26:表裏の舞台
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開始されると同時に水波は水魔絃を出現させ、刺突は指の間に細長い針を構えた。
刺突は水波の水魔絃を見切りながら避けていく。
水波も針を投げられながらも水魔絃を操りながら避けていった。
動きも軽やかで、舞っているようだ。
当たらないように注意を払っているうえ、相手の動きを先読みしようとする。
「ひとついい?」
「あ?」
「銀色の血を飲ませた女の目的がなんなのか知ってる?」
戦いながらも大胆なことを聞くね。
「オレ達はただ優勝しろって言われただけだ。それ以上は言えねえよ。こっちも命が惜しいからな。なんだ、知らなかったのか」
水波は右手を伸ばし、水魔絃を真っ直ぐに飛ばす。
刺突はジャンプして避け、直角に曲がって追ってくる水魔絃を宙で体をひねらせてかわした。
「まるでゲームだ。オレ達は使い捨ての駒と言っていいだろ」
「じゃあなんで血を飲んだの?」
「てめーだって同じなはずだ。力が欲しかった。それだけのこと。優勝してあの女から解放されたら、オレは復讐してやるんだ。音隠れの長に」
「……………」
なにを考えたのか水波の動きが一瞬止まった。
「!」
そこを狙った刺突は針を飛ばし、4本の針は水波の右太ももに突き刺さった。
「うっ!」
水波はその場に片膝をつく。
すぐに針を抜いたが、立ち上がる様子はない。
「その針には毒が塗ってある。じきに体内を巡り、苦しい死を迎えるはずだ」
「…っ、がふっ」
速効性なのか、水波は胸を抑え、その場に血を吐きだした。
もう数秒ももたないんじゃないか。
そう思った時だ。
顔を上げた水波の顔は不敵に笑っていた。
「血を飲んだくせに…、この程度なの?」
そう言って水波は水を吐きだした。
その水の中には濁った色をした毒が混ざっている。
それを見た刺突は理解した。
「体内の毒を体内の水と一緒に吐きだしたか」
水波の胸には水魔絃が繋がっていた。
自分の水分も操れるのか。
「ちょっと脱水気味になっちゃうけどね」
水波は口元の血と水を手の甲で拭い、立ち上がる。
それから胸の水魔絃を抜いた。
「そうか…」
刺突は懐から、先程の銀の針とは違う金の針を取り出した。
「見せてやるぜ、“血”が与えてくれた力ってのを」
「…あーあ…」
ボクはため息をついた。
予想通りというか、あっけないものだ。
ヨルみたいに、隠してた大技で大逆転ってしてほしかったところだけど。
大体、刺突はもともと飛段か角都の対戦で出すはずだったのに。
「水波!」
セキが叫ぶ。
水波は針だらけで、いつ倒れてもおかしくない状態だ。
大人しく負けておかないと、サボテンにされちゃうよ。
「うぅっ!」
唸りながら右手の水魔絃を飛ばす。
だが、刺突が手に持った金の針をかざすと、水魔絃は引き寄せられるかのようにその針にピタリとひっついた。
水波は「また…」と舌を打つ。
刺突は「くくっ」と笑う。
「もうわかっただろ? この針はチャクラを磁石みたいに引き寄せる特別製だ。自分のチャクラも吸われちまうから忍からは滅多に愛用されない代物だが、オレは違う。制御ができるからな」
1本の金の針が投げられる。
水波は歯を食いしばって右横に飛ぶが、針もその方向に曲がり、
「いっ!」
水波の右肩に刺さった。
抜こうとつかむが、
「うあああ!!」
いきなり針が熱を帯び、水波は手に火傷を負った。
「ちなみにオレの五大性質は“火”だ。そのチャクラを纏わせて飛ばすとそういうこともできる」
「じゃあ…、相性が悪いわね」
水波は右手に水を纏わせ、針を引き抜いた。
それから刺突に向かって突っ込む。
「馬鹿かおまえ!」
刺突は8本の針を飛ばした。
水波は顔以外正面で受けてしまうが、足を止めない。
「忍なら、一発で相手を仕留めなさいよ」
針に熱が帯びて水波に激痛が襲いかかるが、コブシを握りしめ、
ゴッ!
「ぐっ!」
その右頬を殴りつけた。
「ほら、かかった」
ほくそ笑んだ水波の右手の水魔絃は、刺突の体に繋がれていた。
捨て身で直接触れて繋いだのだろう。
「く…!」
刺突は体を動かそうとするが、水波に自由権を握られているため震えることしかできない。
「がはっ!」
刺突の口から水が溢れ出た。
水波の目が冷徹になる。
「死になさい」
ド!!
「…え?」
水波の両脚と腰と両腕に数百本もの針が突き刺さった。
「ぐははっ」
刺突は水を吐きだしながら笑う。
水魔絃が外れ、水波はその場に倒れてうずくまった。
刺突は口元の水を袖で拭いながらそれを見下ろす。
「逆転された気持ちはどうだ? あ? 惜しかったな」
あの戦いの間、地面に金の針を仕掛けていたか。
いや、じっと見てたけど、そんなヒマはなかったはずだ。
なら、この大会の間に仕掛けておいたのかもしれない、この時のために。
「やっぱり、相手の術までは制御できねえようだな。あの人が言った通りだ」
ボクに感謝するべきだよ。
「う…」
「わかっただろ? 殴られたんじゃねえ。殴らせてやったんだ。その方が油断しやすいかと思ってな」
刺突は殴られて痣が出来た頬を擦り、金の針を取り出した。
今度こそトドメを刺す気だ。
金の針に熱が帯びる。
「一発で仕留めてやるよ。忍らしくな」
狙いを水波の頭部に定め、投げつけた。
ボクは思わず「え?」と間の抜けた声を出してしまった。
会場内の観客達も唖然としている。
刺突と水波の間にヨルが割り込んできたのだから当然だ。
ヨルは火傷覚悟で水波に向けられた針を素手でつかんでいた。
水波も驚いた顔でヨルを見上げる。
「ヨル…」
ヨルはつかみとった針をその場に投げ捨て、刺突を睨む。
「もう水波は動けない。勝負はついただろ」
刺突も睨み返し、「ふざけるな」と小さく言い、懐から右手の指に金の針を挟んで取り出した。
「ついてねーよ! そいつはまだ死んでねえ! そこどけ!」
刺突が構えた時だ。ヨルは素早く右翼の夢魔をつかみとり、刺突の喉元に突き付けた。
「ぐ…」
「再起不能で終了だ。トドメを刺す必要はねえ」
「っ!」
刺突が唸ると、地面から針が飛びだした。
だが、飛び出したそれはヨルの一振りですべて叩き落とされてしまう。
「!?」
「てめーはそんなに血の夢が見たいか」
朱色に染まったヨルの瞳を見た刺突は唾を飲み込み、額に汗を滲ませてたじろいだ。
鬼を見るような怯えた目で。
ヨルのすぐ傍らにヌマチが煙に巻かれて現れ、手を挙げた。
「反則です! この対戦は自動的に音隠れ・刺突の勝利となります! また、反則を犯し、その防止ため、##NAME2##ヨルの身を拘束させていただきます!」
ヌマチの背後に別の忍が2人現れる。
飛段とセキも急いでステージに上がってきた。
セキは水波に駆け寄り、飛段はヌマチに向かって怒鳴りだす。
「ふざけんな審判! 止めただけじゃねーか! それに勝負はもうついてたんだろォ!?」
今にもつかみかからんとする勢いだ。
ヌマチは平然と言い返す。
「勝負の決着は有利になった者が決めることです。対戦中に他の者が割り込めばそれを妨害と言います。もし##NAME2##ヨルが刺突を殺していたら、先程の勝利も取消になっていたでしょう」
「てめ…っ」
まるで脅しだ。
会場内はブーイングの嵐だ。
「ふざけんなコラァ!」
「なに勝負の邪魔してんだ!」
「忍の風上にもおけねえ!」
飛段は観客席をギロリと睨みつけ、怒りの矛先をそっちに向け、背中に携えた三連鎌をつかみとろうとした。
「てめーらァ!!」
それを止めたのは、ヨルの手だった。
右肩をつかまれた飛段はヨルに振り返る。
「飛段、やめろ」
「ヨル…」
飛段は落ち着きを取り戻す。
ヨルは夢魔を消すと、ヌマチに振り返って両腕を差しだした。
別の2人の忍はヨルに近づき、その両手首に手かせをかける。
術を出さないようにするためか、鉄の手かせには封印用の文字まで書かれていた。
「ごめん…。あたしのせいで…」
水波は痛む体で起き上がり、セキに肩を貸されながら謝った。
ヨルは薄笑みを浮かべて言う。
「オレが勝手にやったことだ。お互い協力者なんだ。それに、おまえに死なれると目覚めが悪い」
それから飛段に振り返り、申し訳なさそうに笑った。
「悪いな、角都もいねーのに…」
そうだ、角都もいなくなって水波も負けた今、もうチーム“ジャシン☆”に負けは許されない。
それでも飛段は気にしてないように振る舞い、コブシで軽くヨルの頭を叩いた。
「とっとと2勝してくっから、てめーは檻ん中で頭冷やしてろ、バァーカ」
ヨルは「おう、頼んだ」と笑みを返し、背後の忍に背を押され、階段を下り、会場から出て行った。
「ハァー、しゃーねーか。おまえら、下りてろ。次、オレだから」
「飛段さん…」
セキは飛段の心配をしながら、水波をつれて階段を下りていった。
「優勝したら、ヨルと角都迎えに行ってやらねーとなァ」
やっぱ限界。
ボクの苛立ちも、もう限界。
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