暮らし始めた2人は?
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数日間の夜中に出張から帰ってきたぜ。
ただいま、我が家。
「…おかえり」
玄関のドアを開けて靴を脱ぐ前に、ひょっこりとエプロン姿の神崎が出迎えてくれた。
ああ、これで定番のお風呂かごはんかそれとも神崎の言葉があればいいのだが。
絶対ありえないけど。
「メシできてる」
「あー、はじめの手料理ー」
すでに美味そうな匂いが漂っていた。
魚の匂いがする。
和食かな。
両手を伸ばして神崎の背中にしがみつく。
今晩ばかりは甘えさせてくれるのか、神崎は「力尽きるにはまだ早いぞー」とダイニングまでズルズルと引きずってくれた。
「組員が土産でくれた、サンマだ」
「秋だなぁ」
さつまいもの味噌汁と栗ごはんまである。
口の中は早くも唾液でいっぱいだ。
「…おはぎもあるぞ」
「食う!」
疲れもブッ飛ぶ献立だ。
スマホで写真を撮っておく。
『今日の愛妻の献立なう』
呟きも更新しておこう。
「いただきます」
「めしあがれ」
食事中は仕事の話とか、離れている間は何をしていたかなど、互いの状況確認をしながら雑談を交わした。
話しながら食べるとメシがさらに美味く感じるのはなぜかな。
神崎と付き合う前とかはずっとひとりでメシ食ってたし。
当たり前の味で金もかかってるから超えるものなんてないと思ってたし、どれも同じ味に感じていたから。
「貸してみろ」
神崎が綺麗にサンマの骨をとってくれる。
二葉にもやってあげていたのか慣れたものだ。
「さっすが」
「たつやも練習すれば上手くなる」
名前呼びもすっかり慣れたようだ。
恥ずかしげに呼んでた頃が懐かしいな。
時々「姫川」と戻る時があるけれど、別に注意はしない。
神崎ならどんな呼び方でもかまわない。
「姫」とか「たっちゃん」とか呼んでくれたって。
「顔がキモいぞ」
デザートのおはぎを食べてみる。
いいもち米と餡が使われているのか、これも美味い。
別腹が大きく拡がった。
「…どうだ?」
「びっくりするほどうめーな。どこのおはぎだ?」
「…オレが作った」
「スゲーな!!」
神崎は照れくさそうに笑う。
逆に食べるのがもったいなく感じてきた。
「ひとつは神棚用に置いとく?」
「うちに神棚はねーし、残さず食え。全部てめーのために作ったんだからな」
残さず胃におさめさせていただきます。
腹がいっぱいになったら、バラエティ番組を見てから順番に風呂に入った。
先にオレが入って、神崎が入っている間に頭にバスタオルを巻いて眼鏡をかけ、ソファーに腰かけてノートパソコンを起動させ、次の仕事を済ませようとする。
神崎が傍にいない時はなるべく先に終わらせて2人きりの時間作りたいし。
会社では上を目指すほど忙しくなるし、あいつだって次期組長になるために奮闘してるんだ。
本当は料理だって作るのしんどいんじゃないかと心配になる。
でも、嫌な顔ひとつしない。
それどころか幸せそうな顔までしてくれるのだ。
苦労はかけさせたくないけど、あの顔を思い出すと口元がニヤけてしまう。
「仕事?」
「お、もう上がったのか」
「寝落ちしそうだったから」
早めに上がってきたようだ。
オレのパソコンの画面を後ろから覗く。
「先に寝てていいんだぞ」
「……徹夜?」
「いや、オレももう終わるから」
できるだけキーボードを叩くスピードを上げる。
あとちょっとだ。
「!」
横に座った神崎がオレの肩に寄り掛かってくる。
「…あの、はじめさん?」
「手ぇ止めるな。早く動かせ。待っててやるから」
集中できないんですが。
シャンプーとかボディーソープの匂いとか誘惑フレーバー振りまきながら何をなさるんですか。
ネコ飼ったことないけど、仕事中とかパソコンの上にのって阻止してくるネコの画像とか動画とか思い出した。
指示通り手を動かし、横目で神崎の顔を見る。
腹もいっぱいで風呂上がりだからうとうとしている。
「顔が眠そう」
指摘してやれば、ふるふると首を横に振って睡魔を払おうとする。
「気にするな」
「気にする。明日も仕事だろ? 無理にオレに合わそうとしなくても…」
「合わそうとしてねえし…、その……」
「?」
「メシ食って、フロ入ったら…、最後の相場は決まってんだろ」
風呂上がりとは違う熱が頬に帯びたのを見逃さなかった。
速攻でデータを保存してシャットダウンを確認してからパソコンを閉じる。
そして、神崎を引き寄せて押し倒した。
「わっ! おまえ仕事…」
「いい。いつでも出来る仕事だから。今のはじめは今しか食えない」
たとえ明日中に終わらせなければいけない仕事でも、神崎を満足させてやってから徹夜で乗り切って見せる。
「ムリさせるけど大丈夫か?」
なにせ数日ぶりだ。
けっこう溜まってる。
「…遠慮はいらねぇ。思いっきりやれ。こっちだって思いっきり発散させたいんだよ」
首に手を回して強引にキスされた。
「眼鏡ジャマ」と眼鏡を外されてローテーブルに無造作に放り投げられる。
湯気をたたせながら紅潮する肌の色に生唾を飲みこんだ。
「いただきます」
「めしあがれ」
今度はいつ食べれるかわからないから、腹がパンクするほどいただこう。
極上の味を。
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