とある野良猫と飼い猫。
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引っ越してきて1日目、飼い主も出かけ、新鮮な景色を眺めていたオレの目の前に現れたのが、この神崎という野良猫だ。
突然家の囲いの垣根から現れ、目付きが悪いものだから最初喧嘩でも売ってるのかと思ったが、この町の自称・ボスネコが挨拶にきただけのようだ。
「おまえ名前は?」
「…姫川」
「おう、姫川。おまえちょっとこっち出て来いよ。この町の奴らに挨拶してけ」
「はっ、なんで小汚ぇ野良猫共にこのオレが…。やなこった」
その言い方にムカついたのか、神崎はムッとした顔になる。
「飼い猫だからって随分言ってくれるじゃねーか。野良ナメてんじゃねーぞ」
「所詮は人間に捨てられた哀れなネコだ。縄張り争い、エサの取り合い、野蛮極まりねぇ」
「オレは生まれも育ちも野良猫だが、それでも自由奔放、面白おかしく過ごしてんだ。てめーこそ、そこで呑気に景色見てるだけじゃねーか? 退屈だろ」
「けど、朝昼晩の食事は毎日与えてくれるし、あったかいところで寝れるし、ブラッシングしてくれるし、外と違って危険なものはなにもねぇ」
「人間でいうなら、引きこもりじゃねーか」
「フン、なんとでも言え。その引きこもりの生活に満足してんだよ。わかったら、とっとと失せろ、このドラネコ」
「……………」
神崎は黙って睨んだあと、踵を返して垣根の向こうへと消えてしまった。
野良猫のクセに、張り合いのなさに拍子抜けしたが、しばらくして神崎は再び戻ってきた。
「!!;」
どこでくすねてきたのか、大きな魚を引き摺って。
「見ろ、姫川! こんなデケー魚、てめー、ありつけたことあんのか!?」
「おまえ…、どこからそんな…」
キャットフードの缶に描かれたものに間違いなければ、あれはマグロだろうか。
確かに、刻んだものならともかく、マグロを丸ごと食べたことはない。
思わず喉が鳴った。
「待てコラコソ泥ネコオオオオオ!!」
「あっ、ヤベッ!」
神崎は急いで魚を咥えて垣根を抜け、左の道を走った。
すると、向かいの路地裏から包丁を持った男がそれを追いかける。
きっと、神崎に魚をくすねられた魚屋の主人だろう。
「命懸けじゃねえか…」
やはり飼い猫の方が平和でいい。
次の日から、神崎は毎日のようにオレのところに現れては、野良猫の自慢話を持ってくるようになった。
マタタビ、ねこじゃらし、ハト、ネズミ、魚など。
なにか持ってくるたびにオレは飼い猫の自慢話で一蹴してやるが、これがなかなかめげない。
相手をしたくないなら窓に近づかなければいいって?
それじゃ、逃げたと思われるだろ。
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