これでも惚れ込んでます。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい姫川、放せって…、ひとりで歩ける…」
「馬鹿言うな。目隠ししたまま歩かせられるか」
「恥ずいっつってんだろ!」
姫川は神崎の手をとり道を歩いていた。
目隠しをしている男の手をとって歩く男。
通行人は好奇の眼差しでそれを見る。
その頃、教室では。
「神崎さん、ヨーグルッチ買ってき…あれ!? いない!!」
「やられたね」
まだ放課後でもないのに、神崎を連れてうまく2人だけで抜け出した姫川。
「どこ連れてくつもりだ?」
「赤ん坊じゃなくても、犬猫でもいいっていうなら…、この先の空き地に野良猫ばかりが集まっている穴場があるらしい」
「……ネコ…」
「そっ」
「まあ…、ネコなら…」
ネコに惚れて追いまわしている神崎。
正直な話、姫川はそんなムツゴロウ的なシーンをぜひとも写メりたいとも考えていた。
“にゃ~ん。おめぇら、スゲーカワイイな。よーしよしよし”
想像してしまった姫川は思わずその場に片膝をつき、ふるふると震えた。
「おい…、姫川…どうした…?」
姫川の様子に神崎は困惑しながらも、その肩に手をおいた。
「そんなおまえが一番カワイイ!!」
「ぎゃーっ! なんだぁ!?」
いきなり姫川に抱きつかれ、神崎は慌てて手をジタバタとさせた。
近くでそれを見ていた子どもは母親に手を引かれて足早に連れて行かれる。
「もうおまえうぜぇ。疲れる」
げんなりしている神崎は、さっさと済ませてほしいと項垂れ、大人しく姫川に手を引かれて目的地へと向かう。
途中、姫川の背中に顔面をぶつけた。
「ぶっ。…ってめぇ、止まるなら「止まる」って…」
「なんだ、てめぇら…」
「!」
ドスの利いた姫川の声に、前に誰かいることがわかった。
平穏そうな相手ではない誰かが。
前からくつくつと悪人らしい笑い声が聞こえる。見たかったが、見るわけにもいかないもどかしさを覚える。
姫川は神崎を背にやり、目の前の5人組を見る。
明らかに他校の生徒だ。
学校名まではわからないが、100%不良だろう。
「オレらが用あるのはてめぇの後ろにいる、神崎一だ」
「ああ?」
神崎は睨みをきかそうとしたが、目が隠れているためまったく迫力がない。
「こいつに用ってなんだ? 目隠しされてるからチャンスってわけか?」
「くくく…。とぼけんじゃねーよ。話は、お小遣いのついでに聖石矢魔の奴らから聞いてんだ。…面白い薬飲まされたんだって? 神崎…」
「確か、最初に見た奴の奴隷になる薬だとか…」
「あれ? オレが聞いたのは、貧弱になる薬って…」
「ちょっと待て、オレが聞いたのは仲間になりたがる薬だって…」
身内で言い合いが始まった。
神崎と姫川は完全に呆れかえっている。
(マジで噛み合ってない5人組)
(これが他校のMK5)
どこにでもMK5がいるものだ。
「じゃあおまえら、こいつの戻し方もそれぞれバラバラなんじゃ…」
ずれかけたサングラスを指先で上げながら、とりあえず質問してみる。
「ガチセッ○スしたら元に戻るって…」
「フェ○したら…」
「SMプレイじゃなかったか?」
「48手制覇」
「…触手?」
「それだったら喜んでオレがするわぁああぁぁ!!!」
ズドン!
叫ぶ姫川を後ろからどつく神崎。
「飛躍しすぎだ!! 一体どこから急カーブした!!? しかも戻し方エグい!!」
「とにかく、神崎、そんなおまえを手に入れさせてもらうぜ!」
きっちりと決めたつもりだろうが、先程経緯のせいで決まり切ってない。
「誰がてめぇらなんかにやるかってんだ」
踊りかかる他校MK5。
目の見えない状態で戦えるほど、神崎は器用ではない。ここは姫川ひとりが撃退するしかない。
姫川はスタンバトンを取り出し、迎え撃つ。
(あいつ、そういうのは普段部下共にやらせるだろが!)
1対5。
ボケてはいるが、相手の強さはわからない。
殴り合う音が聞こえてしばらくすると、辺りは静けさを取り戻した。
「ひ…、姫川…」
おそるおそる声をかけると、肩に手を置かれた。
「姫…」
だが、違和感を覚える。
姫川の手にしては、指が太い。
「残念だったな」
.