小さくても生意気です。
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急いで城山と夏目を呼び出し、事情を説明してから捜索にあたらせた。
“どうしてもっと早く呼んでくれなかったの! そんな面白…大変な時に!!”
「それだ! 絶対面白そうにするからだろ!!」
携帯でそんなことを言い合いながら、オレは商店街をくまなく捜した。
城山と夏目には商店街の外を捜してもらっている。
「姫川―――!」
最悪、その女の子が家に持ち帰ってなければいいが。
けど、やっぱりいらないと思って捨てられても問題だ。
カラスとかネコとかが持ち去って食われたら。
色んな不安が降りかかってくる。
「姫川―――!!」
はっきり言って、オレ、泣きそう。
こんなことなら一人にするべきじゃなかった。
「神崎君!」
その場に膝をつきそうになったとき、夏目が携帯片手に駆け寄ってきた。
「姫川は…」
「城ちゃん、姫ちゃん見つけたって!」
「!!」
「ただ…」
オレと夏目はすぐさま城山が姫川を発見した場所に駆けつけた。
場所は公園。
オレ達は出入口付近で落ち合った。
「姫川は!?」
「それが…」
城山が指をさした方向を見ると、砂場に、スーパーのおばちゃんが言ってた女の子を見つけた。
男子含めた友達3人と砂山を作って遊んでいる。
肝心の姫川はというと、砂山のてっぺんに載せられていた。
リカちゃんが着てそうなフリフリのカワイイ服を着せられ、死んだ目になっている。
「「ぶっ!!(笑)」」
オレと夏目はその場で噴き出した。
今日最高のパンチだ。
「なにあのカッコ!! なにあのカッコ!!(笑)」
「ヤッベェ!! 似合いすぎだろ!!(笑)」
「姫ちゃん最高!! オレもうダメこれ以上近づけない!!(笑)」
ピロリーン♪
「夏目!! その写メ絶対オレに送れよ!!(笑)」
そろそろ笑いをやめないと警察呼ばれそうだ。
さっきまでの不安も完全に吹き飛んだことだし、そろそろ落ち着いて現状を把握しよう。
「あの子どもから姫川取り返せば解決だ。よし、城山、おまえ行ってとってこい」
「いえ…、言われる前に取りに行こうとしたのですが…」
怯えられ、危うく泣かすところだったそうだ。
まあ、ガタイのいい高校生が幼い少女の人形取り上げるなんて、ゴミを見るような眼差しを向けられてもおかしくない。
たとえ「それはオレの人形だ。
勝手に盗んじゃダメだろ」と言っても。
姫川も、隙を見て逃げることもできない様子だ。
「じゃあ夏目…、おまえまだ笑ってんのか;」
「(笑)」
ツボに入ったらしい。
ここは爽やか系で攻めるべきかと考えたが、当の爽やか男子がこのザマだ。
女の子に声をかける前に姫川を見て笑い転げるだろう。
「……城山」
オレはサイフを取り出し、中から五千円札を取り出し、城山に渡した。
「ちょっと買い物に行って来てくれねーか」
オレが買う物を告げると、城山は戸惑いつつも力強く頷き、「行ってきます」と言って商店街へと向かった。
「どうするの?」
余韻が残ってるが、夏目もそれなりに回復したようだ。
「城山が買い物に行ってる間にガキに帰られると困るだろが。オレ達が時間を稼ぐ」
オレと夏目は公園に入り、砂場に近づいた。
夏目はできるだけ姫川を直視しないようにしている。
姫川がオレを見てどうにかしてくれと泣きそうな顔になったようだが、オレもできるだけ直視できないようにした。
高校生2人が来て、子どもが全員こちらに注目する。
オレと夏目は素知らぬフリをしながらできるだけ子ども達の近くで砂山を素手で作り始めた。
「そっち、バランス悪いよ」
「おう」
あっという間に子ども達の砂山より大きいのが作れた。
すると、姫川を持ち去った女の子が近づいてきた。
「これ使った方が早いよ」
そう言ってスコップとバケツを貸してくれた。
どんどん高くなっていく砂山に砂場の子どもどころか滑り台やジャングルジムで遊んでいた子どもまで目を輝かせている。
女の子の友達もバケツに水を汲んで「もっと頑丈に作ろうぜ」と手伝ってくれる。
「神崎君、保父さんに向いてるかも」
「その口に泥団子ねじこめられてーか」
ただの砂山じゃ飽きる。
崩れないように気をつけながら、トンネルを掘ったり、丁寧に削って螺旋の道を作った。
城山はまだか。
そろそろ砂場の砂がなくなりそうだ。
「神崎さーん!」
ちょうど城山はビニール袋を片手にこちらに走ってきた。
オレはタイミングを見計らい、女の子に「ちょっとそこのカワイイ人形貸してくれるか?」と聞いた。
あっさり了承。
オレは姫川をつかみ、その頂上に載せた。
空気を読んだ姫川はちゃんとポーズをとってくれる。
これは、自由の女神だっけ。
「完成!」
夏目とハイタッチ。
湧き上がる拍手喝采。
「神崎さん…、これを…」
「おう、ご苦労だったな」
素早く、姫川と城山が買ってきたそれを入れ替え、オレ達は公園をあとにした。
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