けじめ、つけます。
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蓮井達に保護されてすぐさま病院に搬送された姫川は、病院に到着するなりすぐに手術室へと運ばれた。
赤いランプがついた手術室の前で、神崎はただひとり、どうすることもできない悔しさと、姫川を失ってしまうのではないかという恐怖を抱えたまま、座っていた。
両手を震えるほど強く握りしめ、いるはずのないと馬鹿にしていた仏や神に懇願する。
「…!」
視界に、黒い靴先が見え、顔を上げた。
蓮井だ。
相変わらず涼しい顔で神崎を見下ろし、背筋を伸ばして立っていた。
まるで自分の傍に姫川がいるかのような、そう思わせるほどの落ち着きぶりだ。
ただ黙ったまま、そこにいる。
思えば、姫川を搬送している時もそうだった。
主が死にかけていようと、パニックにもならずに冷静な対応をしていた。
「………なんで責めねえんだ? オレのせいで、あいつ…、撃たれちまったんだぞ…」
「……………」
「オレが油断したばっかりに…!」
「……………」
「なんでそんな落ち着いてんだ!!!」
沈黙を貫く蓮井に、募った苛立ちが爆発し、勢いよく立ち上がった神崎はその胸倉を血の付着したままの両手でつかんだ。
鼻息荒く蓮井を睨むと、蓮井は表情を崩さず、口を開く。
「……今回、竜也坊っちゃまが怪我を負われたのは、坊っちゃま自身が望まれたことです。それを冷静に受け止めたまでのこと…。もし、神崎様が坊っちゃまを弾避けにされたのなら私の態度も大きく変わりますが…」
「そんなことするわけ…!!」
「わかっております。―――冷たいと思われようとも、かまいません。執事の私が慌てふためいても仕方がないのですから…。それは伴侶であるあなたの役割…。ですから、私もけっして、あなたを責めません。慰めません」
「……………」
神崎の手が離れると、蓮井は襟を正し、ネクタイを締め直すだけですませた。
力なく再び腰を下ろした神崎は、ただ茫然と床を見つめていた。
蓮井の冷静さにあてられたおかげで、少し頭を冷やすことができた。
待つしかない。
扉の向こうはすべて、医者の腕と、姫川の気力にかかっているのだ。
(早く出てこい…)
たかが銃弾2発。
それで簡単に自分を置いてくたばる男ではないだろう、と。
それから数時間後、手術中のランプが消えた。
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