暮らし始めた2人は?
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珍しく、神崎より早く家に帰って来た姫川は、ダイニングのソファーに寝転んでテレビを見ていた。
内容はどれも興味ないものばかり、チャンネルをニュースに切り替え、今日の出来事に耳を傾けながらケータイの画面を確認する。
神崎からのメールも着信もない。
(遅くなる時は電話するっつったのに…)
朝に予告された神崎の言葉を思い出し、これは帰ってきた時は文句のひとつでも言わねば、と眉をひそめ、ソファーから立ち上がってキッチンへ向かう。
コーヒーでも飲んで落ち着こうとした。
ポットに湯をこもうとした時だ。
冷蔵庫の横で、なにかがサッと動いたのを目の端で見てしまった。
「……………」
姫川は水を出しっぱなしにし、ポットを握りしめ、宙を見つめたままフリーズする。
(…なんかいたな……)
おそるおそる首だけ動かし、冷蔵庫の方を見る。
なにもいない。
ホッとしてポットに水を注いだ時、冷蔵庫の下からそっとのぞく影を見てしまった。
ガシャッ、と手元からポットが滑って流し場に落ちる。
その音に驚いたソレは、素早く冷蔵庫から飛び出し、横の壁をのぼった。
「………っ!!!」
遭遇した真っ黒なソレに激しくうろたえる姫川。
そこから一歩も動くことができない。
空間が静かになるのが恐ろしく、蛇口をひねって水を止めることもできなかった。
1分間その状態でいると、ポケットに入れたケータイが鳴った。
着信音から、神崎からだとわかる。
ソレから目を逸らさず、姫川はケータイを取り出し、通話ボタンを押して耳に当てた。
“悪い。早めに連絡するの忘れてた。今日ちょっと遅くなるから…。…姫川?”
相槌も返ってこない姫川に、神崎は怒らせてしまったのかと不安になって声をかける。
はっとした姫川は、息を大きく吸い込んだ。
「犯されるうううううううっ!!!」
通話はすぐに切れた。
それから5分後。
「姫川ぁっ!!!」
ドアを蹴破るように勢いよく神崎がダイニングに突入してきた。
その右手には、家から持ち出した日本刀が握られている。
「か…、神崎…っ」
真っ青な顔の姫川を見て、神崎は「無事か!?」とその傍に駆け寄る。
「アレが…っ、アレが出た…!」
「アレ?」
神崎にしがみついた姫川はソレに指をさす。
それを目で追いかけた神崎は、ソレを見て、姫川の胸倉をつかんで低い声を出した。
「…てめえ、まさかG如きで仕事の真っ最中だったオレを呼び付けたのか?」
「デケェし…、オレ、アレと遭遇したことねーんだよ…;」
同棲する前は、掃除は毎日使用人がしていたため、ずっと清潔な環境で育ってきたのだ。
初めて見たソレにビビるのも無理はない。
「悪い神崎…、オレじゃ…対処しきれなくて…っ」
「……………」
いつになく弱々しい姫川に、神崎の怒りが鎮火していき、困惑した顔の神崎は落ち着かせるようにその背中を軽く叩いた。
*****
「―――で、結局、私を呼ぶわけですね」
とりもちや殺虫スプレーを手に、蓮井はソレに向かっていく。
ソレの対処ができない2人は、遠くからそれを仲良く見守っていた。
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