28:他人事ではなく
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夕闇の空に悲鳴が吸いこまれては消える。
ボクは村で一番高い屋根からその様子を眺めていた。
アサは右腕の痣から紫の塵を飛ばしている。
“七色死蝶”のひとつ、“紫刃蝶”。
細かな塵に見えるが、実はミクロサイズの紫色の蝶の群れ。
触れたら外部から、吸いこんだら内部からズタズタに切り刻む蝶だ。
逃げ惑う村人達は血を吐き散らしながら次々と死んでいっている。
「出してくれー!!」
「ぎゃー!!」
出入口まで走ってきた村人たちも外に出たくても出られない。
クロハの力で作られた茨の網が村全体を覆っているから。
根っこも地面まで行き渡ってるから土遁で逃げようもない。
さて、他の奴らはどうしてるかな。
目を凝らしてクロハとアゲハの姿を探す。
遠くの方でアゲハを見つけた。
自分の力で作った刀で次々と相手を切りつけている。
確実に仕留めるためにちゃんと致命傷を与えてるみたいだけど、ボクとしてはできれば大技が見たかった。
クロハは近場にいた。
というか、目の前の道にいた。
「く、来るな!」
父親、母親、その子供の3人家族か。
父親はクワを構えて家族に近づけないようにするが、クロハの歩みは止まらない。
「ああ、わかるわかる。理不尽だよなぁ。平和だった日常を送ってたのに、急にオレらみたいなのが押し掛けちまって…」
「うわあああ!」
話に耳を貸さない父親はクワを振り上げ、クロハに向かって振り下ろした。
クロハは避ける素振りも見せず左手でそれをつかみ、父親の顔を見つめる。
「まだ寿命があるってのに…」
力を発動させたのか、クワの鉄は錆び、柄からは植物が生えた。
怯えた父親は咄嗟にクワを手放した。
腰を抜かして尻餅をついた父親の背中には、戦えないけど父親も置いてもいけない妻と子供がひっついている。
クロハは足下にクワを捨て、その家族に近づく。
「普通に食って寝て成長して、子供にもいつか誰かいい奴が出来て結婚して子供ももらって年取って、そして安らかに死ぬ。これが理想の死だろ? そうはならなくても、ちゃんと天寿を全うして死にてえよな?」
家族に目前に近づいたクロハはその場にしゃがみ、父親の肩に手を置いた。
「オレ様なら、それが出来る」
そう言って笑みを浮かべた瞬間、
「うわああああ!!」
その家族は全員、黒髪が白髪に染まり、体は骨と皮だけになり、顔には皺が刻まれ、完全な老人となってしゃがれた悲鳴を上げながら父親から順番に地面に倒れて死んでいった。
「仲良く年取って死ねただろ?」
始末が終わったクロハは父親の肩から手を放して立ち上がり、家族の死体を見下ろした。
「死に方に美意識でも持ってるの?」
「!」
クロハがこっちを見て軽く睨んだ。
「…べつに」
「だよね。たかが死ぬことにそんなこだわり持ってどうするのさ」
ボクには理解できない。
「……………」
「やっぱ無縁。ボクにそんな死に方絶対無縁!」
ケタケタと笑っているといつの間にかクロハも屋根に移動し、ボクの向かい側に立っていた。
「ヒマそうだな。オレ様が相手をしてやろうか? 調子に乗るのはいいが、仕事はきっちりやりやがれ」
「相手をするって…。ボクにその力が効かないのは知ってるでしょ?」
ボクは狂翼を発動し、村の上空へと飛んだ。
あまり上に行くとクロハの茨の網にかかりそうになるから、なるべく低く飛ぶ。
「それに、仕事はきっちりやるよ」
“紅羽乱舞”で。
ボクは羽根の雨を上空から降らせた。
生き残ってる村人はほとんどコレを受けて死んだ。
アサ達は自分で回避してくれるから気を遣う必要もない。
元は人間が暮らしていた場所と死体しかない。
「惨殺終了。……いや…」
ボクは自慢の目で上空からその姿を捕えた。
村の奥の出入口付近に母親の死体にすがりついている子供を見つけた。
「仲間はずれ発見」
舌なめずりをしたボクは真っ先にそちらに飛び、子供の目の前に着地した。
子供は「ひっ」と言ってボクを涙目で見上げ、体を小刻みに震わせている。
「なんでまだ死んでないのさ。…ん?」
どことなくヨルに似てる。怯えた顔なんか、子供容姿時代のヨルそっくりだ。
「あーあ…」
「…?」
子供が首を傾げると同時にボクは右手の鉤爪でその胸を貫いた。
子供は叫びを上げずに死んだ。
「食欲失せた」
あいつの顔なんか、思い出したくなかったってのに。
どうしようかな、やっぱり早くボクの手で片付けた方がいいかな。
ほら、また疼いてきた。
.To be continued
ボクは村で一番高い屋根からその様子を眺めていた。
アサは右腕の痣から紫の塵を飛ばしている。
“七色死蝶”のひとつ、“紫刃蝶”。
細かな塵に見えるが、実はミクロサイズの紫色の蝶の群れ。
触れたら外部から、吸いこんだら内部からズタズタに切り刻む蝶だ。
逃げ惑う村人達は血を吐き散らしながら次々と死んでいっている。
「出してくれー!!」
「ぎゃー!!」
出入口まで走ってきた村人たちも外に出たくても出られない。
クロハの力で作られた茨の網が村全体を覆っているから。
根っこも地面まで行き渡ってるから土遁で逃げようもない。
さて、他の奴らはどうしてるかな。
目を凝らしてクロハとアゲハの姿を探す。
遠くの方でアゲハを見つけた。
自分の力で作った刀で次々と相手を切りつけている。
確実に仕留めるためにちゃんと致命傷を与えてるみたいだけど、ボクとしてはできれば大技が見たかった。
クロハは近場にいた。
というか、目の前の道にいた。
「く、来るな!」
父親、母親、その子供の3人家族か。
父親はクワを構えて家族に近づけないようにするが、クロハの歩みは止まらない。
「ああ、わかるわかる。理不尽だよなぁ。平和だった日常を送ってたのに、急にオレらみたいなのが押し掛けちまって…」
「うわあああ!」
話に耳を貸さない父親はクワを振り上げ、クロハに向かって振り下ろした。
クロハは避ける素振りも見せず左手でそれをつかみ、父親の顔を見つめる。
「まだ寿命があるってのに…」
力を発動させたのか、クワの鉄は錆び、柄からは植物が生えた。
怯えた父親は咄嗟にクワを手放した。
腰を抜かして尻餅をついた父親の背中には、戦えないけど父親も置いてもいけない妻と子供がひっついている。
クロハは足下にクワを捨て、その家族に近づく。
「普通に食って寝て成長して、子供にもいつか誰かいい奴が出来て結婚して子供ももらって年取って、そして安らかに死ぬ。これが理想の死だろ? そうはならなくても、ちゃんと天寿を全うして死にてえよな?」
家族に目前に近づいたクロハはその場にしゃがみ、父親の肩に手を置いた。
「オレ様なら、それが出来る」
そう言って笑みを浮かべた瞬間、
「うわああああ!!」
その家族は全員、黒髪が白髪に染まり、体は骨と皮だけになり、顔には皺が刻まれ、完全な老人となってしゃがれた悲鳴を上げながら父親から順番に地面に倒れて死んでいった。
「仲良く年取って死ねただろ?」
始末が終わったクロハは父親の肩から手を放して立ち上がり、家族の死体を見下ろした。
「死に方に美意識でも持ってるの?」
「!」
クロハがこっちを見て軽く睨んだ。
「…べつに」
「だよね。たかが死ぬことにそんなこだわり持ってどうするのさ」
ボクには理解できない。
「……………」
「やっぱ無縁。ボクにそんな死に方絶対無縁!」
ケタケタと笑っているといつの間にかクロハも屋根に移動し、ボクの向かい側に立っていた。
「ヒマそうだな。オレ様が相手をしてやろうか? 調子に乗るのはいいが、仕事はきっちりやりやがれ」
「相手をするって…。ボクにその力が効かないのは知ってるでしょ?」
ボクは狂翼を発動し、村の上空へと飛んだ。
あまり上に行くとクロハの茨の網にかかりそうになるから、なるべく低く飛ぶ。
「それに、仕事はきっちりやるよ」
“紅羽乱舞”で。
ボクは羽根の雨を上空から降らせた。
生き残ってる村人はほとんどコレを受けて死んだ。
アサ達は自分で回避してくれるから気を遣う必要もない。
元は人間が暮らしていた場所と死体しかない。
「惨殺終了。……いや…」
ボクは自慢の目で上空からその姿を捕えた。
村の奥の出入口付近に母親の死体にすがりついている子供を見つけた。
「仲間はずれ発見」
舌なめずりをしたボクは真っ先にそちらに飛び、子供の目の前に着地した。
子供は「ひっ」と言ってボクを涙目で見上げ、体を小刻みに震わせている。
「なんでまだ死んでないのさ。…ん?」
どことなくヨルに似てる。怯えた顔なんか、子供容姿時代のヨルそっくりだ。
「あーあ…」
「…?」
子供が首を傾げると同時にボクは右手の鉤爪でその胸を貫いた。
子供は叫びを上げずに死んだ。
「食欲失せた」
あいつの顔なんか、思い出したくなかったってのに。
どうしようかな、やっぱり早くボクの手で片付けた方がいいかな。
ほら、また疼いてきた。
.To be continued