悪党共を、救出します。
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工場のシャッターをぶち破り、男鹿・神崎・東条と、夏目・城山・陣野・相沢を乗せた2台の車が堂々と侵入する。
騒ぎを聞きつけ、麻薬密売組織の部下達が武器を手に集結してきた。
「オレと神崎と東条が救出に向かう」
「てめーらは援護しろ」
男鹿と神崎は拳銃の弾丸を装填し、東条はコブシを鳴らした。
「了解」
夏目・城山・陣野・相沢はそれぞれ拳銃を片手にドアから飛び出し、撃ちまくる。
当たった者は糸が切れたかのようにその場に倒れた。
「ラミア特製の麻酔弾。しばらくは体が痺れて動けねえはずだ」
その効果を見た男鹿は説明口調で呟く。
「よっと!」
相沢は安全ピンを外した手榴弾をフロアの中心に投げつけた。
「うわ!!」
「離れろー!!」
近くにいた部下達は宙に飛んでくるそれを見て蜂の巣をつついたように手榴弾から離れる。
ドン!!
殺傷力はそれほどないが、床は円形に焦げて煙を上げた。
辺りは煙幕に包まれ、その隙に男鹿は『ゼブルドラッグ』を口に含んだ。
ガリッ、と口の中で噛み砕くと同時に3人は動き出す。
男鹿を先頭に煙の中を迷うことなく突っ切り、奥のドアへと向かった。
「待て!!」
ドアの付近にいた部下が銃口を男鹿に定めて放つ。
今の男鹿の目には、音速を超える弾丸ですら見切れた。
肌に直撃するまで数ミリのところで焦ることなく紙一重にかわし、腕を伸ばして撃ってきた部下の首をつかみ、壁に叩きつけた。
「が…っ!!」
首がへし折られそうな握力だ。
「古市どこに隠した…!?」
「ひ……っ」
鬼人を思わせる男鹿の表情に、部下は恐怖で身を震わせた。
*****
「イシヤマファミリーが攻めてきました!!!」
「何!!?」
ボスは耳を疑った。
古市と姫川をアジトに連れてきてから1時間も経過していない。
なぜこの場所がわかったのか泡を食った。
「男鹿…」
男鹿が来てくれたことに喜ばないはずがなく、古市は口元を綻ばせた。
「通信手段はなかったはずだ!! クソが…!! こいつら連れてけ!! まだ人質の価値は…」
「もうねぇよ」
勢いよく立ち上がった姫川はボスの首に腕を回し、その首元に細長いナイフを突きつけた。
姫川が座っていた場所には、姫川の自由を奪っていたはずのロープがあった。
「もう人質じゃねえからな。……銃を下ろせ」
拳銃を構える部下達に低い声で命令する。
「お…っ、下ろせてめぇら!!」
ボスが怒声を上げ、部下達は互いの顔を見合わせ拳銃を下ろした。
「な…、なぜ…、武器は取り上げたはず…っ」
「用心は念入りにしたほうがいいぜ?」
薄笑みを浮かべる姫川はもう片方に持っているものを見せつけた。
自分の色眼鏡だが、ツルの右部分が取れている。
細長いナイフは、そこから抜き取った仕込みナイフだった。
「そんなのいっつもかけてるんですか;」
「オレは慎重なんだよ、古市。そこのおまえ、古市のロープを解け」
ナイフは今ボスの首元に使用として手放せないからだ。
指名された部下はボスの命がかかっているため、渋々命令をきく。
解放された古市は、ロープで縛られて出来た生々しい痕を見て顔をしかめた。
「うわ…、痕になってる」
「気にしてねえで行くぞ。オレ達の武器は? ケータイも返して貰おうか」
その場にいる部下達が持っていたようだ。
姫川のスタンバトンと古市の拳銃が返却される。
2人のケータイもだ。
「おまえ拳銃持ってるなら使えよ;」
「得意じゃないんですよ。あんな至近距離だったら逆に撃ちにくいですし;」
デパートの時のことを話し、古市は姫川の背後に回ってドアを開けた。
「姫川先輩!」
「おう」
姫川はボスを人質に部屋を出て、部下達がついてこないようにドアを閉めて鍵をかけてから古市とともに廊下を渡る。
「それに殺傷力はねーんだろ? もし何かが飛び出してきたら構わずに撃て」
「は、はい…」
古市は装填の確認も済ませ、姫川とボスの先頭に立って辺りを警戒しながら進む。
奥に非常口のドアがある。
そこからなら脱出できるだろう。
「とにかく、まずは男鹿と連絡を…」
廊下の中心まで来てケータイを取り出そうとしたところで、異変は起きた。
「…!?」
古市の心臓が、大きく脈打った。
「ぐ……ッ」
「古市…?」
「な…ん……」
古市は胸の中心をつかみ、その場にガクリと膝をついた。
「古市!!」
息は荒く、肌は熱を帯びて紅潮していた。
姫川は先程打たれた薬の存在を思い出し、ボスに尋ねる。
「オレ達に何を打った…?」
「ククク…。さぁな」
「てめ…っ、!?」
続いて、姫川にも異変が起きた。
「チッ」
「ぐっ!!」
倒れる前に、ボスの延髄に肘鉄を打ち込んで気絶させてから壁に寄り掛かる。
「く…っ」
この状態なら形勢逆転されていただろう。
人質を失うのは痛いが、自由を取り戻した人質に好き勝手されるよりはいいと判断した。
「う…」
鼓動は苦しいほど高鳴り、体は熱く、息をするのさえ辛い。
「姫川…先輩……」
「大丈夫か…、古市…」
なんとか立ち上がろうとする古市だったが、壁に寄り掛かるので限界だ。
敵がくれば絶対絶命。
姫川は打開策を考えようとするが熱に溶けてしまう。
「く…」
古市は拳銃を構える。
いつでも敵が攻めてきても迎え撃てるように。
それでも、相手が複数なら意味がないということはわかった。
古市にもわかっているはずだ。
きっとどこかで男鹿が早く来てくれることを期待しているのだろう。
「「!!」」
眩暈まで覚えた時、ドアが開かれた。
ドン!
古市は反射的に銃を撃った。
「「…あ」」
「た…すけに…」
言いかけてドアの前に倒れたのは神崎だ。
発砲されたのが麻酔弾だったため、体が痺れて動けない。
「神崎先輩―――っ!!」
その後ろから男鹿と東条が入ってくる。
「古市! …神崎、何やってんだ」
「古市…ころす…」
「すみまっせんでした!!」
救出に来てくれたのに帰ったら命の危機だ。
「おまえら、どうした!?」
東条が駆け寄り、立つこともままならない姫川と古市に尋ねる。
姫川は注射器で打たれたところに触れて答えた。
「敵に、妙な薬を打たれちまった…」
おかげでこのザマだ、と自嘲する。
「だいじょーぶなのか」
「その状態で言われてもな」
うつ伏せのまま言葉をかける神崎に姫川はつっこんだ。
「……帰るぞ」
気絶しているボスを見下ろした男鹿は、古市を背負い、東条は神崎と姫川を肩に担いで男鹿とともに踵を返した。
男鹿達が来た道は返り討ちにあった部下達が転がっていた。
途中で廊下の窓ガラスを割ってそこから脱出する。
しばらく走ると、夏目が乗った車が待機していた。
男鹿は後部座席に、神崎・姫川・古市を乗せ、東条は無理やり乗り込む。
「狭い!! 狭いですっ!!」
「我慢しろ」
訴える古市に東条は小さく言った。
男鹿は助手席に乗り、車を出してもらう。
「陣野と相沢と城山は?」
「先に避難した。はいコレ」
夏目が手渡したのは、四角い箱型のスイッチだ。
「一通り暴れたあと、短時間でセットしたから。失敗したらごめんね?」
「ねーよ。“アイツ”のとこの爆弾はわかりやすくて取扱やすいからな」
悪漢の笑みを浮かべた男鹿は、工場の敷地内から出たことを確認してからスイッチを躊躇いもなく、カチッ、と押した。
ドォンッッ!!!
背後から聞こえる爆発音。
窓から外を見ると、爆発して炎上する工場が見えた。
助手席の窓を開けた男鹿は使い終わったスイッチを投げ捨てる。
「世話になった礼は返した」
そう呟いて窓を閉めた。
*****
翌日、表の新聞ではその事件が記載された。
アジトである工場は、灯台下暗しと計ったのか表付近に位置していたため、警察も動いたのだ。
爆発した工場から焼け焦げた大量の構成員とボス、そして麻薬密売組織の証拠が見つかり、逮捕されたとか。
奇跡的に死者はゼロである。
だがこの日、イシヤマファミリーでは別の事件が発生していた。
「「「「「……………」」」」」
リビングの壁に画鋲で貼り紙が貼られていた。
貼り紙にはマジックペンでこう書かれてある。
“世話になった。探すな。姫川”
ほとんどのメンバーがキョトンとした顔でその紙を見つめていた。
なぜかその中に、神崎の姿は見当たらなかった。
.To be continued