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「脇見、ケータイ、飲酒…。それはダメなのに、飲食運転はありなんだな…。不思議…」
交通法についてしみじみと考える姫川。
ペーパーで片手運転は困るので、神崎は姫川の口にポテトを運んでいる。
「停まって食えばいいじゃねーか」ともっともなことを言う二葉の言葉は聞いていない。
「……………」
運転する姫川を改めて見つめる神崎。
ハンドルを握る手つき、フロントを見るサングラス越しの目、速度を調節する脚。
同じ年齢とは思えないほど、普段より大人びて見える。
(運転する男ってカッコいい、とか女子が騒ぐけど、わからなくもねーな…)
「神崎、ポテトちょーだい」
「お…、おう…」
前を見ながら言われ、神崎は姫川のポテトをまた口に運ぶ。
渋滞中の海岸線。
突然、二葉が言いだした。
「―――トイレ行きたいっ」
神崎と姫川は同時に振り返り、「え」と顔が強張る。
二葉といえば、切羽つまった顔をしている。
ガマンのあまりなのか、やはり女の子なので恥ずかしいのか顔も赤い。
「さっきコンビニあったのに…!」
この渋滞ではUターンすることもできない。
神崎は急いで地図を広げる。
パーキングエリアはまだまだ先だ。
「漏れる~っ」
二葉がもじもじとし始めた。
新車を汚すわけにはいかない。
焦る姫川は頭を回転させる。
「…!」
はっと閃いた。
しかし抵抗の色が顔に浮かぶ。
「……………」
静かに、先程飲み終えたコーラのカップを見つめ、「オレ達あっち向いてるから」と二葉に差し出す。
「コロスぞ姫川ぁああっ!!」
当然、激怒する二葉。
惨事は免れた。
プライドの高い二葉が自分を保てたおかげだ。
決壊寸前でパーキングエリアに到着してトイレに走り込み、帰還後、とても清々しい顔をして戻って来た。
大人2人と子供1人を乗せたフェラーリは、ついに、目的の海へと到着する。
その頃にはもう夕方になっていて、浜辺を歩く遊泳客もまばらだ。
車を降りた3人は砂浜に足跡をつける。
「海~っ!」
二葉は靴を脱いで波打ち際まで走る。
「服びしょびしょにすんじゃねーぞー」
「ああ、疲れた」
運転した姫川は疲れてしゃがみこんでいる。
「おつかれ」
2人はオレンジ色に染まりゆく海と、足に伝わる小波の冷たさにはしゃぐ二葉を眺めた。
「はーじーめ―――っ」
無邪気な笑顔とともに手を振る二葉に、神崎は手を振り返す。その神崎の顔を見た姫川は、安心したような薄笑みを浮かべた。
「……連れて来てよかった」
「?」
神崎は言いだした姫川を見下ろす。
「最近仕事の方大変そうだったから息抜きにと思って…。二葉も癒しのひとつだな…」
「…おまえの方もどうなんだ、姫川。けっこう押し付けられてるんじゃねーのか?」
「仕事をくれてるんだ。逆に、感謝しねーと…。ま、今は休日を楽しもうぜ」
姫川は立ち上がり、伸びをし、靴を脱いでズボンの裾を捲ってから二葉のところへと向かった。
神崎も靴を脱いで裾を捲り、それについていく。
「おまえらっ、二葉様を置いてイチャイチャしてんじゃねーぞっ!」
二葉が浜辺に打ち上げられていたクラゲを投げつけてきたので、姫川と神崎もやり返した。
日が沈み、3人は車に戻った。
ダッシュボードの中に入れておいたタオルで濡れた足を拭く。
帰り道の海岸線。
行きの渋滞がウソだったかのように、帰りはスムーズだ。
疲れたのか、ゆりかごのように車に揺られた二葉は、安らかな寝息を立てて眠っていた。
それを肩越しに見た神崎は我が子を見るような笑みを浮かべる。
「はしゃぎ疲れたんだな…。姫川、おまえは寝るなよ」
「責任持って、ちゃんと家まで送り届けるって」
姫川はあらかじめ用意していた黒のシュガーレスガムを口に放りこんで噛んだ。
きついミントの味が口内に広がる。
これで眠気対策はばっちりだ。
「運転手として、ドライブは楽しめたか?」
「出だしは大変だったけどな」
2人は思い出し笑いをした。
神崎は、眠っている二葉をサイドミラーで一瞥してから切り出す。
「……姫川、路肩に停めろ」
「どうした?」
「…イチャイチャ、したいんだろ?」
「…!」
姫川はウィンカーを点滅させ、路肩に停める。
神崎はシートベルトを一度外して姫川に顔を近づけ、姫川もそれに応え、神崎の頬に右手を当ててキスをした。
神崎の口に、シュガーレスガムの苦味が移る。
「神崎…」
「なんだ…?」
「ガソリン…今なくなった」
「は!!?」
.To be continued