28:他人事ではなく
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サソリが死んだか。
しぶとい奴だと思っていたが、まさかデイダラより先に死ぬとはな。
デイダラのさっきの反応を見て、懐かれていたということだけはわかった。
ただ芸術論をぶつけあった仲だったというわけではなさそうだ。
オレも昔からの飲み相手がいなくなったのは惜しいが。
「ちょうど、これからの任務で前金があるんだ。うん」
「任務?」
ヨルが尋ねるとデイダラは巻物からアタッシュケースを出し、ヨルに振り返って答える。
「後片付けだ」
「…ああ、サソリも言っていたな…」
オレはデイダラから金を受け取って呟く。
「なんの後片付けなんだ?」
ヨルがオレに尋ねるが、オレは答えなかった。
ただでさえ少し不安定な奴に、これ以上の刺激を与えてはこれからの任務に支障が出るかもしれないからだ。
「それじゃあ、オイラ達は行くぞ。うん」
デイダラは手の口から粘土を食べて吐きだした鳥型の小さな粘土を前に放り、巨大な鳥を出現させ、その上に飛び乗った。
「じゃあな」
そう声をかけてから飛び立つ。
相方を忘れて。
「ちょっ、ちょっ、デイダラ先輩!? オレを置いていかないでー!!;」
わざと忘れられた相方は、鳥が飛んでいく方向に向かって全速力で走り出した。
「うわぁ、あいつ扱い酷いなァ;」
飛段とヨルはトビの姿が森に消えるまで見送った。
オレはアタッシュケースの金を確認しながらヨルの背中を見つめ、宿で酒を飲み合っていたサソリを思い出した。
「なぁ、角都、知ってるか?」
「?」
窓枠に腰と右足をかけ、月を見上げながらサソリは話を持ち出した。
「オレ達暁の誰かが、村や里の奴らどもを皆殺しにしてることを。オレ達芸術組は、そいつらが散らかしたものの掃除を任されるようになった」
それは傍から聞けば愚痴のように聞こえる。
初めて耳にする情報にオレは興味を持った。
「皆殺しだと?」
「オレ達暁に反抗する一族や組織、そいつらの皆殺しだ。初めて見た時は目を疑ったぜ。村の全員1人残さず始末されていた。それに、誰かが逃げた痕跡が一切ねえんだ」
「どうしてわかる?」
「わかるさ。アレも芸術って言えるかわからねーが、村の出入口はいくつもあったのに、村人の死体も血も、村の外に漏れることなくおさまってた。村全体に結界でも張られてたのか…」
サソリは面白いとでも言いたげに薄笑みを浮かべ、おちょこに入った油を一口飲んだ。
オレは己の酒に手をつけずに尋ねる。
「おまえ達の仕事と言うのは…」
「綺麗さっぱり跡形もなく抹消することだ。そこに村自体がなかったようにな。誰がやってるかはわからねえ。オレ達が来る前にそいつらはさっさと引き上げてるしな。イタチと鬼鮫、あいつらでもあそこまではしないだろ。おまえら“賞金首狩り”なら、奴らは“一族狩り”だ。身内や親戚どころか、友人や恋人まで皆殺し。不安な種まで根絶やしにしてる。1%の復讐も許さねーみたいだ」
「……………」
今ならはっきりとそいつらが誰なのかを当てることができるぞ、サソリ。
夕闇が近い。
そろそろオレ達も行かなければ。
雷の国はまだ遠い。
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