小さな話でございます。
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その日姫川は、いつものスタイルのうえ、マスクをつけて登校してきた。
「っくし!」
席に着くなり、くしゃみをする姫川に神崎が近づく。
「風邪か?」
「いや…、花粉症だ」
ずび、と鼻をすすり、マスクをずらしてからティッシュで鼻をかんだ。
鼻は真っ赤になっていた。
「箱ティッシュ…」
わざわざ持ってきたのか、机の端に“はなセ●ブ”のティッシュ箱が置かれていた。
ゴミ箱まで設置されているから用意がいい。
「う―――…、つれぇ―――…」
頭もぼうっとしてきた姫川はその場に伏せる。
そこで何か閃いたのか、再びマスクをずらして神崎に手を伸ばした。
「神崎ー、花粉症が辛すぎる…。チューしろよ」
「そんな治し方ありません。鼻かんでろ」
冷たくあしらった神崎は、ティッシュを数枚取って姫川の顔に押し付ける。
「ふぐ」
それでもチーンとかむ姫川。
「重症だな」
「目もかゆい…」
色眼鏡を外した姫川の目は赤く腫れ、涙が浮かんでいた。
目も鼻もやられている様子だ。
「……………」
神崎はそれを無言でじっと見つめていた。
「?」
姫川は上目づかいで見つめる神崎を見る。
同時に、鼻がむずむずしてきた。
「…っ、へぷし!」
「!!!」
キュン。
思わず飛び出したカワイイくしゃみに、神崎の体がわずかに震えた。
「薬とか…、どうにかできないのかよ…」
もう一度鼻をかんだ姫川は、スマホを取り出して花粉症対策を検索しにかかる。
だが、神崎は上からそれを取り上げた。
「え、何?」
「花粉症ってのは自然に任せて治療した方がいいんだ」
「その自然にやられてるんですが」
「薬とか使うと徐々に効果が役立たなくなっていくらしい」
「え―――…。っぷしっ」
「!!!」
「……………」
城山の席から傍観していた夏目は、静かに思う。
(カワイイくしゃみ見たいのかな? 人がキュンする瞬間、生で目撃しちゃったよ)
「へっぷし」
「!!!」
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