オレ達、結婚しました。
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目を覚ました神崎は、見慣れない真っ白な天井に目を丸くし、半身を起こし、辺りを見回した。
大きなダブルベッド、白のテーブル、クローゼットなど。
自室でないことは確かだ。
明らかにどこぞの高級ホテルの一室といったところだ。
開け放たれた大きな窓から入り込む風がカーテンをなびかせた。
ベッドからおりた神崎は、昨夜のことを思い返しながら窓に近づく。
昨夜はなにも変わらない日常だったはずだ。
仕事から帰ってきた姫川に「おかえり」と言って、一緒に夕飯を食べ、風呂に入り、疲れたからと言って別々の部屋で眠ったはずだ。
現に、昨夜と同じ寝巻を着ている。
窓からベランダに出た神崎は、そこから見えた景色に絶句せずにはいられなかった。
照りつける太陽。
真っ青な空。
見渡す限りの広大な海。
風で揺れるヤシ。
ビーチではしゃぐ人々。
「……………」
一度壁に額をぶつけてもう一度確認してみる。
夢ではない。
「…どーしよ…。ニッポンじゃねえ…」
目に映る人間のほとんどが外国人だ。
BGMでウクレレが聴こえそうだ。
半分パニックになりながらも神崎は踵を返し、部屋に戻る。
「おいおいおいおいおい。オレいつ拉致られた?」
よく起きなかったな、と感心しつつ、神崎の視線はテーブルに移る。
そこには、メモとホテルのキーが置かれていた。
メモには達筆でこう書かれていた。
“ちょっと用事済ませてくるから、オレがいないからってパニックにならないように ダーリンより”
神崎は気持ちのままにメモをくしゃくしゃと丸め、床に投げ捨てた。
「犯人やっぱあの馬鹿かっ!!」
それから、ホテルでひとりゴロゴロと過ごすのも飽きてきたので、神崎はホテルのキーを手に、外へと出る。
ホテルさえ見失わなければ迷子にもならないだろう。
こんな大きなホテルを見失うはずがない。
外出した神崎は、窓から見えたビーチへとやってきた。
どこもかしこも、異国の人間ばかりだ。
「…ガイジンだらけだな…」
日本人がひとりも見つからず、寂しさを覚える。
砂浜に下りてもよかったが、靴は砂だらけになるだろうし、裸足で歩くと火傷しそうなので堤防を歩いた。
『ちょっと、そこのお兄さん』
不意に背後から声をかけられ、振り返ると挑発的な水着を着た3人組のアメリカ人女性がそこにいた。
神崎は辺りを見回し、「オレ?」と自分自身を指さして首を傾げる。
『あら、日本人?』
『そうよ、あなたに声をかけたの』
『写真撮ってくれない?』
言っていることはすべて英語で神崎には理解できなかったが、デジカメを押し付けられたのでどうしてほしいかは察したようだ。
(写真撮ってほしいって言ってんのか?)
「お…、OK」
押し付けられたデジカメを受け取り、構えると、女性達は詰めてポーズをとった。
「とるぜー」
神崎が声をかけると、3人はニッと笑った。
パシャッ
(…ちゃんと撮れたか?)
画面を見て、指が入ってないか、ブレてないかを確認してからデジカメを返した。
すると、女性のひとりがいきなり神崎を引っ張って『一緒に撮りましょうよ』と言いだす。
「は?」
デジカメを返されたひとりが少し離れ、そこから連れの2人と神崎を撮影しようと構える。
『撮るわよー』
『笑って笑って』
「ちょ…っ」
顔は近く、組まれた右腕は胸に押し当てられ、表情が固いまま写真を撮られた。
『お兄さん、ヒマだったらこのあと一緒に遊びに行かない?』
「???」
『ひとりでしょ?』
「……イエス?」
『だったら、あたし達の相手してほしーなー』
「……イエス?」
意味がわからないまま、とりあえず「イエス」と答え続ける神崎。
「OK」と「YES」でうまくいくと思っている。
手を引っ張られて連れて行かれそうになったところで、誰かが神崎の肩を強くつかんで止める。
「勝手にはいはい答えてんじゃねーよ;」
「あ、姫川」
振り返ると、トレードマークのリーゼントとアロハシャツを着た姫川がそこにいた。
『あ、ひとりじゃないじゃん』
『お兄さんもよかったら一緒にどう? 楽しまない?』
『せっかくだが、オレはこれからこいつと大事な用があるから』
「???」
滑舌のいい英語で返す姫川。
当然神崎はなにを言っているのかわからない。
『そう、残念だわ』
『じゃあね』
バイバイ、と手を振られ、神崎も手を振り返す。
彼女達の背中を見送ったあと、姫川に「なに言ってたんだ?」と尋ねた。
「逆ナンされてたんだよ、おまえ。ったく、勝手にホテル出るからこんな目に…」
「マジか。…つーか、てめーがこんな異国に連れてくっから…!」
拉致られたことを怒りとともに思い出した神崎は、姫川にがなる。
「異国って、ここハワイだけど?」
「ハワイ!!?」
ここで初めて神崎は自分が立っている地名を知った。
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