とある野良猫と飼い猫。
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無意識にゴロゴロと喉が鳴り、足元も危うい。
なのに、気持ち良くてマタタビの小枝にも手をつけてしまう。
「ああ、マタタビ最高にゃ~」
「そうだろ~」
見上げると満月が浮かんでいた。
外から見た月ってこんなにキレイだったのか。
「姫川!」
「うわっ」
いきなり飛び付かれ、上にのられた。
「ど、どうした、神崎…」
「おまえも野良になっちまえよ…」
「だから…、ムリだって、温室育ちのオレには。生きてけねーよ」
「オレがエサの取り方から喧嘩の仕方まで教えてやるよ~。なぁ、姫川~」
こいつは酔うと甘えんぼさんになるらしい。
今にもだだをこねて泣きそうなその顔に笑いをこぼさずにはいられない。
「なに笑ってんだよ~」
胸に顔を埋められた。
どうしよう。
他のメスネコよりカワイイと思ってしまう。
「ふにゃっ」
思わず目元を舐めてしまい、びっくりされた。
オレ自身もびっくりしている。
「…目に…マタタビの葉が…っ;」
苦しい言い訳。
「び…、びっくりするだろ…」
プイと顔を逸らされる。
だからやめろってその仕草っ。
おまえホントにボスネコかっ。
「……3日後…」
「?」
「3日後、飼い主が旅行に行くから…、その時にまた呼びに来てくれねぇか?」
「姫川…」
「…挨拶しなきゃなんねーんだろ?」
「…ついに野良に転職か!?」
「くどい。あくまで挨拶だけ。就職みたいに言うな」
「けど、なんで急に…」
「マタタビの礼」
「…そっか…。でも、よかった…」
神崎は安堵の笑みを浮かべた。
「……どうして、オレばかりかまうんだ? けっこう酷いこと言ってたつもりだったけど…」
「だっておまえ、ずっと窓の外ばっかり見てただろ。オレが来ても無視ししなかったし…。「こいつ、なんだかんだ言いつつ外出たいんだな」って思うだろ」
「……………」
オレ的にはただの日向ぼっこのつもりだったのだが、こいつの言う通り、そんなことをどこかで思っていたのだろうか。
「…まあ、正直な話…、最初はメスネコかと思って声かけただけなんだけどよ…。ほら、おまえ綺麗な銀色の毛並してるし、気品?とか…」
神崎は顔を赤くしながら言った。
オレの顔にも照れが移る。
オレをメスと間違えてたとは。
神崎は酒が入ると素直にもなるらしい。
「じゃあ、酔いもいいカンジに醒めてきたところだし、オレ、行くから」
神崎は屋根を下りようとした。
「絶対迎えに来いよ」
そう声をかけると、神崎はまた笑みを見せた。
「わかってるって…。つうか、明日も来てやるからな」
上から物をいって帰っていった。
その前に、着地に失敗したのか「ぎにゃーっ」と悲鳴が聞こえた。
大丈夫かと屋根から窺ったが半分無事のようだ。
腰を打ったのか、足どり重く帰って行く。
*****
次の日、約束通り神崎はやってきた。
今日は豪華にも伊勢エビを持ってきた。
なのに、それに反して顔が暗い。
「…どうした?」
「……オレ…、昨日……」
思い出したのか、顔が赤い。
まさか、昨日のことを今更恥ずかしがっているのだろうか。
いるいる。
酒飲んで翌日自爆する奴。
「…おまえカワイイな」
オレは思わず笑ってしまう。
「な、なんだよ突然!」
「それで、今日はどんな手柄を立ててきたんだ?」
今日の野良猫自慢話に、どんな飼い猫自慢話を返してやろうか。
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