悪党は、黒猫を追います。
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ドンッ!!
「!!?」
敵襲かと思い、勢いよく1段目のベッドから飛び起きる姫川。
枕の下に隠した銃に触れたが、傍に立つ人物を見るなり脱力した。
「……何してんのおまえ」
「仕事だ、起きろ」
「普通に起こせよ…;」
神崎の右手には割れた風船、左手には画鋲があった。
よほど大きく膨らませていたのだろう、耳には耳栓をしていた。
風船の破裂音を銃声と錯覚した姫川は、片膝に額をつけてしばらく動けずにいた。
(前のオレなら、誰かが近づいただけでも起きれたっつーのに…)
安心しきっている証拠だ。
連れてこられた当初なら、ドアが開く音や足音、気配にも敏感に感じて飛び起きたというのに。
(心地良くなってんのかねぇ、この場所が…。…もう3ヶ月が経ったからか…)
「今度は耳元で割るぞ」
「起きるから風船膨らませるな。なんでそんなもん持ってんだ」
プゥー、と新しい風船を膨らませ始めた神崎を止める。
自室で身支度を終えた姫川は、神崎と共にリビングにやってきた。
そこで違和感に気付く。
「…メンバー少なくねぇか?」
そこにいるのは、テレビでニュースを見ている陣野と相沢と夏目、テーブルでノートパソコンを起動している古市とその肩にベル坊、雑誌に目を通している邦枝と花澤。
いないのは、大森、梅宮、飛鳥、谷村、東条、城山、男鹿だ。
「男鹿は赤星さんと話し合いに行ってるっス」と古市。
「寧々達は遠征」と邦枝。
「虎と城山は里帰りだ」と陣野。
姫川が「里帰り?」と尋ねると、相沢と夏目はテレビ画面を見ながら答える。
「東条さんにも、世話になって過ごした家があるから。1ヶ月に数回は様子見に帰ってるぜ」
「城ちゃんは表育ちで、残してきてる兄弟達が気になるみたい。兄弟も多いし、寂しがってるらしいから」
「……それぞれ家があるんだな…」
「……………」
独り言のように呟く姫川を、神崎は疑問の眼差しで黙って見つめた。
姫川には帰る家がないのだろうか、と。
「―――で、仕事って?」
話を切り替え、姫川は古市に振る。
古市はキーボードを打ち込んでノートパソコンを閉じたあと、テーブルに置いていた依頼書を手に取った。
「常連さんからの依頼。ボス探しです」
「ダッ」
「?」
「また逃げ出したのかよ」
以前も同じ依頼を受けたことのある神崎は肩を落とした。
把握できていない姫川は古市が差し出した依頼書を手に取り、内容を確認する。
「ボスって…―――」
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