とある野良猫と飼い猫。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日、いつもの時間に窓から外を窺ってみたが、いつまで経っても神崎がやってこなかった。
「ようやく来なくなったか…」
ホッとするべきなのに、どうにも落ち着かなかった。
まさかついに車に轢かれてしまったのか、それとも魚屋の主人にとうとう御用になってしまったのか。
窓からあいつの姿を捜すが、結局飼い主が帰ってきてもあいつは姿を現さなかった。
オレも窓際にべったりとはりついたままだった。
*****
「姫川ー、姫川ー」
夜も更け、就寝しようとしていたところで聞き覚えのある声が聞こえた。
「…?」
窓際に飛び乗り、庭を窺ってみるが声の主の姿はどこにも見当たらない。
猫なのに空耳かと思ったが、また「姫川ー」と声が聞こえた。
出どころは上からだ。
はっとして窓から顔を出して上を見ると、家の屋根の上に神崎の姿があった。
「よー、姫川ー」
酔っているのか、舌足らずで、えらく上機嫌だ。
あんな満面の笑みは初めて見る。
「てめ、オレの飼い主が起きたらどうすんだ」
「ひっく、いいマタタビが手に入ったんだぜぇ。オレの3次会に付き合えよー」
調子に乗った上司のようなことを言っている。
放置してもよかったが、また騒がれそうなので仕方なく屋根へと登ってやる。
「おー、よく来たにゃ~」
「すごいマタタビ臭だな」
人間でいうところの、酒臭い、だ。
神崎の周りにはマタタビが散らかっている。
誰が屋根の掃除をすると思ってんだ。
神崎は喉を鳴らしながら「にゃんにゃん」と幸せそうに寝転がっている。
屋根から落ちてそまいそうだ。
「神崎…、おまえ…、意外とオレより小さいんだな」
「んにゃ?」
こんなに近くで会ったのは初めてだが、神崎はオレよりひとまわり小さいネコだった。
自称・ボスネコのクセに。
こんなヨダレを垂らした幸せ顔の奴が、本当にボスネコなのか。
今なら、ネズミにも敵わないんじゃないだろうか。
「姫川~、早くおまえも食べてみろって」
フラフラの体で立ち上がり、神崎がすり寄ってくる。
この酔っ払いが。
しかし、甘えるように尻尾をオレの巻きつけてきたりと、なぜか可愛く思ってしまう。
なにこれ、ギャップ萌えってやつか?
「……………」
オレもマタタビの粉とか食べたことはあるが、そのままのものを食べたことがない。
試しに、落ちていたマタタビの葉っぱを食べてみる。
………にゃ~ん。
すぐにきた。
.