オレ達、結婚しました。
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「あ、ホットドッグ食うか? 腹減っただろ」
姫川は持っていたビニール袋からホットドッグを取り出し、神崎に突きつけた。
神崎は素直にそれを受け取る。
「食うけど…」
「ヨーグルッチなかったからコーラ飲むか?」
「飲むけど…」
右手にはホットドッグ、左手にはペットボトルに入ったコーラ。
2人は堤防を歩きながら食べる。
「―――で、なんのためにオレに黙ってハワイに連れて来たか話してもらおうか」
ホットドッグを食べ終え、指についたケチャップを舐めながら神崎は改めて問う。
「結婚式」
姫川は短く答え、最後の一口を食べた。
「ふーん、知り合いのか?」
神崎はペットボトルを口につけてコーラを飲み、姫川はペットボトルの蓋を開けながら答える。
「オレ達の結婚式だ」
ぶふっ!!
「ぐあっ!? コーラが鼻通った…っ!!」
「なにやってんだよ」
姫川はポケットから紫色のハンカチを取り出し、コーラを噴き出した神崎の口の周りを拭う。
「いやいや、おまえこそなにしてんだよ!! 結婚式!!?」
「前回プロポーズしたろ?「結婚してくれ」って。日本はまだ同性婚に厳しいからな」
「だからって! ハワイって…」
行動が早すぎる。
夏目や城山どころかまだ両親に指輪の報告さえしていない。
相手の親は知っているのだろうか。
つっこみどころは満載だ。
「せっかくの休日なんだ。息抜きも兼ねて、な」
「最近オレ達休日らしい休日過ごしてなかっただろー」と肩を引き寄せ頬ずりする。
人目を気にした神崎は、姫川の顔面を手のひらで押して剥がした。
「…事前に報告してくれれば、オレだって…」
「サプライズv」
「……オレおどかすの好きだな、てめーは」
もうなにも言うまい。
このあと、2人はバスに乗り、昼過ぎまでハワイ旅行を楽しんだ。
ビーチでサーフィン、クルーザーでスクリュードラーバー、海を眺めながら昼食をとったあとは、街に戻ってホノルル巡り。
そして2人は、目的の結婚式場へと向かった。
教会は随分前から予約していた。
教会に到着した2人は、姫川があらかじめ用意していた正装に着替える。
結婚式らしく白のタキシードだ。
着付けを終えた2人は控え室で互いの姿を見て、しばらく見惚れる。
「…似合ってるじゃねえか」
「てめーが言うな」
姫川は髪を下ろし、一つに束ねていた。
今の姫川を見た100人の女性中、少なくとも9割の女性が「理想の結婚相手」と答えるだろう。
隣に立つのが申し訳なくなる。
だが、姫川は自ら神崎に近づいていく。
黙って見下ろされ、うつむいていた神崎は顔を上げて笑った。
「てっきり、ウェディングドレス着せられるのかと思った」
「バカ。これからオレは男であるおまえと結婚するんだぜ? 誤魔化しは一切なしだ」
その真剣な表情に、不覚にもドキッとする。
「まあ、プレイでやるかもしれねーけどな」
「さっきの「ドキッ」を返せっ。絶対土下座されても着ねえからなっ」
すぐに表情を崩した姫川の頬を軽く叩いた。
「……強引にここに連れてきたことは謝る。…だって、報告してマリッジブルーになってほしくなかったし…」
「てめーこそ、ばぁーか。てめーと結婚するのに憂鬱になるわけねーだろ。不安になることなんざひとつもねえ。これから先も相も変わらずずっと一緒だ。オレ達は。…そうだろ?」
「……ごめん、今キスしていい?」
抱きしめようとした姫川の腕をかわした神崎は、人差し指を姫川の唇に当てた。
「誓い用にとっとけ」
扉をノックされ、神父が2人を呼ぶ。
まもなく、結婚式が始まる。
*****
木製ベンチには蓮井が座っていた。
唯一の立会人だ。
手にはビデオカメラを持っていた。
教会の礼拝堂で2人は肩を並ばせ、神父の言葉に耳を傾ける。
『汝、姫川竜也は、この男神崎一を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?』
『誓います』
『汝、神崎一は、この男を夫とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?』
『ち…、誓います』
先程姫川が言った言葉をそのまま口にする。
その滑舌の悪さに姫川は笑いを堪えていた。
神父はそれを見て「んんっ」と軽く咳き込んでたしなめる。
指輪の交換も行われた。
互いの手を取り、先に姫川が神崎の左薬指に銀の指輪をはめ、続いて神崎も姫川の左薬指に金の指輪をはめた。
照れくささに、神崎は、ふ、と笑い、つられて姫川も笑う。
『それでは、誓いのキスを』
神崎は蓮井のビデオカメラを気にしながらも、姫川と顔を見合わせ、キスをした。
特別なキス。
2人はその感触と味を脳裏に刻む。
「Please stay by my side forever」
姫川はそっと神崎の耳に囁いた。
英語はわからないが、伝えたいことを理解した神崎は、こくりと頷く。
「イエス」
2人の幸せを願い、教会の鐘が鳴り響く。
.To be continued