リクエスト:とあるボス猫の幸せ。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
久しぶりに、オレは一匹、あるところに立ち寄った。
世話になった若の家だ。
ケガが治ったあとも、少し大きくなるまで面倒を見てくれた。
里親も探してくれたみたいだが、相手は見つからなかったようだ。
けれど、オレだってずっと面倒をかけるわけにはいかなかった。
だから、回復した脚で自ら立ち上がり、自分から縁側の下から出て行った。
塀の穴はそのままになっていて、そこから顔を出すと、縁側でゆっくりとしているその姿を見つけた。
オレが誰だかわかったのか、微笑んでくれる。
「よう、久しぶりだな」
「にゃー」
若は温かく迎えてくれた。
一度戻って、かつおぶしをまぶしたまぐろのたたきを皿に載せてオレの前に置く。
こちらもたまらない美味さだ。
食事中のオレの頭を、縁側に腰掛けた若が撫でてくる。
「おまえ、なんか幸せそうなツラしてるな」
「にゃー」
「楽しいか、野良は」
「にゃー」
「そうか」
相槌を打つと、若はまた嬉しそうな顔をした。
「…この間な…―――」
少しして、若は自分のことを話し始めた。
最近、アプローチをかけてくる奴がいるのだと。
そいつのことは嫌いではないのだが、どうしていいのかわからない、という悩みのようだ。
しかも、相談したのはオレが初めてだと。
猫のオレだから打ち明けられることなのだろう。
それを聞きながら、オレは若のために何かできればと思っている。
いつか、恩返しができればいいな、とオレは鰹節の味を堪能しながら心に決めた。
今のオレがあるのは若のおかげだ。
この「幸せ」も。
.END