暮らし始めた2人は?
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ちょっと料理に文句つけただけなのに神崎にブチ切れられた。
そのままオレも言い返したら、自分の部屋に籠られてしまった。
オレは扉をノックすることもなく素通りし、隣の自室に戻る。
きっと隣では枕を抱えてぐずっているか、オレの顔写真を枕に貼りつけてボコボコに殴っているか。
…隣室がちょっと慌ただしいので後者の方だろう。
枕じゃなくてサンドバッグを蹴っているかもしれない。
オレはため息を漏らし、隣の音が聞こえないようにテレビをつけた。
見たこともないドラマがやってる。
“オレを捨てないでくれっ!”
“私がいつまでも傍にいると思った? さよなら”
すぐにチャンネルを変えた。
ホラーを見たような気がして大量の汗が流れる。
どうしてこんな後ろめたい気持ちになってんだ。
ニュースを見よう。
“―――さんが恋人の●●さんと口論になり、包丁で…”
再び切り替える。
バラエティだ。
芸人が集まって悪態をつきあっている。
“嫁さんと喧嘩して?”
“明日には機嫌直ってるだろうと思って放っておいたら、翌朝実家に帰られましたわぁ。仰天して、僕、すぐに実家まで自転車飛ばして泣きつきました(笑)”
「(笑)じゃねーよっ(怒)」
テレビまでオレを攻めてくる。
他にも、離婚裁判所や、浮気彼氏を彼女がこらしめる内容の番組があった。
残すところは音楽番組か。
“キミが大事で大切で愛おしくて
ずっとこのまま一緒にいたいと思った
幸せも悲しみも半分こしていたかった”
「うわ、これもかよ…」
チャンネルを変えようと思ったが、手が止まる。
“忙しい日々
キミがいない半日は心細いけど
「おかえり」「ただいま」
そのやりとりでまた満たされる
不器用でも愛のあるキミのディナーを食べながら
今日の話を聞かせて
今日の話を聞いて”
「……………」
“そんな愛の繰り返しだと思ったのに
キミの幸せをとったことに気付かず
「おはよう」「おはよう」
もうそんなやりとりもできないんだね
キミが大事で大切で愛おしくて…”
テレビを見ている場合じゃなかった。
オレはテレビを消して立ち上がり、自室を出て隣室の扉をノックもせずに入った。
「え!?」
“幸せも悲しみも半分こしていたかった”
枕じゃなくてサンドバッグを抱きしめる神崎は、同じテレビを見ていたようだ。
共感できるところでもあったのか、驚いて見開かれた目が潤んでいる。
オレは神崎の手元からリモコンを取り上げてテレビを消し、サンドバッグから神崎を引き剥がしてその腕におさめた。
「な、なんだよ…っ」
「オレが悪かった…。悪かったよ…」
だから、どこにも行かないでくれ。
「……料理、もうちょっと上手くなるから…」
神崎の手がゆるゆるとオレの背中にまわってくる。
オレは神崎の頬に自分の頬を擦りつけた。
「いい。…おまえらしい味で…好きだ」
「……そうか…」
神崎は安心したように微笑んだ。
さっきの歌をダウンロードして、神崎と喧嘩した時に聴くことにしよう。
あの歌の曲名はなんだろうか。
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