一日執事です。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
休日にバスに乗って別の町のデパートでピアスを買いに来ただけだった。
「おや、あなたは…」
その1階のフロアで会ったのが、姫川の執事だ。
何度か会ったことがある。
「あんた、姫川んとこの…」
「執事の蓮井と申します、神崎様」
礼儀正しくお辞儀され、オレも会釈を返す。
これから帰るところなのか、蓮井の両手には大荷物が抱えられていた。
服、アクセサリーなど、有名どころのマークが入った袋や箱を持っている。
オレの視線に気付いたのか、「ああこちらですか?」と笑みを見せる。
「竜也坊っちゃまに、今夜のパーティーのおめしものを…」
「パーティー…」
「今夜用事がある」とか言ってたのはそれのことか。
財閥の坊っちゃんも大変だな。
「あんたも大変だな」
「いえいえ、これも執事の務めですから」
終始笑顔を絶やさない。
「では、私はこれで…」
別れたあとはまた気ままに買い物を続けるつもりだったが、このあと蓮井は、
バターン!
終始笑顔のまま突然倒れた。
「えええええ!!?」
辺りも騒然となった。
さっきまで話してたから素知らぬ顔もできず、オレは蓮井に駆け寄り、具合を窺った。
顔が真っ青だ。
「どうした!?」
意識はあるようだ。
「すみません…、坊っちゃまに似合うスーツや装飾品を考えているうちに、5日ぐらい寝てないもので…」
「悩みすぎだから!! 睡眠しっかりとろうぜっ!?」
誰かが救急車を呼んでくれたようだ。
店の外からサイレンが聞こえてきた。
「坊っちゃまに…、お届けものが…」
身を起こそうとするが、力が入らないらしい。
熱もあるんじゃないのか。
よくこんな状態で買い物しようなんて考えたな。
オレは小さくため息をつき、箱や袋を拾い集める。
「心配しなくても、これはオレが届けてやるよ。そんな状態で執事の仕事なんてできないだろ」
蓮井は悔しげな表情を浮かべ、懐から名刺のようなものを取り出し、オレに差しだした。
「坊っちゃまがお泊まりになられている、この町のホテルの住所です」
オレがそれを受け取ると、ちょうど担架を持ってきた救命士達がこちらに駆け寄り、蓮井を担架に乗せた。
「赤い箱に坊っちゃまのスーツが入ってます。青のボーダーの袋には時計が…、あ、チェックは割れものが入ってあるので慎重にお運びください。モノクロの奥にはさらに小さな箱が…。それと…」
搬送されても蓮井は喋り続ける。
「早く行けよ」
いつか過労死するんじゃないかと心配してしまう。
仕事の鬼ってああいうのをいうのか。
ともかくオレは本日の予定を変更して、荷物を両手に、タクシーを使って姫川のいるホテルへと向かった。
.