想いを綴りましょう。
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「おいスネ虫」
「あ?」
昼休みを過ぎた頃、姫川は屋上で仰向けに寝転がってる神崎を見つけた。
神崎は身を起こし、「なんだよ」と口を尖らせる。
「あの手紙…」
しゃがんで視線を合わせた姫川がそう言いだし、神崎はギクリと体を震わせ、顔を逸らした。
「ああ、なんか果たし状かラブレターかわからねぇふざけた手紙が届いたそうじゃねーか」
出来るだけ動揺を隠し、小馬鹿にするように言った。
姫川は頭を垂れ、露骨なため息をついたあと、懐から1枚の髪を取り出し、「神崎」と名前を呼んでその頭に載せた。
「?」
神崎は頭に載せられたそれをつかみ、目の前に持ってくる。
「読め」
「…? お、おう…」
姫川の真剣な顔に気圧され、神崎はそこに書かれた鉛筆の文字を目で追い、読み上げていく。
「“神崎一へ…。おまえはまるで一輪のたんぽぽのように美しく…”ぶははっ、なんだコレ(笑)」
「オレからてめぇへのラブレターだ」
「は…」と神崎の笑いが止まる。
姫川を見ると、青筋を浮かばせながら不気味な笑みを浮かべていた。
「…笑ったな?」
「……………」
手紙を手に、神崎はうつむき縮んでいく。
姫川は懐から別の紙を取り出した。
神崎の手紙だ。
「!」
目の前に見せつけられた神崎は、手を伸ばしてひったくろうとしたが、姫川は上にあげてその手を避ける。
「慣れないことすると、オレもおまえもこんな文になるんだよ。まあ、オレの場合、さすがに自分の名前を書き忘れるなんて馬鹿はしねーけどな」
同時に立ち上がり、手紙の取り合いになる。
「返せよっ」
「嫌だね。これはもうオレのもの」
「おかしかったんだろ!」
「そりゃあそうだろ。名前が書いてなかったんだ。おまえ以外の奴に熱烈に好かれてると思ったら…、つい、な…」
「おわっ」
いきなり手首をつかまれて、ぐいっ、と引っ張られ、抱きしめられる。
「スゲー嬉しいんだぜ? 普段、「好き」だの「愛してる」だの言わねーだろ? 特に最後の“これからも愛してる”ってのは…」
「……………」
「この手紙、大事にする」
「オレも…」
神崎は姫川の手紙を握ったその手を、姫川の背中にまわした。
「大事に…する…。一生…」
*****
家に帰ってきた神崎は、早速自分の部屋で、姫川の手紙を全部読み始める。
さすがに本人の前で読むのは恥ずかしくて耐えられないからだ。
しかし、文章が後半になっていくと、神崎は眉をひそめ、手紙を持つ指先を震わせた。
“おまえの(ばきゅーん)を今すぐ(お~ぅ)して、(ピ―――)で(あはーん)といつも考え…”
()の部分はこちらで規制させていただきました。
神崎君の目にはモロに内容が見えています。
「最後まで読めねええええ!! こんなもん一生持ってられるかああああ!!」
「いったいどんな顔して書いたんだあいつ」と近所迷惑も考えない叫びが夜空にこだました。
.END