28:他人事ではなく
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*ヨル
不思議な夢だ。
床も空もオレの周りすべてが白の世界。
歩いても歩いても変わることのない景色。
飽きることもないし、妙に居心地がいい。
今のオレの心を映した世界だろうか。
昔はあんなに眩しい場所を嫌っていたのに。
目覚めるまで歩き続けてみるかと足を進める。
すると、鮮やかな赤を見つけた。
「!」
誰かいる。
あの赤い髪には見覚えがある。
こちらに背を向けたまま動かない。
近づくにつれてオレは焦りを覚え、早足になる。
「おい…!」
声をかけてもそいつは振り向くどころか返事もしない。
本物の人形のようにそこに立っているだけだ。
なにを見つめているのだろうとそいつの先を見ると、最初にただの黒い点が見えた。
だが、次第に増えて津波のようにこちらに迫っている。
オレはついに駆けだした。
そいつがそれに向かって歩きだしたからだ。
「行くな…!」
オレは声を張り上げた。
そいつはようやく肩越しにこちらに振り返ったが、暁の外套の襟が邪魔で目から下が見えない。
けれど、静かな目とオレの目は確かに合った。
「サソリィ!!」
サソリが闇に呑まれ、最後にオレは黒に覆われた白の世界を見た。
はっと目を覚ますと眩しい空が目に飛び込み、反射的に目を細め、手の甲で目を覆った。
夢の中に角都と飛段以外の暁の奴が出てくるのは珍しいことだった。
思ったより長く眠っていなかったようだ。
手の甲を額にずらして汗を拭い、太陽を直視しないように空を見上げる。
「眩しい…」
そう呟いた時だ。
目に映る空になにかが通過した。
鳥だ。
「?」
鳥はそのままこちらに向かって降下してきた。
降下するにつれて大きさも明らかになっていく。
「!」
デカい、粘土の鳥だ。
その背中には2人の影があった。
「よぅ」
屋根に舞い降りた鳥から下りてきたのは、鳥を操っていたデイダラだ。
「デイダラ!」
そこでオレは血臭に気付いた。
匂いの先はデイダラの右腕だ。
風が吹くと、外套の右袖がなびき、二の腕から下がないことがわかる。
「おまえ、右腕は?」
「ちっとヘマしちまって、右腕繋げてもらうために角都に頼みにきたんだ。うん」
そんな話は角都から聞かされてないな。
予約なしか。
「そーそー、もうコテンパンってヤツっスねー!」
「!?」
聞きなれない声にオレは思わず構えた。
デイダラはカチンときたのか、オレに顔を向けたまま眉間に皺を寄せる。
鳥から下りてきたのはサソリではなく、オレ達と同じく暁の外套を見に纏った、右目だけ穴の空いたぐるぐる模様のオレンジ色の仮面をつけた男だ。
「だ、誰だ?」
オレが警戒を露わにしているにも関わらず、仮面の男はひょこひょことオレの目の前に近づき、両手でオレの右手を握った。
「ども、初めまして! 新しく正式暁のメンバーのひとりになった、トビって言います! 以後、お見知りおきをー」
「お、おう、わかったから放せ;」
ハイテンションについていけず、オレは手袋がはめられたその手を振りほどいた。
トビか。
どこかで聞いたことある名前だ。
「認めてねえが、オイラの新しい相方だ。うん」
デイダラは不機嫌な顔でそう言った。
オレはトビを一瞥したあと、鳥の背中に他に誰か乗っていないか見たが、この2人以外誰もいない。
オレはデイダラに振り返って尋ねる。
「あいつは? サソリはどうした?」
「旦那なら死んだぜ」
あまりにもあっさり言うものだから、オレは一瞬意味が理解できずに「え?」と言ってしまった。
それからトビの手を見ると、親指に、サソリがつけていた“玉”の文字が刻まれた指輪がつけられていた。
「だからオレがデイダラ先輩の相棒として選ばれたんスよー」
トビは変わらず明るい口調で話す。
オレは思わず睨んだ。
「そんなに見つめられるとテレるっス」
そう言ってトビが困った様子で後頭部を掻いた。
オレは視線をデイダラに戻す。
「どいつがサソリを?」
「誰かってのは知らねえが、木ノ葉の忍だ。うん」
「木ノ葉…」
名も地図上の場所も知っているが、立ち寄ったことのない里だ。
「せっかく尾獣1匹捕まえて封印したってのに、やられたらノルマの意味が…」
「それだけ…」
「あ、角都!」
オレがそう言いかけたとき、デイダラは風車小屋から出てきた角都と飛段に気付き、屋根から飛び降りた。
続いてトビも「待ってくださいよー」とデイダラを追いかける。
デイダラは角都に声をかけ、右腕を繋げてほしいと頼んでいる。
「それだけなのか?」
口からこぼれた小さなその言葉は、風車の音にかき消されてしまった。
オレ達は湖畔へと移動し、角都はデイダラと向かい合わせに座りながらデイダラの右腕を地怨虞で縫合していた。
飛段はうつ伏せに寝転んで「なにやられてんだー」とデイダラをからかい、トビもその場に座ってデイダラのやられっぷりを話していた。
デイダラも黙らずに「トビ! てめーあとでオイラの芸術にしてやるからな! うん!」と怒鳴り、角都は「黙っていろ」とデイダラをたしなめる。
少し離れたところで木に背をもたせかけて座るオレは、その光景を横目で見、さっきデイダラからもらったメモに視線を戻した。
メモには増血剤の作り方が書かれてある。
サソリが持っていたメモだそうだ。
薬局や山に行けば必要な材料は揃えられそうだ。
サソリ本人からもらった増血剤はまだ少量ほど残っている。
「そういえば、角都先輩と飛段先輩、五尾をアサ先輩に奪われちゃったそうっスね。気の毒っス。あ、そうだ、大会の話してくださいよー」
その話題を持ち出したとき、飛段の目付きが変わった。
「相変わらずウゼーヤロウだな。殺していいか?」
思い出すのも腹立たしいことだったのか、飛段が三連鎌に手をかけて立ち上がろうとした。
トビは「げ」と声を上げ、両手を目前でブンブンと横に振りながら慌てる。
「な、なんでいきなりそうなるんスか!?(汗)」
「コラトビ! 縫合中だ! 大人しくしてろ。うん!」
「えー、冷たいっスよー」
トビは女のように体をクネクネさせてデイダラに返した。
「ホント、冷たいな」
全員がこっちを見た。
そこでオレは口に出して言ってしまったことに気付く。
「あ…、いや…」
オレはたぶんバツの悪い顔をしているはずだ。
それから、「なんでもない」と言ってそっぽを向いた。
よくよく考えれば、オレ達は犯罪者集団だ。
そんな奴らが仲間の死を悲しむなんて小さなことするわけがないか。
オレは後ろに手を組み、寝転がった。
風が吹き、木漏れ日が踊る。
暁の構成員はいくらでもいるんだ。
オレが死ぬようなことがあっても、2人はまた代わりを見つければいいだけの話だ。
2人が嘆くことはない。
一度目を閉じ、再び開けると目の前には飛段の顔があった。
「どうした? ヨル」
わざわざ様子を見に来てくれたようだ。
オレは薄笑みを浮かべる。
「…アホ面」
「ハァ!?」
飛段はショックを受けたように怒鳴り、オレはケタケタと寝転びながら笑った。
オレは2人が死んだら悲しい。
悲しくて死ぬかもしれない。
唸る飛段に「悪かった悪かった」と肩を叩いて上半身を起こすと、ちょうど角都も治療が終わったところだった。
デイダラの右腕は見事にくっつき、指も動かせるほどだが、肘がなかったのか別の血肉を代替に繋がれていた。
「治療代は300万両だ」
「…高い」
指も動かせて満足げだったデイダラも値段を聞くとうんざりしたような顔になる。
「安い方だ。胸の封印術はいくらしたと思っている?」
「…はぁ、また交渉頼んでいいか、旦那。うん」
その言葉に全員の顔が「え」となった。
そんな全員の反応に、自然とそれを口にしたデイダラもはっとなり、一瞬目を伏せたのが見えた。
「…チッ、払えばいいんだろ。うん」
しばらく黙ったあと舌を打ち、デイダラは素直に角都に金を渡すため、巻物を開いた。
ずっと一緒にいた奴が死んだら、誰だって悲しいに決まってるじゃないか。
不謹慎だが、オレは正直ホッとした。
.
不思議な夢だ。
床も空もオレの周りすべてが白の世界。
歩いても歩いても変わることのない景色。
飽きることもないし、妙に居心地がいい。
今のオレの心を映した世界だろうか。
昔はあんなに眩しい場所を嫌っていたのに。
目覚めるまで歩き続けてみるかと足を進める。
すると、鮮やかな赤を見つけた。
「!」
誰かいる。
あの赤い髪には見覚えがある。
こちらに背を向けたまま動かない。
近づくにつれてオレは焦りを覚え、早足になる。
「おい…!」
声をかけてもそいつは振り向くどころか返事もしない。
本物の人形のようにそこに立っているだけだ。
なにを見つめているのだろうとそいつの先を見ると、最初にただの黒い点が見えた。
だが、次第に増えて津波のようにこちらに迫っている。
オレはついに駆けだした。
そいつがそれに向かって歩きだしたからだ。
「行くな…!」
オレは声を張り上げた。
そいつはようやく肩越しにこちらに振り返ったが、暁の外套の襟が邪魔で目から下が見えない。
けれど、静かな目とオレの目は確かに合った。
「サソリィ!!」
サソリが闇に呑まれ、最後にオレは黒に覆われた白の世界を見た。
はっと目を覚ますと眩しい空が目に飛び込み、反射的に目を細め、手の甲で目を覆った。
夢の中に角都と飛段以外の暁の奴が出てくるのは珍しいことだった。
思ったより長く眠っていなかったようだ。
手の甲を額にずらして汗を拭い、太陽を直視しないように空を見上げる。
「眩しい…」
そう呟いた時だ。
目に映る空になにかが通過した。
鳥だ。
「?」
鳥はそのままこちらに向かって降下してきた。
降下するにつれて大きさも明らかになっていく。
「!」
デカい、粘土の鳥だ。
その背中には2人の影があった。
「よぅ」
屋根に舞い降りた鳥から下りてきたのは、鳥を操っていたデイダラだ。
「デイダラ!」
そこでオレは血臭に気付いた。
匂いの先はデイダラの右腕だ。
風が吹くと、外套の右袖がなびき、二の腕から下がないことがわかる。
「おまえ、右腕は?」
「ちっとヘマしちまって、右腕繋げてもらうために角都に頼みにきたんだ。うん」
そんな話は角都から聞かされてないな。
予約なしか。
「そーそー、もうコテンパンってヤツっスねー!」
「!?」
聞きなれない声にオレは思わず構えた。
デイダラはカチンときたのか、オレに顔を向けたまま眉間に皺を寄せる。
鳥から下りてきたのはサソリではなく、オレ達と同じく暁の外套を見に纏った、右目だけ穴の空いたぐるぐる模様のオレンジ色の仮面をつけた男だ。
「だ、誰だ?」
オレが警戒を露わにしているにも関わらず、仮面の男はひょこひょことオレの目の前に近づき、両手でオレの右手を握った。
「ども、初めまして! 新しく正式暁のメンバーのひとりになった、トビって言います! 以後、お見知りおきをー」
「お、おう、わかったから放せ;」
ハイテンションについていけず、オレは手袋がはめられたその手を振りほどいた。
トビか。
どこかで聞いたことある名前だ。
「認めてねえが、オイラの新しい相方だ。うん」
デイダラは不機嫌な顔でそう言った。
オレはトビを一瞥したあと、鳥の背中に他に誰か乗っていないか見たが、この2人以外誰もいない。
オレはデイダラに振り返って尋ねる。
「あいつは? サソリはどうした?」
「旦那なら死んだぜ」
あまりにもあっさり言うものだから、オレは一瞬意味が理解できずに「え?」と言ってしまった。
それからトビの手を見ると、親指に、サソリがつけていた“玉”の文字が刻まれた指輪がつけられていた。
「だからオレがデイダラ先輩の相棒として選ばれたんスよー」
トビは変わらず明るい口調で話す。
オレは思わず睨んだ。
「そんなに見つめられるとテレるっス」
そう言ってトビが困った様子で後頭部を掻いた。
オレは視線をデイダラに戻す。
「どいつがサソリを?」
「誰かってのは知らねえが、木ノ葉の忍だ。うん」
「木ノ葉…」
名も地図上の場所も知っているが、立ち寄ったことのない里だ。
「せっかく尾獣1匹捕まえて封印したってのに、やられたらノルマの意味が…」
「それだけ…」
「あ、角都!」
オレがそう言いかけたとき、デイダラは風車小屋から出てきた角都と飛段に気付き、屋根から飛び降りた。
続いてトビも「待ってくださいよー」とデイダラを追いかける。
デイダラは角都に声をかけ、右腕を繋げてほしいと頼んでいる。
「それだけなのか?」
口からこぼれた小さなその言葉は、風車の音にかき消されてしまった。
オレ達は湖畔へと移動し、角都はデイダラと向かい合わせに座りながらデイダラの右腕を地怨虞で縫合していた。
飛段はうつ伏せに寝転んで「なにやられてんだー」とデイダラをからかい、トビもその場に座ってデイダラのやられっぷりを話していた。
デイダラも黙らずに「トビ! てめーあとでオイラの芸術にしてやるからな! うん!」と怒鳴り、角都は「黙っていろ」とデイダラをたしなめる。
少し離れたところで木に背をもたせかけて座るオレは、その光景を横目で見、さっきデイダラからもらったメモに視線を戻した。
メモには増血剤の作り方が書かれてある。
サソリが持っていたメモだそうだ。
薬局や山に行けば必要な材料は揃えられそうだ。
サソリ本人からもらった増血剤はまだ少量ほど残っている。
「そういえば、角都先輩と飛段先輩、五尾をアサ先輩に奪われちゃったそうっスね。気の毒っス。あ、そうだ、大会の話してくださいよー」
その話題を持ち出したとき、飛段の目付きが変わった。
「相変わらずウゼーヤロウだな。殺していいか?」
思い出すのも腹立たしいことだったのか、飛段が三連鎌に手をかけて立ち上がろうとした。
トビは「げ」と声を上げ、両手を目前でブンブンと横に振りながら慌てる。
「な、なんでいきなりそうなるんスか!?(汗)」
「コラトビ! 縫合中だ! 大人しくしてろ。うん!」
「えー、冷たいっスよー」
トビは女のように体をクネクネさせてデイダラに返した。
「ホント、冷たいな」
全員がこっちを見た。
そこでオレは口に出して言ってしまったことに気付く。
「あ…、いや…」
オレはたぶんバツの悪い顔をしているはずだ。
それから、「なんでもない」と言ってそっぽを向いた。
よくよく考えれば、オレ達は犯罪者集団だ。
そんな奴らが仲間の死を悲しむなんて小さなことするわけがないか。
オレは後ろに手を組み、寝転がった。
風が吹き、木漏れ日が踊る。
暁の構成員はいくらでもいるんだ。
オレが死ぬようなことがあっても、2人はまた代わりを見つければいいだけの話だ。
2人が嘆くことはない。
一度目を閉じ、再び開けると目の前には飛段の顔があった。
「どうした? ヨル」
わざわざ様子を見に来てくれたようだ。
オレは薄笑みを浮かべる。
「…アホ面」
「ハァ!?」
飛段はショックを受けたように怒鳴り、オレはケタケタと寝転びながら笑った。
オレは2人が死んだら悲しい。
悲しくて死ぬかもしれない。
唸る飛段に「悪かった悪かった」と肩を叩いて上半身を起こすと、ちょうど角都も治療が終わったところだった。
デイダラの右腕は見事にくっつき、指も動かせるほどだが、肘がなかったのか別の血肉を代替に繋がれていた。
「治療代は300万両だ」
「…高い」
指も動かせて満足げだったデイダラも値段を聞くとうんざりしたような顔になる。
「安い方だ。胸の封印術はいくらしたと思っている?」
「…はぁ、また交渉頼んでいいか、旦那。うん」
その言葉に全員の顔が「え」となった。
そんな全員の反応に、自然とそれを口にしたデイダラもはっとなり、一瞬目を伏せたのが見えた。
「…チッ、払えばいいんだろ。うん」
しばらく黙ったあと舌を打ち、デイダラは素直に角都に金を渡すため、巻物を開いた。
ずっと一緒にいた奴が死んだら、誰だって悲しいに決まってるじゃないか。
不謹慎だが、オレは正直ホッとした。
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