けじめ、つけます。
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「廊下を走らないでください」と看護師にそう注意されながらも神崎の足は速度を落とさなかった。
蓮井も看護師に、「すみません」と返し、そのあとを追いかけている。
目的の階にたどりつき、近づいていくと騒ぎも近くなってきた。
神崎は半開きになった扉の前に立ち、その光景を目にする。
「放せコノヤロー!!」
ベッドの上で数人の医者と看護師に取り押さえられかけている、必死な姫川がそこにいた。
思うように息ができず、勝手に呼吸器を外して放り投げ、さらには点滴もムリヤリ引き抜いた。
「姫川さん! 落ち着いてください!!」
「鎮静剤持ってきて! 早く!」
「ベルトも持ってこい!!」
医者と看護師とは思えない物騒な声が飛び交っている。
「神崎が命狙われてんだぞ! 落ち着いてられるか! 神崎はどこだ!? 神崎ぃ―――!!!」
他の患者も何事かと、こちらを覗いていた。
目が覚めて早々の暴れっぷりに、医者達も手がつけられなかった。
「坊っちゃま…、お目覚めに…。…!」
その様子にホッと安堵した蓮井は、ふと神崎の顔を見て驚いた。
こちらに来るまで顔に貼りついていた鬼の仮面が、ボロボロと音を立てて剥がれていく。
ペシッ!
「痛っ!」
神崎はベッドに近づき、その下にあったスリッパで姫川の額を叩いた。
「…! 神崎…!」
身内も現れ、大人しくなった姫川に、鎮静剤を打とうとした看護師はピタリと止まり、医者達もベッドから下りて姫川から離れた。
「あ…、神崎…! 大丈夫か!? 聞けばオレ、2週間近く寝てたらしいじゃねえか! あのヘビヤロウは!?」
銃弾を2発も撃ちこまれ、ずっと寝込んで静かだった男が起きれば舌をまくしたてている。
神崎は呆れ、その口を右手で塞いだ。
「喋るな…。他の患者に迷惑だろ」
姫川はその手首をつかみ、自分の口から外す。
「けど…!!」
まだ喋ろうとする姫川に、神崎はその体を強く抱きしめた。
「傷が開いちまうだろ…! オレのことなら気にすんな。もう終わったんだ…」
「神崎…」
「もっと自分大事にしろよ、バカが…! もうちょっとオレのことも考えてくれよ…!」
姫川は苦しいほど強く抱かれ、肩が濡れるのを感じた。
「うぅう…っ!」
この数日、姫川がいない暮らしを痛感した神崎は、今腕におさまっている温もりに涙が止まらなかった。
姫川は、こんなに大泣きした神崎を見るのは、初めてだった。
まさか、数時間前まで自分を撃った男を徹底的に潰してきたとは思ってないだろう。
蓮井も我が目を疑っていた。
「……うん。…ごめんな。…次はちゃんと気をつけるから…」
姫川は口元を緩ませ、子供のように泣きすがる神崎の頭を優しく撫で、背中を擦った。
神崎の抱擁はきつく、首と腕が痛むくらいだが、心地がよかった。
傷口の痛みを忘れるくらいに。
.To be continued