暮らし始めた2人は?
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神崎と姫川は、石矢魔デパートで引っ越したばかりの家に必要な小物などを揃えていた。
食器、歯ブラシ立て、DVDケース、花瓶…。2人は今、カートを押しながらテーブルクロスを買いに2階のフロアにいた。
「姫川、この若草色の…」
神崎が目をつけたものを手にとり、姫川に見せるために振り返ったが、先程まで後ろにいたのにいなくなっている。
「姫川?」
勝手にうろうろされてしまい、気分を害した神崎は独断でテーブルクロスをカートのカゴに載せ、姫川を捜す。
「姫川ー」
すると、隣の衣服売り場で目立つリーゼントを発見。
2つのパジャマを手にして思案している様子だ。
「なにしてんだよ。パジャマならいっぱい持ってるだろ」
「いや…、それはそうなんだが…」
姫川は真剣な表情のまま神崎に顔を向け、手にしたパジャマを見せつける。
緑の水玉&紫の水玉の色違いペアパジャマ。
それを包んだカバーには“夫婦でオトクv”と貼り付けられていた。
「……ペアだとオトクだ」
「絶っ対買わねえぞ」
神崎は睨みを利かせ、拒む。
屋内でもペアルックはしたくない。
ましてや、片方はサイズの小さい女ものだ。
「夫婦茶碗も拒否ったじゃねえか…」
「客(主に夏目)が面白がるだろ」
「…パジャマ姿とか…、客に見せねえだろ…。ひとつでいいから…、おそろいがほしいんだけど」
パジャマを抱きしめたまま、しゅん、と姫川の気持ちとともにリーゼントの先端が下がる。
サングラス越しの目も、雨の中寒さに震えている仔犬のような目だ。
それでも神崎は「ぐ」と唸りながらも、折れてなるものかと「ダメ」と両腕で×を作って拒否する。
「どこぞのバカップルだよっ」
「バカップル!? はん! いい響きじゃねえか!」
ムキになって姫川は神崎に指さして言い返す。
「声デケーよっ!」
「大体、できるだけオトクで安く、見られても恥ずかしくないモン買えっつったのは神崎だろ!」
「ペアルックは十分恥ずかしいだろっ!」
「だからっ! 見せねえだろっ! これオレ達のおそろいのパジャマですって!!」
「だから!! 声デケーよっっ!!」
神崎の声も十分デカい。
「寝巻はおそろがいいっ!! じゃないとオレは一歩もここを動かねえっ!!」
今にも、嫌だ嫌だと床に転がりそうな勢いだ。
その方が人目についてしまう。
「駄々こねんな!!」
「神崎と一緒のモンなんて、ひとつも持ってねーもん!」
まだ結婚指輪もらってない頃なので。そろそろどちらかが折れなければならないのだろう。
客たちが喧嘩かと思い始めてきた。
「……おまえはホント…、学生のころからオトクの使いどころ間違ってんだよ…」
辺りを気にしながら、神崎は姫川の手からパジャマを奪い、カゴに載せた。
「……いいのか?」
姫川はキョトンとした顔だ。
神崎はUターンしてレジへと向かい、姫川は歩調を合わせてそれを追いかける。
「…寝巻だけ」
「じゃあ、パンツもおそろに…」
「戻すぞ。…あとな、言わせてもらうけどよ、一緒のモンなら、ひとつだけ持ってんだろうが…」
「?」
「……………」
答えず、神崎はレジへと並んだ。
*****
その夜、姫川にねだられ、買いたてのパジャマを着た神崎。
「……これで冬は越せねえな」
裾の丈が合ってないうえ、腕を上げれば腹が見えてしまう。
しかし、姫川はそれでもよかった。
いや、それでよかった。
「オレがあっためてやるから、任せろっ。オトク・バンザイ☆」
予想以上の破壊力に、姫川はしばらく床で悶えていた。
その様を冷めた目で見下ろし、パジャマの前に持っている「モノ」について考え直す。
(…持ってるモンは同じだが、色が違うな。オレのはこいつほど変態色じゃねーぞ…)
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