一日執事です。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「招待状をいただいた、姫川竜也です」
「執事の神崎です」
やらねえっつったのにっ!!
結局こいつに押し負けてしまった。
だって「おまえしかいないんだよ」と深刻な顔で懇願あげく、自分自身が終わったようなため息をつかれたら、だんだん断りづらくなるだろ。
甘いっていうなよ。
自覚はしてる。
「しょうがねえな」ってオレが言った時の姫川の喜びようったら、そのまま調子に乗ってベッドに押し倒されそうになったのでチョップを食らわせてやった。
急いでたんじゃねえのかよ。
早速渡されたスーツに着替えたオレ。
あいつもスーツに着替えるかと思えば、「着替えさせて」だぁ?
ボタンも留めれねえ幼児かと睨みつけたら、「執事は主人の着替えも手伝うもんだ」とかぬかしやがる。
まさか、蓮井にも同じことやらせてんのかと思ったら、なぜか苛立ちが募り、ムキになって、もたつきながらも着替えを手伝った。
ズボンを穿かせ、シャツを着させ、ボタンをひとつひとつ留めて、八つ当たりにネクタイを強く締めてやったら「苦しい;」と呻かれた。
時計やアクセもつけてやって完成かと思ったら、リーゼントのままで行こうとするから慌てて止めた。
金持ちの集団の中に浮いた存在を投入するわけにはいかない。
オレとしてはリーゼントは悪くねえけど、場所が場所なのでムリヤリ下ろさせた。
招待された屋敷までは、ホテルの前で待機していたベンツで向かった。
運転手は最初から用意されていたようだ。
その間も、オレは「ネクタイ曲がってないか?」「オレ執事らしく見えるか?」など、不安で隣に座る姫川に尋ね、「大丈夫だ。見える見える」という言葉にほっとした。
しかし、その様子を楽しまれていたのか、あいつの口元は到着するまでニヤついていて、目はずっとオレを見ていた。
屋敷も引くほど豪勢なものだった。
洋館っていうのか。高級住宅街の中で一番大きな建物だ。
門を潜り、玄関の前で下ろされたオレと姫川。
姫川が懐から出した招待状を扉の前にいたこの屋敷の使用人に見せると、使用人は「お待ちしておりました、姫川様」と礼をし、扉を開けた。
エントランスも馬鹿でかく、吊るされたシャンデリアも眩しい。
「神崎、口、開いてるぞ」
肩越しにこっちを見る姫川に小さく笑われ、オレの顔に血が集まった。
「しょ…」
しょうがねえだろ、と言いかけたところで自分が今こいつの執事だってことを思い出す。
他の金持ち客や執事もいることだし、タメ口はまずい。
「…申し訳ありま…せん。見慣れてないもので…っ」
敬語って難しい。
思わず顔に力が入ってしまう。
笑っているのか、一歩前を歩く姫川が若干震えている。
もうこのまま帰るぞ、オレ。
.