28:他人事ではなく
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*ユウ
あれから6日が経過した。
ボクは向かい側の切り株に座り、じっとその様子を見つめるがアサは印を結んで目を閉じたままピクリとも動かない。
アサの口元に手を近づけてみる。
一応息はしているようだ。
退屈過ぎて、どうせ見張りはゼツがやってくれているのだとその場から少し離れ、近くの断崖から付近の小さな村を見下ろした。
もうすぐ夕方だ。
買い物へと出かける主婦、気紛れに外を出歩く男、畑仕事から帰ってきた老夫婦、帰路を急ぐ子供などが見える。
ボク達が始末屋をやっていた時代では見たことがない光景だ。
あの子供は美味そうだな、とぼんやりと考えていた時だ。
「…どうだった?」
近づいてきた気配にボクは振り返らずに尋ねる。
「はんっ、どうだったもなにも、めちゃくちゃ辺り警戒してたぞ、あの女。誰も近づけさせないってくらいにな。オレ達どころか動物も近寄らねーよ、あんなの」
「当然。私達の存在を知ったのだから」
2人はけっこう離れたところから見ていたようだ。
ヨルの耳はボクの目くらい性能がいいからね。
「わざわざお疲れさん」
ボクは振り返り、2人を見た。
「ったく自分で行きゃいいだろーが。そんな便利な目持ってんだし」
上着を腰に巻き、黒の短髪で左側だけオールバックの髪型、サングラスをかけたこの男は紫クロハ。
「同意。私達が様子を見に行ってもなにもならない」
短い着物を着た、金の短髪で長めの前髪が右分けのこの女は紫アゲハ。
「ボクが行ったらアサがうるさいからね。そういう報告を聞くだけで十分だよ。ヨルの観察報告を聞くだけで…」
直接見れなかったのは残念だけど、やっぱり怯えてた。
ヨルは怯えてた。
想像するだけでくつくつと笑いが込み上げてくる。
「はん、悪趣味な奴。とんだいじめ屋だな」
「クロハも他人事だと思ってんの? 無自覚ほど恐ろしいものはないね」
「はぁん?」
「口答えしないで、ボクの指示に従っていればいいんだよ。所詮、キミらはアサの部下だ。アサのパートナーであるボクの言うことも、当然、聞くよね?」
クロハがキレやすいのは知ってる。
だからわざと言ってやった。
思った通り、青筋を立ててボクを睨んできた。
ポケットに手を入れて仁王立ちのまま殺気立っている。
ボクは嘲笑を浮かべ、ヨルの練習台にしてやろうかな、と考える。
クロハの足下に咲いていた花が枯れる。
それから次々と雑草が茶色に項垂れていった。
「兄貴」
アゲハはクロハを止めようと背後から近寄ろうとするが、クロハはボクを睨んだまま右腕で制した。
「黙ってろアゲハ。ちょうどいい、一度この女とじっくり話し合いたいと思ってたところだ。どっちが上かってのもな! アサより下なのは認める。だが、てめーがオレ様より上なのは死んでも認めるか!」
「じゃあ死になよ。アサには、「反抗されたから殺した」とでも伝えておくから」
両腕を左右に伸ばし、身に纏う暁の外套の袖から鉤爪を取り出した時だ。
ボクとクロハの間に赤い蝶が飛んできた。
「「!!」」
ボク達は同時に動きを止めた。
「やめぬか」
「アサ…」
一気に戦意を失ったクロハは振り返り、名を呟いた。
アサはクロハの横を通過する前にその肩を軽く叩き、ボクの隣に並んだ。
「ワシが飛んでいる間に…」
アサは呆れたようにため息をついた。
「でも、ヨルにはなにもしてないよ」
「されては困る」
そう言い返され、ボクは目を細めた。
アサは断崖の下を見て言葉を続ける。
「予定通り任務を行う。おヌシのストレスはそれで発散しろ」
「…ああ」
それで全部発散できればいいんだけど。
アサが先に断崖から飛び降り、ボク、クロハ、アゲハの順番に続いた。
ボクの目はあまり夜目がきかないから、夕闇が訪れる前に全部片付けてやる。
.
あれから6日が経過した。
ボクは向かい側の切り株に座り、じっとその様子を見つめるがアサは印を結んで目を閉じたままピクリとも動かない。
アサの口元に手を近づけてみる。
一応息はしているようだ。
退屈過ぎて、どうせ見張りはゼツがやってくれているのだとその場から少し離れ、近くの断崖から付近の小さな村を見下ろした。
もうすぐ夕方だ。
買い物へと出かける主婦、気紛れに外を出歩く男、畑仕事から帰ってきた老夫婦、帰路を急ぐ子供などが見える。
ボク達が始末屋をやっていた時代では見たことがない光景だ。
あの子供は美味そうだな、とぼんやりと考えていた時だ。
「…どうだった?」
近づいてきた気配にボクは振り返らずに尋ねる。
「はんっ、どうだったもなにも、めちゃくちゃ辺り警戒してたぞ、あの女。誰も近づけさせないってくらいにな。オレ達どころか動物も近寄らねーよ、あんなの」
「当然。私達の存在を知ったのだから」
2人はけっこう離れたところから見ていたようだ。
ヨルの耳はボクの目くらい性能がいいからね。
「わざわざお疲れさん」
ボクは振り返り、2人を見た。
「ったく自分で行きゃいいだろーが。そんな便利な目持ってんだし」
上着を腰に巻き、黒の短髪で左側だけオールバックの髪型、サングラスをかけたこの男は紫クロハ。
「同意。私達が様子を見に行ってもなにもならない」
短い着物を着た、金の短髪で長めの前髪が右分けのこの女は紫アゲハ。
「ボクが行ったらアサがうるさいからね。そういう報告を聞くだけで十分だよ。ヨルの観察報告を聞くだけで…」
直接見れなかったのは残念だけど、やっぱり怯えてた。
ヨルは怯えてた。
想像するだけでくつくつと笑いが込み上げてくる。
「はん、悪趣味な奴。とんだいじめ屋だな」
「クロハも他人事だと思ってんの? 無自覚ほど恐ろしいものはないね」
「はぁん?」
「口答えしないで、ボクの指示に従っていればいいんだよ。所詮、キミらはアサの部下だ。アサのパートナーであるボクの言うことも、当然、聞くよね?」
クロハがキレやすいのは知ってる。
だからわざと言ってやった。
思った通り、青筋を立ててボクを睨んできた。
ポケットに手を入れて仁王立ちのまま殺気立っている。
ボクは嘲笑を浮かべ、ヨルの練習台にしてやろうかな、と考える。
クロハの足下に咲いていた花が枯れる。
それから次々と雑草が茶色に項垂れていった。
「兄貴」
アゲハはクロハを止めようと背後から近寄ろうとするが、クロハはボクを睨んだまま右腕で制した。
「黙ってろアゲハ。ちょうどいい、一度この女とじっくり話し合いたいと思ってたところだ。どっちが上かってのもな! アサより下なのは認める。だが、てめーがオレ様より上なのは死んでも認めるか!」
「じゃあ死になよ。アサには、「反抗されたから殺した」とでも伝えておくから」
両腕を左右に伸ばし、身に纏う暁の外套の袖から鉤爪を取り出した時だ。
ボクとクロハの間に赤い蝶が飛んできた。
「「!!」」
ボク達は同時に動きを止めた。
「やめぬか」
「アサ…」
一気に戦意を失ったクロハは振り返り、名を呟いた。
アサはクロハの横を通過する前にその肩を軽く叩き、ボクの隣に並んだ。
「ワシが飛んでいる間に…」
アサは呆れたようにため息をついた。
「でも、ヨルにはなにもしてないよ」
「されては困る」
そう言い返され、ボクは目を細めた。
アサは断崖の下を見て言葉を続ける。
「予定通り任務を行う。おヌシのストレスはそれで発散しろ」
「…ああ」
それで全部発散できればいいんだけど。
アサが先に断崖から飛び降り、ボク、クロハ、アゲハの順番に続いた。
ボクの目はあまり夜目がきかないから、夕闇が訪れる前に全部片付けてやる。
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