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休日の日曜日、姫川、神崎、二葉は自分達のマンションの前にいた。
姫川は不敵な笑みを浮かべるとともに、懐からなにかを取り出し、神崎と二葉に見せつける。
「運転免許、とりました」
「「おおーっ」」
印籠のように見せつけられたそれに、神崎と二葉は拍手を送る。
「車も買いました」
「「おおーっ!」」
手を差し出された方向を見ると、赤いフェラーリが停まっていた。
神崎と二葉は先程よりも大きな拍手を送る。
その頃、蓮井はマンション3階の自室のベランダからそれを窺い、「さすがでございます、坊っちゃま」と涙を流し拍手を送っていた。
姫川はフェラーリに近づき、助手席の扉を開ける。
「―――ということで、ドライブへ参りましょう」
紳士的なお誘いをする姫川だったが、神崎達の方へ顔を向けた時には、神崎と二葉は手を繋いで背を向け、反対の方角へと歩いて行く。
「今日は公園で遊ぶかー」
「ブーランコブーランコ♪」
温かい父子のような2人に、姫川は早速車に乗って先回りし、2人の行く手を阻み、窓を開けて怒鳴る。
「待てコラ、そこの幸せ親子!! せっかく免許とったってのに…」
「車がたとえ1億のフェラーリだろうが、運転手はペーパーだろが。安心して乗る奴なんて誰もいねーよ! つうか若葉マークどうした!?」
「フェラーリにふさわしくない」
「貼れよペーパー!!」
バンッ、とフロントに若葉マークを貼り付ける神崎。
「せめてあと1年練習してから誘いな」
そう言って二葉とともに車を通過しようとする。
「1年も待てるかよ! なんのためにオレが免許取ったか教えてやろうか!? 神崎とイチャイチャデートしたいからだよ!」
大声で言うことではない。
神崎は無視して行こうとするが、
「今回は家族旅行のノリで行こうと、親父にムリ言って休みまでもらったのに…、一番初めに乗せるのは神崎だって心に決めてたのに…」
ぐずりだした姫川に、神崎は足を止め、大きなため息をついた。
「……だから二葉も呼んだのかよ…」
「そのためにチャイルドシートもつけたぜ」
後部座席にヒヨコ柄のチャイルドシートが取り付けられていた。
怠りのなさに神崎は感心したが、
「てめー二葉様をバカにしてんだろっ!!」
子供扱いされ、二葉が怒る。
「神崎ぃ~、マジで乗らねえの? 乗ってくれねーの? 乗るのはオレの上だk」
「乗ってやるから!! 二葉の前でなに言おうとしてんだ!!」
アダルトな発言をされる前に神崎が遮るように怒鳴り、仕方なく姫川に付き合うことにした。
二葉をチャイルドシートに乗せ、固定されているか確認し、ちゃんとシートベルトをさせたあと、助手席に乗り込む。
「…で、どこ連れてってくれるんだ?」
そう言いながら、神崎もシートベルトを締める。
「そうだなー…。二葉、どこがいい?」
「ハワイ」
「わざと言ってんだろこのガキ」
軽くあしらい、姫川は「じゃあ、海で」と目的地を確定させ、アクセルを踏んでハンドルを切った。
ガンッ
早速、電柱の横に設置されていたポリバケツに当たってしまい、神崎と二葉は命綱であるシートベルトを同時にギュッと右手で握りしめた。
姫川の危なっかしい運転に冷や冷やしながら、神崎は「ナビくらいつけろ」と地図を広げる。
「あ、次、左の信号曲がれ」
「え?」
「よそ見すんな! って過ぎたぁっ!」
「もっと早く言えよ!」
道を間違えるトラブルも発生。
フェラーリは普通の車道を走っていたが、今日は日曜日なので出かける車が多い。
「日曜日に出かけるもんじゃねえな;」
一時的に渋滞につかまり、そこを抜けたからといって油断してスピードを上げると、白バイに止められてしまった。
面倒なのはそこからだ。
路肩に寄せて停められたあと、姫川は車から降りて白バイ隊員に免許証を見せ、そこからずっともめていた。
他の白バイ仲間も呼ばれそうな雰囲気だったので、心配になった神崎は助手席から下り、何事かと2人に尋ねる。
「神崎! こいつオレが人の免許証盗んだとか言ってんだぞ!」
神崎は姫川の免許証を改めてじっくりと見る。
ノットリーゼントバージョンだ。
「写真撮る時も気合入れて撮れっ!!」
「だって蓮井が、うわっ、なにすんだ!」
つっこみとともに姫川のリーゼントをぐしゃぐしゃに崩し、サングラスも取って白バイ隊員に見せつける。
酷く驚かれ、謝られた。
リーゼントを下ろされた姫川はようやく解放されたというのに、不機嫌な顔で運転を再開する。
「一~、おなかすいたぞ」
もうすぐ昼だ。
二葉が昼食を求めると、
「あ、そうだ」
突然、姫川は思い出したように言った。
「オレ、車で一度やってみたかったことがあったんだ」
「やってみたかったこと?」
神崎は首を傾げる。
姫川が立ち寄ったのは、ファーストフード店・“ワック”だ。
駐車場ではなくドライブスルーに入る。
「とことんお坊っちゃんだなー。ドライブスルー未経験者って(笑)」
神崎は小馬鹿にするように笑った。
「神崎、注文よろしく。オレ『ビッグ』のセット。ドリンクはコーラ。」
外車なので、注文は神崎のいる助手席からしかできない。
「二葉は?」
「『ダブルチーズ』! ヨーグルッチ!」
二葉も注文する。
「ヨーグルッチはねえから、オレンジジュースな」
そう言って神崎は窓を開けた。
メニューとスピーカーが見えてくる。
“いらっしゃいませー”
スピーカーから女性店員の声が聞こえた。
「えっと、『ビッグ』のセッ…」
だが、神崎が注文を口にしようとしたとき、車はスピーカーの横を通り過ぎ、そのまま受取窓口まで来てしまった。
「「……………」」
神崎、二葉、店員はキョトンとしている。
「「注文スルーすんなっ!!」」
つっこむ神崎と二葉。
「え、ここで注文じゃねーの!?」
焦る姫川。
「あ、メニューどうぞ、ご注文おうかがいします…」
メニューを神崎達に差し出す店員。
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