一日執事です。
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ぽた、と峰の吸っていたタバコが地面に落ちた。
吹っ飛んだ峰はそのまま顔面を地面に打ち付け、ずざざっと擦れて止まった。
あ、痛そう。
「ふぐ…っ」
脂肪がくっしょんになったおかげか、峰は気を失わなかった。
ちょうどいい、言いたいことだけ吐き捨ててやる。
「てめーみたいなカスと一緒にすんな」
「な…が…」
口の中も切れたようで言葉がうまく発せないようだ。
オレはまだ煙を立たせている峰の口から落ちたタバコを踏みつけ、消火する。
「違いならいくらでもあげてやるよ。あいつはタバコ吸わねーし、筋骨いい肉体してるし、身長だってオレより上だし、喧嘩だって強いし、頭もいい。リーゼントとサラサラヘアーのギャップだってある。他の金持ちを妬むようなこともしない。意外と一途なとこもある」
次第に恥ずかしくなってきた。
何気に惚気てないか。
「こんな…ことして…、タダで済むと…っ!」
オレは指をさして言ってやる。
「殴り返す度胸もねぇ根性無しが。オレを雇おうなんて、何千億、それ以上積まれてもムリな話だっつーの! 姫川以外、ありえねーんだよ!」
「く…っ」
言ってやった。
けど、ここから先のことはノープランだ。
「神崎!」
はっと振り返ると、開け放たれたドアに姫川が立っていた。
他の客も何事かとこちらを見て駆けつけてくる。
まずい。
これはまずいぞ。
オレはいいとして、オレの主人である姫川の立場が危ない。
数人の黒服の使用人たちが駆けつけ、峰に肩を貸し、2人ほど不穏な空気を纏ってオレに近づいてきた。
「ちょっと来てもらおうか」
別室でリンチか。
そう思って構えたとき、オレに手を伸ばした黒服の手首を横から姫川がつかんで止めた。
「!」
「オレの執事だ。勝手に持ってくな」
凄みを利かせてそう言った姫川は、オレの手をつかんで峰のもとへ近づいた。
「峰」
オレに殴られた頬を押さえる峰は、顔を上げて姫川とオレを睨んだ。
騒ぎを大きくしといてなんだが、オレは絶対に謝らねえぞ。
姫川はなにやら峰に耳打ちをした。
すると、峰の顔がさっと青くなり、焦った様子でムリヤリ笑みを作った。
「こ、転んだだけだ。騒ぎを大きくするなっ」
そう言われた黒服の使用人たちは明らかに怪訝な表情を浮かべた。
「峰、オレ達は帰る。婚約者と末永く、な」
意味深な笑みを残し、姫川はオレの手を引っ張って屋敷を出た。
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