リクエスト:それぞれの幸せを語りましょう。
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【CASE:食い気崎】
現在はラスベガスのカジノで経営を営む成金姫。
以前はカジノのゆるキャラとして活躍していた食い気崎だったが、とある事件をきっかけに、カジノスタッフとして働くことになった。
仕事面でもその無気力さは滲み出ていたが、
「はい今のイカサマ」
ゴキン!!
いざ客が不正を犯せば、一切見逃さず、厳しい制裁を下す。
時にはやり過ぎてしまうこともあり、他のカジノスタッフに止められることがあった。
それほど、成金姫が経営するカジノが大事なのだ。
スタッフとして働く以上、たとえ成金姫の恋人でも無償というわけにはいかない。
他のスタッフと同等の給料が支払われた。
食い気崎はヨーグルッチと成金姫がいれば何もいらないので、金の使い道に困らされた。
「…そうだ」
そこでふと思いつき、トレードマークでもあるジャージ姿で休日に街に出向き、そこである物を購入した。
夕方、在住しているカジノホテルに帰宅し、食い気崎は一仕事終えてソファーでくつろいでいる成金姫にそれを突き付けた。
「やる」
「…え?」
キョトンとした顔で成金姫は鼻先に垂れ下がるペンダントを見つめた。
「やる」
再度言われ、成金姫は両手を差し出してそれを受け取る。
紫のアメジストが埋め込まれたイニシャル入りのシルバーのペンダント。
「プレゼント」
「…神崎が買ったのか?」
「他の奴が買ったのをプレゼントって言って渡すかよ。自分の給料で買った」
成金姫には信じがたいことだ。
無気力の塊とも言われた食い気崎が自らプレゼントを購入したのだから。
成金姫は未だに気付いていないが、そういう行動をさせるのも、成金姫がいてこそだ。
「つかれた」
食い気崎は一息つき、成金姫の隣に座って遠慮なく成金姫に寄り掛かった。
「…いいのか?」
「いらないなら捨てる」
「いやっ、いらなくねーけど…」
「…なに?」
視線を上げて成金姫を見ると、顔がだんだん赤らんでいくのが見えた。
「……なに」
思わず目を逸らし、食い気崎も今更覚えた気恥ずかしさに頬を染めた。
成金姫はその頬を撫で、「神崎」と呼びかける。
「その…、大事にする…。ありがとな…」
「……ん」
早速成金姫は、貰ったばかりのそれを胸に垂れさげた。
光る紫色を間近で見、食い気崎は薄く微笑んだ。
「やっぱり姫川は紫が似合う」
*****
「あげたものをいつもつけてくれるってのはイイもんだな…。一日中、似合いそうなのを見つけた甲斐があった」
食い気崎の口元はいつの間にかニヤニヤとしていた。
「今日は面白ぇもんばっか見れるな。食い気崎のゆる顔とか滅多にお目にかかれねーぞ」
あまりに珍しいので、神崎は思わずスマホのカメラにおさめてしまう。
「よっぽど嬉しかったんだな…。まあ、普段が必要以上に貰ってばかりいる奴だから、なおさら…」
真面目崎は口元を緩ませながら食い気崎の頬をつつく。
「思った以上に満喫してるみたいだな、どいつもこいつも、甘ったるく…」
「それでも、自分のとこが一番だと思ってんだろ?」
オリジナルだからと自負しているわけではなく。
真面目崎の問いに神崎は鼻で笑う。
「おまえもな」
「当然」
自分の甘ったるさならどこよりも負けない、と。
「今年もよろしくやってろよ」
「おう、おまえんとこも、仲が良くても喧嘩もほどほどにな」
神崎と真面目崎はグラスを片手に改めて乾杯しようとした。
瞬間、背後に寒気を感じて止める。
「おいおいまさかこれでお開きってわけじゃねーよなぁ?」
「もっとあんだろ? 胸焼けするほどの甘ったるい話が。今度は夜の話に持っていこうじゃねーの?」
タチの悪い酔っ払い、強気崎と素直崎に絡まれてしまった。
2人の手には、いつ注文したのか新しい酒が用意されている。
嫌な予感を覚えた神崎と真面目崎だったが、危機の察知が遅かった。
遠慮する前に、酒瓶を口に突っ込まれてしまう。
30分後…。
「うわ…。予想通り」
神崎達がいる個室にやってきたのは、姫川達だった。
打ち合わせた覚えはないのだが、それぞれ相方が心配で集ってしまった。
神崎達はすっかり泥酔してそれぞれ横たわっている。
呼びかけても寝息しか返って来ない。
姫川は真上を見上げ、ため息をついた。
迎えに来たのが無駄にならなくてよかったのか。
「たぶん、ウチのが調子に乗ったんだろうな」
「またぐな」
計算姫は素直崎に近づく途中で強気崎をまたいでしまい、へたれ姫に叱られる。
成金姫と鬼畜姫は相方を揺するが起きる様子はなく、仕方なく背中に背負った。
同じく、へたれ姫も強気崎を背負う。
「ん~…」
「神崎(強気)、首しめてくれるな」
「帰るぞ」
「んゃ~。姫川(計算)、だっこ」
首を横に振る素直崎は両腕を広げて抱っこをせがみ、計算姫は希望通り抱っこしてあげる。
「神崎…」
「……ひめかわ…」
神崎を起こそうと肩をつかんで揺り起こしたが、神崎は目を擦り、姫川の首に絡みついた。
泥酔しているこちらも抱っこを希望だ。
「コートも忘れずに」
ピュア姫は迷うことなく真面目崎を姫様だっこだ。
「姫川(ピュア)…っ、オレも…おんぶで…っ」
わずかに意識が残っていた真面目崎はそのまま個室から出ようとするピュア姫を呼び止める。
その日、新年会が行われた店では目を疑うような光景が店員と客の視線を集めていた。
同じ顔した人間6人が、別の同じ顔をした人間6人に運ばれていたのだから。
成金姫が神崎達の料金を払い、それぞれの相方を連れて外へと出る。
それぞれがタクシーで来ていた。
「じゃあな」と姫川。
「良い年を」とピュア姫。
「迷惑かけたな」と計算姫。
「今度はオレ達で飲みに行こうぜ」とへたれ姫。
「帰ったら説教師とけよ」と鬼畜姫。
「払った金、別に返さなくていいって伝えといてくれ」と成金姫。
カップル達は声を掛け合い、待たせているタクシーへと向かう。
「よいしょ」
タクシーの後部座席に先に神崎を乗せ、続いて姫川も乗り込んでタクシーを家の前まで走らせる。
「ん~…」
「…幸せそうな顔しやがって…」
気持ちよさそうな寝顔の神崎に微笑を浮かべた姫川は、その頭を優しく撫でた。
明日、またそれぞれの幸せな日常が始まる…。
.END