リクエスト:天使はちっちゃくても天使です。
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朝の聖石矢魔学園石矢魔校舎で、ひとつの憂鬱なため息が漏れる。
「どうした、古市、便秘か?」
「アダブ?」
古市の前の席にいる男鹿が気になり、振り返って尋ねると、古市は自身の頬を触りながら顔をしかめて返した。
「ちげーよ。この時期、乾燥するだろ。肌荒れが気になってな…」
「女子か」
「男子も気を遣うんだよっ。今日は学校に遅れそうになったから、化粧水つけてくるの忘れてさー」
「ヤロウなのに化粧水って…」
「習慣にしてる男子はいるぜ? ねぇ、皆さん」
邦枝の席で雑談していた烈怒帝留に満面の笑みで話しかけると、「そ、そうね…」と邦枝が同意の求めに頷いた。
実は邦枝も知らなかった。
「けど、モブ市がしてるとキモいっス」
「相変わらず容赦ないなぁ」
その辛辣な言葉に慣れてしまった自分が悲しい。
「肌荒れならまだマシだ」
そこで不意に声をかけたのは神崎だ。
男鹿、古市、烈怒帝留がそちらに顔を向けると、不機嫌な神崎の顔にあるものを発見する。
「あ、にきび」
口にしたのは花澤だ。
額に中心にぽつりと赤い小さな膨らみがある。
「思いにきびだ。誰の事考えてんだ?」
近づいた姫川はニヤニヤと笑いながら人差し指でそれをつつき、神崎はその手を払う。
「つつくな。ヒドくなるだろーが」
「なんか余計に気になってきた…。すみません、誰か化粧水持ってませんか?」
見てると自分の額を掻いてしまう古市。
烈怒帝留に窺ったところ、全員に渋い顔をされた。
「家」と谷村。
「私も家に…」と邦枝。
「オレも」と飛鳥。
「ウチのは残り少ないんでダメっス」と花澤。
「右に同じ」と梅宮。
「持ってるけど、肌に合うかしら…」と大森。
「そういやヒルダが…」
そこで男鹿はヒルダが最近使い始めた化粧水のことを思い出し、前の席にいるヒルダに聞いてみると、カバンからピンクの小瓶を取り出して見せてもらう。
「持ってるぞ。人間界の日差しは強いからな。保湿、にきびケア、日焼けと紫外線防止などの効果があり、年配の女性はまるで若返ったような肌になると魔界で評判が良い」
「ああだから皺ひとつねーんだな」
ゴキン!!
「私の肌に皺がないのは元からだ、ドブ男が」
失礼な発言に机を頭に叩きつけられた。
「さすが女子力高いですね、ヒルダさん! よろしければこの哀れな肌荒れ男子に貸していただけませんか?」
「言ってて虚しくならねえのか」
男鹿は撲られた頭を擦りながら呟く。
「別に構わんが…」
「神崎もつけてみろよ」
「えー…」
しかし、出来物が気になるのは本当だ。
早く治るなら、と仕方なく頷く。
「貴重なものだ。無駄に使えばヤスリでその肌を削って返してもらうぞ」
「真顔でおっそろしいこと言わないでくださいっ」
古市と神崎はヘアバンドを貸してもらい、花澤にコットンで化粧水をつけてもらった。
これがのちに騒動をもたらすことも知らずに。
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