねーかァ?」
「はんっ、口開けて歩いてた奴がよく言うぜ」
「開いてねーよ! それ見てるくらいなら避けろよバーカァ!」
ようやくそいつの額にも青筋が浮き出た。
「ガキみたいに喚きやがって。黙らすぞクソガキ」
「ダセーグラサンヤロウが、オレをどうす…」
バキッ、と歯と歯がぶつかった音がした。
それからアゴを殴られたのだと理解すると同時に、今までの苛立ちが全身を熱くさせ、目の前の奴をこのクソ里の化身だと決めつけてぶつけることに決めた。
「ジャシン様に感謝するぜェ。いいサンドバックを与えてくださったことになァ!」
オレは笠と三連鎌を投げ捨て、そいつに飛びかかった。
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オレとヨルは再び笠を被って肩を並ばせて大通りを歩いていた。
久しぶりに帰ってきた里はオレにとって悪い意味で発展してやがる。
ガキの頃に歩いた大通りも、昔より賑やかになっていた。
それが激しくオレを苛立たせる。
2度と戻らないと思っていたのに。
いっそ、また里を抜けたように一暴れしてやろうか。
オレが帰ってきたことを見せつけて、里の奴らを震え上がらせてやろうか。
もう誰もが否定していた昔のオレじゃない。
オレはジャシン様に祝福されて不死の体を手に入れたんだ。
強制的にジャシン教に改宗させてやるのも悪くねえ。
オレは口端を微かに吊り上げて舌なめずりをし、三連鎌の柄をつかんだ。
すると、いきなり目の前に茶色のウサギが差しだされた。
よく見ると、ウサギの形をしたまんじゅうだった。
「もらった」
オレにそれを差しだしたヨルはそれを頬張りながら言う。
興奮も萎えたオレはため息をつき、三連鎌から手を離し、それを受け取った。
ヨルがまんじゅうを渡されたと思われる店を見ると、腰がだいぶ曲がったバアさんが店を通過する通行人に声をかけては同じものを渡していた。
「今度はウサギかァ。コロコロ変えても、あんなに配ってりゃあ儲かりもしねーってのに…」
ていうか、あのバアさんまだ生きてたのか。
最後に食べたのは、ブサイクなクマの形をしたまんじゅうだった。
ヨルからもらったウサギ型のまんじゅうは、やっぱり、昔の味となにも変わっちゃいなかった。
「美味ェか?」
ヨルに尋ねると、ヨルは苦笑して答える。
「わかんねーけど…、匂いは好きだ」
まあ、そんなもんだろ。
カステラみたいな匂いだから、オレもこの匂いは好きだ。
「…今まで訪れた中で、一番、平和だな…」
そう呟いたヨルをオレは睨みつける。
ヨルは風呂上がりの奴や浴衣姿で宿の前で遊ぶガキ共を微笑ましく見つめていた。
そう言えば、こいつはオレと違って、ガキの頃から平和とは正反対な暮らしをしてたんだっけ。
世の中から隠された存在なのに、毎日毎日戦闘ばかりで、親が死んで戦争に行けなくなったってのは聞いた。
こういう平和ボケしたところとは縁がなかったのかもしれない。
そういうことを茫然と考えていると、
「痛てっ」
向かいから来た奴にぶつかり、体がよろけた。
「どこ見て歩いてんだ」
「ハァ!? こっちのセリフだボケェ!」
確かにオレは茫然としてたが、避けなかったこいつが悪い。
オレは立ち上がり、そいつと睨み合う。
外見からしてオレと同じくらいの年の男か。
上着を腰に巻きつけ、黒の短髪で左側だけオールバックにしたサングラスをかけた奴だ。
人のことは言えねえが柄が悪そうだ。
「そのサングラスのせいで見えてなかったんじゃねーかァ?」
「はんっ、口開けて歩いてた奴がよく言うぜ」
「開いてねーよ! それ見てるくらいなら避けろよバーカァ!」
ようやくそいつの額にも青筋が浮き出た。
「ガキみたいに喚きやがって。黙らすぞクソガキ」
「ダセーグラサンヤロウが、オレをどうす…」
バキッ、と歯と歯がぶつかった音がした。
それからアゴを殴られたのだと理解すると同時に、今までの苛立ちが全身を熱くさせ、目の前の奴をこのクソ里の化身だと決めつけてぶつけることに決めた。
「ジャシン様に感謝するぜェ。いいサンドバックを与えてくださったことになァ!」
オレは笠と三連鎌を投げ捨て、そいつに飛びかかった。
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