暮らし始めた2人は?
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ゆったりとした休日。
ソファーに仰向けに寝転がって雑誌を読んでいたオレは足に感じる視線に気づいた。
雑誌をずらし、投げ出された両足を見ると、2人分のコーヒーを持ってきた姫川が立っていた。
じっと穴が空くほどオレの足先を見つめている。
「…何か?」
姫川はローテーブルにコーヒーカップを置いてから、もう一度オレの両足に近寄り、今度は直接手で触れてきた。
「長い」
「脚が?」
「爪が」
そう言われて、オレの視線も足先に移る。
確かに爪が伸びていた。
最後に切ったのはいつだっけ。
ちょっと危ないか、と思うくらいの長さだ。
考えていると、姫川は小物入れから爪切りを持ってきた。
それから肘掛に腰掛けてオレの右足首をつかみ、自身の膝にのせて固定する。
何をするのか察したオレは思わず足を引きそうになったが、姫川の握力によって阻止された。
「おまえまさかオレの爪を切るわけじゃねえだろうな?」
「見ての通りだ。切らせろ」
平然とした顔で、爪切りの刃と刃をカチカチと鳴らした。
「…いや、いい。自分で切る;」
「人にやってもらうのが怖いって?」
「それ以前にてめーが人にやったことがあるのか?」
「オレがそんなお人好しな男に見えるか」
「だろうな。やめろ」
「おまえは?」
「二葉のを時々」
「面倒見のいい叔父さんだな」
「二葉が「やれ」っつーから仕方なく…」
パチン。
「いきなり始めてんじゃねえよっ!!」
「いや、ネコとか爪切る時にしゃべりかけ続けた方がいいらしいから…。飼い主の不安が移ってパニックになるって」
「ネコと一緒にすんなっ!!」
空いている左足を横っ腹に当ててやる。
「いだだっ。暴れるな。マジで皮膚切るぞ」
「っ」
未だに爪切りとオレの足首を固定している姫川の言葉に動きが止まってしまった。
すると、小さく笑った姫川が続きを始める。
パチン、パチン、と爪を切られていく。
うちの爪切りは、中に入り込むタイプだから床にチラシなど敷く必要はないが、あとで掃除機をかけておかないと。
爪も欠片によっては小さな凶器だから足の裏に刺さってしまうかもしれない。
姫川が足の甲に触れる。
くすぐったさに引きそうになったが堪えた。
「……これが数々の不良達を蹴散らしてきた足とは思えねえな。オレよりサイズ小さいだろ」
石矢魔に通ってた時は、足の爪が割れないように気は遣っていた。
そうか、爪の手入れを怠ったのは最近平和だからか。
それはそれで少し寂しいような。
「まだまだ現役だぜ。脳天に喰らってみるか?」
「遠慮しときます。でも、かかととか、鋼鉄ってほど硬くねえから」
「ば、馬鹿、変な触り方すんなっ」
撫でられて思わず身を竦ませた。
「ん? 意外と足弱い? 小指とかは?」
「お…い、爪切るのはどーしたんだ…ぅあっ」
不意に足の甲にキスされたから変な声が出てしまう。
小指と薬指の間とか舐められればたまらない。
「もうちょっと触っていたい…。綺麗な足だし…」
「馬っっ鹿じゃねーの…」
そんなの、言われたことがない。
だからだ。
照れ臭いのは。
ネコをあやすかのように愛おしげに撫でてくる物好きも、世界でこいつだけだ。
「……あとでてめーの爪切らせてくれるなら…、続けさせてやる」
「マジで? デレてくれるな、今日は」
「足から先に手ぇ出したら久々にきついの喰らわせるぞ」
人を蹴り続け傷つけてきた百戦錬磨の両足まで、こいつにいいようにされるとは。
触れられている足どころか、心までくすぐったい。
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